第32話 紅殻魔装機神vs究極破壊魔神

再度身構えるチャーナちゃん。

見ると ”PTPC110” がズリズリと持ち上がっていく。

そして、その下から押し上げるように出現する…… 

なんと、 ”黄金の玉”

ちょうど正月の鏡餅の様に玉の上に ”PTPC110” が鎮座してる形。


それを見たチャーナちゃん、この機を逃さず大声で、

「あ、 ”*玉” よ、あれ。 ねぇレノちゃん、 ”*玉” だからね、 ”*玉ッ” !」

……こころの中で密かに勝利のガッツポーズ。


言い知れぬ敗北感に打ちひしがれている涙目のレノちゃんをよそに、

「あの玉は、一体何でごわすか?」


訳わかめの3人を無視して、ブゥドォーが言い放つ。

「美人のお姉さん、今までで最強だから、僕も本気だしちゃっていいかな?

…… あ、返事は聞いてないケド」


突然、黄金の玉がピカリと光り輝くと、黄色い公園周辺のジャンク屋から

おびただしい量のジャンクPCが飛び出してブゥドォーの残骸に集結する。 

 "ズドドドドドドドドドド……”


「何?…… 一体、何が始まるの?」

ジャンクPCに埋もれながら…… ブゥドォーが呟く。

「…… 河豚さん。それと蟹さんもお願い! ……」


あっけにとられている3人の目の前で山と積まれていくジャンクPC。

しかし、良く見るとゆっくりと人型が形成されていく。 

しかも、どんどん巨大に……

暫くすると20mはあろうかと思えるほどの巨大な人型の山になった。

「何、あれ?…… 巨人?」  


レノちゃんの予感は的中した!

徐々に精度を増していき、モビルスーツ形状に変化。

表面に無数の突起物が形成され、その色は ”真紅”。 

「あ、あれは蟹でごわすよ…… 巨大な蟹形の鎧?……」


攻防一体MAX…… ”紅殻魔装機神 ブゥドォー(改)” ……降臨


「やっぱり完結編だから豪華ね。巨大ロボ戦まであるもの」

「河豚で巨大化、蟹で魔装。もう驚くのも…… 厭きたでごわす」


ひとり、エキサイトするチャーナちゃん。

「ぐぬぬ。こうなったら、こちらも…… カムヒャ! 爆熱マッスゥィーン」

諸手を挙げて、爆熱マシンを召喚するも…… ”シーン”

呆れるレノちゃんとジロゥ。 「無理よ…… 今は1999年だから」

チャーナちゃん ガッカリ……


「ええい、ままよ!」

その場から空中に飛び立つチャーナちゃん。

高度20m地点でブゥドォーと向き合い、

「全砲門開放!!!」

空中砲台と化したチャーナちゃんから発射される、ミサイル、火炎、レーザービームの雨あられ。


”ズガガガッガ、ブゥオオオオーー、ビィーンビィイーーン”


しかし、巨大な ”魔神装甲” には全くダメージを与えられない。

まさに、 ”太平洋の牛蒡洗い”。

チャーナちゃん ガッカリ……


”…………チャーナちゃん…………”


エッ?


何処からとも無く聞こえる…… 微かな声…… 

”……チャーナちゃん…… 聞こえる?”


エッ?  エッ?


”良かった。あたしの声が聞こえるのね…… 

あたし、河豚です。あなたの体に宿る…… 河豚です”


????


”それはともかく。

こんなことをいきなり話しても、とても信じられないでしょうが……

ぶっちゃけ、あなたとブゥドォーは………… 

時を隔てて生まれた、合わせ鏡な機体なのです。

そしておそらく現時点では地球最強の2体といえましょう”


エェ━━━━━!!


チャーナちゃんの心の中にだけ聞こえる不思議な声の主は更に続けた。

”しかし残念ながらあなたは……

その同じ力をまだ完全には使いこなしていません。

いえ、気付いてさえいないのです。

あたし達、聖獣魔獣の魂がいつでもあなたを見守っていることに”


知りませんですた。どぼすれば良いのですか?


”探してください、心の中の宝石箱を…… 

そして、そこに隠れているあたし達の姿を見つけたら

…… 呼んでください、あたし達の名前を”


分かりますた……


チャーナちゃんは瞑想した。

そして、ジッと心の中を覗いた。

心の底…… 最深部

様々な雑念の下に、微かに輝く 極彩色の光……

慎重にかつ大胆に…… 

それを辿って行くと、見つけた!

…… 宝石箱。

そして、その中に潜む 赤や黄色の宝石たち……


イタ━━━━━━━━ッ!!


これね…… 

彼らの名前を呼べばいいのね。

それでは、正式に


「いでよ!…… 痺れ河豚、馬並、ミミズ千匹、そして…… 亀あたま!  

カモ━━━ン」


………… 河豚さん ガッカリ


見る見る巨大化するチャーナちゃん。 


”ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオ……”


「……あっ! ああああ~、チャーナちゃんが…… どうして?」

「巨大化……する?……で、ごわすー」


巨大化と同時に ”魔装変身”。

その姿はというと……

口端からダラリと舌を出して白目をむいた ”馬の上半身” を頭から被り、

腰には腰蓑の如くウニョウニョと纏わり付く ”千匹のミミズ” を垂らして、

股間にはミミズの間から巨大な ”亀あたま(モザイク付き)” が雄雄しく

ニョッキリとそそり立つ。身の毛もよだつ醜悪な様相……


グロテスクMAX ”究極破壊魔神 茶穴ちゃんグレイト” ……降臨


「きゃああああああああああああああああああぁぁぁーー!!!!」


悲鳴と、ともにレノちゃん、大号泣。  

「うゎあああーん!!」

「ぐぬぬぬぬぅー…… きもすぐるでごわすー!!!」 青ざめるジロゥ。

「お、お姉ちゃん…… 怖いよぉー。 夢に見るよぉー」  

ブゥドォーでさえも既に涙目。


馬の被り物の奥で、チャーナちゃんの目が怪しく光る。

「怖怖怖の怖…… 破壊…… 破壊、破壊、破壊じゃぁあああー!」


対峙する2体の魔神の姿に秋葉のキモオタたちが気づいた。

「ありゃぁ?…… 何だ?…… 怪獣大決戦?」

「否。赤い御仁はモビルスーツの様でござる」

「もう一体の方は…… グログロでごんす……」

「グロい方はたぶん、巷を賑わす ”電脳魔神 ブゥドォー” かな?」

「と、いうことは ”秋葉の勇者様 vs 電脳魔神 ブゥドォー” でOK?」

「んだ、んだ。すたらば…… 応援すっぺよ」


セーノ! 「勇者さまーー!!頑張れぇーーー!!!」

声を合わせ大声援…… もちろん、ブゥドォーの方を。


大声援の中、戦闘開始。

フワリと空中に舞い上がる2体の魔神。

蟹の装甲、両手の鋏からエネルギー弾を放つ。 

”バシュ、バシュ”


それを見たチャーナちゃんが叫ぶ。 

「ホースフィールド発動!」


馬がヒヒィーーンといななくと口から  “吐しゃ物”  の様なものが射出され、

チャーナちゃんの周囲に ”力場” が形成される。

エネルギー弾は ”力場” に跳ね返され、空しくも秋葉の街を破壊する。


ようやく落ち着きを取り戻したレノちゃん、はき捨てるように、

「でも、あれね…… チャーナちゃんのセンスって最低ね」

「グロさだけをいったら、ラスボス並でごわす」

「能力からみても、チャーナちゃん=破壊、ブゥドォー=再生 って感じ。

やっぱりチャーナちゃんの方が悪役よ」

「後の秋葉史では、チャーナちゃん=恐怖の大王 と解釈されそうでごわす。

ホウクウドどんの言っていた最強最悪でごわすな」


「あっ、危ない!」  

「どうしたでごわすか?」

「チャーナちゃん、あんまり早く動くとモザイクが外れそうになるの」


今度はチャーナちゃんの攻撃。 

「サウザンド! ニィードル」

腰に纏わり付いたミミズが一斉にブゥドォーを目指すと、

細かい針の様なレーザービームを発射。その総数は1000本以上。

 ”ビビビビビビビビビビビビビビ……”

しかしその大多数は ”真紅の魔神装甲” に弾かれ、秋葉の街に降り注ぐ。

”カカッカカンカカカンカンカンカン……”


「向日葵さん、やっちゃってください」

叫ぶブゥドォーの周囲に ”向日葵の花” が多数出現。

花は回転しながらチャーナちゃんを取り囲み全方向からパルスビームを照射。

しかし、これもまた ”ホースフィールド” に弾かれる。


「まさに ”最強の矛” と ”最強の盾” って感じ。きりが無い戦いね」

「でも秋葉の街が巻き添えを食って、少しずつ壊れていくでごわすな」

「あ、それは大丈夫よ。何度も言ってるケド。再生してるから。

秋葉っていつの世も、破壊と再生を繰り返して変化する街だから」


珍しく考え込むジロゥ。重々しく口を開くと、

「……と、いうことは……

2010年には殆ど失われてる今の1999年の秋葉の街に果たして護る意味が

あるんでごわすか?…… 

おいどんには判らんでごわす」


するとレノちゃん、スッパリキッパリ、

「そりゃまぁ、そうだケド……

いいんじゃない。悩まなくても。 チャーナちゃん、必死に戦ってるジャン♪」


そのチャーナちゃんは悩み中。更に強大な力を欲しております。

「……もっと…… もっと、力が欲しい…… あの子をブチ殺せるだけの力が……

破壊、破壊、破壊の力じゃぁああああ!」


”いけません! チャーナちゃん”


エッ?


”破壊の力に身を委ねてはいけません”


どういうことですか?  痺れ河豚さん。


”……河豚です(キリッ)……”


失礼すますた。


”貴方の前にこの奇跡の力を宿した先人たちの多くが破壊の力の魅力に取り憑かれて

暗黒面 に堕ちていきました。あのブゥドォーもその一人です”


暗黒面 …… ですか。


”しかし、チャーナちゃん。貴方にはまだ人並み外れた 「勇気」 があります”


「妖気」 の間違いではないですか。


”いえ、「勇気」です。

思い出してください。

第一章では単身危険を顧みず極上黒毛魔獣の肉を取りにいった時のことを。

第三章では爆熱王の高温高圧限界ギリギリまでジッと耐えていた時のことを……”


あの時はフリーズしてただけですが。


”世の中には、「勇気」 があれば何でもできる (by猪木)っていう言葉もあります”


それは 「元気」 ですね。


”とにかく。 

貴方は紛れも無く 「勇者」 です。

唯一、 「勇者」 だけが 「勇気」 を 「力」 に換えることができます。

例えば、ドラウエのデン系最強呪文ミナデンは 「勇者」 にしか使えません”


マダムテの方が強いですが、何か?


”と・に・か・く!…… 

「勇気」 をもって立ち向かえば決して負けることはありません。

自分を信じて、 「勇気」 を見失わないでください”


分かりますた。 「勇気」 ですね。


チャーナちゃんは再び瞑想した。

そして、ジッと心の中を覗いた。

心の底…… 最深部にある宝石箱。

実はそこにある妙に大きい ”サーモンピンクの宝石” が気になっていた。

しかし、その名を呼ぶのは躊躇っている。 

「勇気」 が必要だったからだ。

…… 「勇気」 …… 今、ここで 「勇気」 を出さなければ…… 負ける。

秋葉を…… いや、秋葉に集うみんなの未来を壊しちゃいけない!


意は決した。大きく息を吸い込んで、その名を唱える。


「いでよ!…… ”*****” 」 カモ━━━ン!!   


河豚さん、ガッカリ……


| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

| なまえ LV   HP   MP|

|レノちゃん50  125  452|

|シ゛ロゥ 45  657     0| 

|チャーナ  1  999  999|

|_________________▲ ▲

      ▲ ▲ ● ● ▲ ▲ ■ ■

    ■■■■■■■■■■■■■■■■

   ■ ■ ■■ブゥドォー■■

   ▼ ▼  ■■■■■■■

         ■■ ■■

   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

   |チャーナは とてつもなく     |

   |いやらしいものを よびだして   |

   |しまった!            |

   |レノちゃんは きぜつした!    |

   |_________________|


同時刻、

猫の杜では……


”ヴィーーーン! ヴィーーーン! ヴィーーーン!”


「大変ですにゃ! 波長パターン  ”エロ” ……

ブログのモラルレベルが大きく低下していますにゃ

このままではセントラルドグマ内に モラルハザード を起こしますにゃ」


「おのれ! 謀ったな! ホウクウドめが……完結編と思って油断をしてたにゃー!

まさかこんな隠し玉を用意しておったとは…… にゃー」


「どうしますかにゃ?」


「究極消滅呪文 ”公序良俗” を発動するにゃー…… 全てを無に還すにゃー」


「ラニャー!」


暫くして、ホウクウドの護美ハウスでは……


「さて、続きを書くかな。ゲフンゲフン


── とてつもなく いやらしいもの……

それは、**した**を*りまき、**にも*****れた**を**ている。

あたかも**の如く辺りに**を***く、その様子を見ると**が***する。

チャーナちゃんは、その***を体に**すると、大声で、

「ブゥドォー、お前の***を***する…… 返事は聞いて無いけど」

一方、それを聞いたブゥドォーは**の***を思いっきり**させると、

「お姉ちゃん、僕…… ***だから、**しくお願い(ハート)」 ──


……って…… あれ?…… 何で伏字になっちゃうの?」


すると、突然。

護美ハウスに来客  

”トン、トン” 「夜分、済みません…… にゃ」

「何だろう?…… こんな夜更けに…… 今、開けますから」  ”ガチャ”

「な、何だ?ちみたつは?」

「猫の杜から来ますた!」 「来ますた!」


ホウクウドを無視してズカズカと入り込むと、

「あれだ! あのパソコンを破壊するにゃー!」 「するにゃー!」  

”ドカバキグシャボキ!!!”


「ああ~! わ、わしのVAIBOが……」


元に戻って、

1999年の秋葉では……


チャーナちゃんの召還した  "とてつもなく いやらしいもの"  は、周囲の空気を読まずに実体化した。


しかし、その直後! ”亀あたま” を隠蔽していたモザイクが鋭く反応! 

いきなり牙を向いて "とてつもなく いやらしいもの" に襲い掛かった。


”グルルルルルルルルル……”


これはたまらずチャーナちゃん。

モザイクを振り払おうとするも無駄。

しかもどんどん増殖、分裂を繰り返す。絶対絶命!!  

「うわぁああああーーん!何、これー?」


チャーナちゃんの危機を察して、気絶していたレノちゃんが起き上がる。

モザイクに襲われているチャーナちゃんを見るなり、驚天動地。

「駄目ー!チャーナちゃん、それに触れては駄目よ!逃げて、逃げてー!」


魔装解除!元の大きさの天女スタイルに戻って間一髪!黄色い公園に逃げ帰る。

ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア


「で?…… 何なの、あれって?」

神妙な面持ちのレノちゃん語る。

「聞いたことがあるの…… 究極消滅呪文 ”コウジョリョウゾク”……

 別名、 ”全てを無に還すモザイクの猟犬” 」

「あれがそれでごわすか?」

「たぶん、間違いないわ。

極大消滅呪文 ”メドルーア” なんて比べ物にならないくらい恐ろしい呪文よ。

これを使えるのは 

”モザイク使い” と呼ばれる、ごく一部の ”特殊な趣味を持つ魔導士” だけよ」


3人が秋葉上空を見上げると、

なんと "とてつもなく いやらしいもの" を食い尽くした ”モザイクの猟犬” はそれでも飽き足らずブゥドォーにも襲いかかっていた。


必死に抗うブゥドォー。

しかし、レーザーの閃光さえも捕食して無に還すモザイクには敵うはずも無い。


眉を曇らせ、レノちゃん語る。

「…… いくら無限再生能力を持つブゥドォーでも…… 

アレに狙われたら万事休すね…… モザイク達は対象を食い尽くすまで増殖するわ」


そういうレノちゃんの予想通り全身をモザイクに覆われたブゥドォーが跡形も無く

消滅するのには数分と要しなかった。

更になんということだろう。 

”モザイクの猟犬” は秋葉の街をも捕食していった。

無残に食い尽くされて次々に消滅する秋葉の街並み……


「あ…… 秋葉の街が食われていくでごわす! …… いずれ、おいどん達も?」

眉目を開くレノちゃん。

「この黄色い公園にいる限り大丈夫と思われ。

神田明神と神田寺と教会に護られてるから。それに、少なくとも2010年に残っているパワースポットのいくつかは残ると思うの」

「破壊と再生、消滅と創造が…… 秋葉の街のあるべき姿でごわすか……」


この世の常をせせら笑うかの如くいつの間にか喧騒な蝉時雨が響いている。

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