第28話 ジャンク通り~中央通り
”地下松” 前の横断歩道を渡るとジャンク通り。
右側の ”乳部” の先には ”キッチンザロー” 。隣りの天婦羅屋さんもある。
もちろん、 ”乳部” 名物おでん缶や、当時流行ったプリンシェイクもあった。
ジャンク通リ北上、最初の交差点。右側を見ると、 ”冨木”、 ”ニッパン”。
その先は ”山際” のソフト館。
最上階のアイドルイベントに参加するキモオタの列。
左側を見ると、角の中華。その隣の ”あきびんぐ”。
その先には ”電子攻防” の様なお店。
この店の2,3Fにもジャンクがあったのだが華麗にスルー。
”まん〇〇らけ” ビルの場所には、 ”俺コンヘウス”。
その先には名前を忘れたがPCケースなどを並べていた店。
その先の角は今はエロDVDの店だが、当時は ”OVERZOP”。
ここはPCゲーマーにとってはある意味聖地。
「2010年と比べると、結構PCパーツ屋が多かったのね」
「でも、みんな潰れてしまったでごわすな……」
二つ目の交差点。左側は角の ”99”。
その先の弁当屋の隣には小さなPC屋があった。
ここは、偶に掘り出し物中古ノートがあったのだ。
右側を見ると、 ”廃丼” の場所には ”スモデン”。
ここも超激安ジャンクが出るので見逃せなかった。
その対面、 ”OVERZOP” と ”あ〇ち” の間の階段を降りると
地下にジャンク屋があったのはあまり知られていないだろう。
ここは¥500ぐらいの母板を中心にCPU,メモリ、ベアボーンPCなどの
ジャンク品が満載。結構、お宝が拾えた店であった。
「ここらへんからジャンク屋が目だってくるわ」
「でも…… やっぱり、ほとんど潰れてしまったでごわす」
「寂しいですね……」
すると、突然! ジャンク通りの端に弾き飛ばされるレノちゃん!!
”ドドン!……バッタン!”
「きゃぁぁぁぁあああああーーーー! 何?何々???」
驚いて振り向くジロゥとチャーナちゃん。
背後から凄いスピードでキックボードが通り過ぎる。
「ホホホホオモホホホモモモモーー! 邪魔よ、邪魔ぁー!!
チン○たらブラブラ、歩いているんじゃないわよぉー。
どきなさい!そして、ひれ伏しなさい!
秋葉ジャンク街の女王ぉーーさーーまの、お通りよぉおおおおーー!!!」
あ、あの聞き覚えのある釜声の主は……
「サ、サ、サブロゥーーーー??」
そう、それはこの当時、まだ ”人間” であった頃のサブロゥ。
この頃からこんな事してた訳……
走り去るサブロゥの後ろ姿を確認すると、片膝をついて構えるチャーナちゃん。
右肩の上にミサイルが実体化する。慎重に狙いを定めると、間髪を入れずに速射!
”バシュッ! キューーーィィィイイーーン…… ちゅどおおーーん!!”
見事にサブロゥの背後に命中!!
四散する手足…… そして転がる首…… コロコロ
ポポポポポポカーン……
「チャ、チャーナちゃん…… 何も、殺すこと無いんじゃない?」
「……首が…… 首が、転がってるでごわす」
すると元気にチャーナちゃん。
「大丈夫! 2010年には、現存してるから…… 改造人間だけど」
気を取り直して、ジャンク通り北上。
右側の大盛りスパゲッティが超大盛りの喫茶店を眺めながら、ふと左側を見ると、
「……??、えぇぇぇぇええええーーー?? 印旛が、印旛が無ーーーい!!」
そう、この頃はまだ ”印旛” は跡形も無い。その場所にあるのは ”ラツコ” 。
ひなびた中古兼ジャンク屋。
ここでは各種リカバリCDやOSのCDなどがジャンク値段で買えた。
「2010年には、あれほど盛況な印旛が無いとは驚きでごわす」
隣は ”夫7” かな? そのまた隣はお寺。
3っつ目の交差点。角の ”カフェウーロ” はまだ無し。3人はここを右折。
右側の ”愛痕” 1Fは確か、文房具屋さん。 ”愛痕” はその2F。
その向かいの ”レアモンサンヨー” は無く、確か ”じゃん亭” だった様な記憶。
その横の ”電子攻防” 系の店は確かあった様な……
そして、 ”サ○ボ” 前の道に差し掛かると。 ”祖父2” はひっそりとありますた。
左側に見える ”杉本” は当然ありますた。
しかし…… ”U” は無し。その場所は ”祖父” の音楽館だった様な。
「祖父2はあるけど…… Uは無いのねぇ」
「しかし、この辺りも祖父ばっかでごわすなぁー」
2010年にはジャンカー常連さん達が跳梁闊歩する ”印旛”、 ”祖父2”、 ”U” の三角地帯も1999年当時は今ほど賑やかでは無かった。
程無く3人は中央通りに面した。
すると、先ほどとは比べ物にならないほどの人の群れ群れ群れ……
「きゃぁぁぁあああーー♪
どうしたの、これ? 人が一杯歩いてるぅー、しかも車道よ」
そう、日曜休日は12時を過ぎると中央通りが歩行者天国になっていたのだ。
「これが秋葉名物のホコ天でごわすな…… うまそうな露天も一杯出てもうす」
銀行前のお好み焼き、 ”山際” 横のフランスパンのサンドイッチ。
たこ焼きや、ジャガバター、牛肉の串焼きなどなど。
ホコ天の中央通りは屋台天国と化していた。
横断歩道を渡って田代通りに向かう3人。ジロゥは対岸の ”牛串屋台” に一直線。
「モグモグモグ…… うまかぁー♪…… これで、¥400なら満足でごわす。
缶ビール片手に牛串にかぶり付くなんて最高でごわすなぁ」
2010年と比べると食堂環境が悪かった当時の秋葉では、
この屋台グルメが重宝した。
右手に ”ぞねミナミ” 、左手にやはり ”ぞね”。
この頃の ”ぞね” は破竹の勢い。
”ぞねミナミ” が ”アソびっと”に成る時の閉店セールは極レアPCの投売り状態。
「あ、あそこが喫茶いこ○ね♪…… ぞねとじゃん本の間にあるわ」
「この階段が秋葉地下迷宮に降りる階段って都市伝説じゃ無かったんでごわすな」
「でも、怖い猫達が警備してるから、良い子の皆さんは勝手に降りちゃ駄目ですよ。
河童のお姉さんとの約束よ♪」
すると、突然! 階段を駆け上がってくるものが……
”ドタバタドタバタバタバタバタ……ガチャガチャガチャ”
この糞暑い日に全身をプレートメイルで装甲した鎧武者。
「うぅわぁぁぁぁぁああーーーん、やっぱり、ここにも無いよぉーー」
3人は突然、目の前に現れたこの奇妙ないでたちの男を凝視。
「ふぅ。外の空気は久しぶり……」
男はそう言うと、フルフェイスの兜を取り外す。 と、その顔は……
「あっ、あっ、あぁーーー♪ ホウクウドさん(推定)だぁーー」
「ほ、ほ、本当でごわす! こんなところにいたでごわすかぁー」
「こんにちわ。ご無沙汰してます……」
男は、いぶかしげに3人を見渡すと、
「わし、ホウクウドじゃ無いよ。人違いだよ、きっと」
3人は互いに顔を見回す。 ”ホウクウド” そっくりのこの男…… 一体、誰???
「そんなことよりさぁ、見なかった? マスタソード」
行き成り予想し得なかった質問にキョどる3人。
「マスタソード???って、なんれすか??」
「ウスターソースとかマスタードは知ってますが、何か?」
男は頭をかきかき、
「あ、そうか…… 知らないんだ、ごめんね…… ”退魔の剣、マスタソード” ……
探してるんだ、ずっと…… あれじゃないと、ブゥドォーを封印できないから」
「それって、あの電脳魔神ブゥドォーのこと?」
「うん。倒せないから、封印するの……
秋葉の守護神としては、このまま放っとけないでしょ」
それで納得。
この ”ホウクウド” に似た男は、秋葉地下迷宮で ”マスタソード” なるものを
探していたって訳。
「あたしたち、ジャンク街を巡回するから、そのマスタソードっての探してみるわ」
「ありがとう……
言い伝えによるとマスタソードは ”秋葉の何処かにある深い森の中の秘密の台座” に刺さっているはず。
でも ”勇者じゃないと抜けない” から、もし見つけたら後で場所教えて……
どうせジャンク街の何処かで再会するでしょ」
「了解したでごわす」
「道中、お気をつけてください。何やら不審な輩が多くおりますから」
男は中央通り方面に向かって歩きだした。
「うん!…… それじゃ、また後ほど」 ”ガチャガチャガチャガチャ……”
「逝っちゃったね……」
「ホウクウドどん、そっくりだったでごわすな」
「でも、全裸じゃないし…… 人違いかと」
気を取り直して先に進む3人。
「さ、今度は田代通り方面に逝くわよ…… ついでに、マスタソードも探して」
すると、突然!チャーナちゃん。
「ま、待って! レノちゃん、ジロゥ 雲爺に聞いたんだけど、
あたしマスタソードの場所に心当たりがあるの……」
「本当! チャーナちゃん、凄い」
チャーナちゃんの両目がスロットマシーンの様に回転している……
内部COREのHDDを検索している様子。
”チーン”
「判りますた!」
右目に ”きん” 、左目に ”たま” ……
レノちゃん、激怒!
「チャーナちゃん、またまた下ネタじゃない!
それだから、読者の皆さんに下ネタばっかりって酷評されるのよ!!」
慌てて弁解するチャーナちゃん。
「いいえ…… 何か…… 秋葉にある、木が生い茂った場所…… 秋葉の森。
そこに、 ”巨大なきん○ま” を持つ何かが見えます……」
レノちゃん、はっきりスッパリ、
「いいかげんにして!! ”巨大なきん○ま” なんて、アリエンワー!!!」
熟考するジロゥ。
「レノどん、それは狸のことでごわっしょ。森の中にいる狸のイメージ……」
なあるほど。冷静さを取り戻したレノちゃん、早速、 ”森” と ”狸” で秋葉情報を検索してみると、
「あったわ! 花森神社 …… 狸がご神体の神社ね。
でも、神田川の向こうよ。秋葉じゃないし」
「おいどんのデータベースに拠ると、昔は神田川の秋葉側にあったはずでごわす。
ギリ、秋葉といえるんじゃないでごわすか?」
「でも、ここからはかなり南下しないといけないわね」
「じゃぁ、あたしがちと、ひとっ飛びして見てきます」
そういうとチャーナちゃん、フワフワと空中に浮かんだ。
「気をつけてねぇーーー!」
気遣う2人をそこに残し、チャーナちゃんはピューーッと空中飛行。
”花森神社” は秋葉電気街口から、神田川にかかった人道橋 ”神田ふれあい橋” を渡ると、すぐそこにある。狸のご神体。 ”他抜き” と読んで、立身出世のご利益があるとういうのが理由。境内は都会の喧騒を忘れる涼やかな木立。
「雲爺に聞いた場所は、確かこの辺り…… あ、あった! あそこね」
空中から境内にフワリと降りるチャーナちゃん。
あたりに響く蝉の声も気に障る程では無い。
木立のそこかしこに狸の石造が立ち並ぶ。
「さて、マスタソードは何処かしら?」
ここには力石と呼ばれる丸石がたくさん置いてある場所がある。
昔の力自慢の力士たちが石に名前を書いて残したもの。
その奥にひっそりと隠す様に立ち並ぶ剣の林。
「あれね…… ずいぶんたくさんあるケド……」
一本、一本、その銘を確かめると、 ”ウスターソード”、 ”マスタードソード”、
”オイスターソード” などなど……
「偽者は一杯あるケド…… 変ね。食べ物ばかりだわ」
しかし、その内の一本が、 ”MSDソード”
「こ、これは?
……MSD……マスダ?…… そうか、これが ”マスダソード” で、一番近い!」
手をかけようとした、その瞬間!! 背後から忍びよる黒い影!
「ぶっももおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
不意を付かれ驚愕。 振り向くチャーナちゃん。 「あ、あなたは??誰??」
それは黒毛に覆われた2mぐらいの背丈の …… 2足歩行する牛。
良く見ると胸に値札が、
”高級霜降魔獣 ザ・オックス(梅) お値打ち価格 ¥198/100グラム!!”
「や、安いわね♪」
思わず舌なめずりするチャーナちゃん。しかし、気を緩めてはいけない。
小さくても魔獣なのだ。差し詰め、伝説の退魔の剣を守るボスキャラレベル。
早くも、牛はチャーナちゃんを目掛けて突進する態勢。
しかし、10年後に遙かに巨大に成長した奴と一度戦っているチャーナちゃん。
弱点は判っている。スルリとMSDソードを引き抜くと、それを上段に構える。
「さぁ、来なさい……」
挑発された牛は、鼻息も荒く突進してきた! ”ドドドドド……”
軽やかな身振りでたやすくかわしたチャーナちゃん。
円月殺法! 流れるような太刀筋で、両角と尻尾を切り落とす。
「ぶっももおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
迸る鮮血。全身に返り血を浴びたチャーナちゃんの緑のボロ服は真紅に染まった。
弱点を切断された牛は怒涛の勢いで逃げ去っていく……
懐紙でMSDソードをハラリと拭うと、
「また、つまらぬ物を切ってしまった……
もっと、高級かつボリュームUP! 美味しくなってから来なさい!」
でも、意外に重いMSDソード。
これを持って飛んで帰るのはあきらめ歩いていくことに。
「チャーナちゃーーーん、おっそいわーーねぇーー
また、何処かで油売っているんじゃなくて?」
歩行者天国で超満員の中央通りのド真ん中に立って、万世方面を眺めていたジロゥとレノちゃん。西遊記のコスプレが珍しいらしく外人さんの観光客に引っ張りだこ。
すると、突然。万世方面から何やら嬌声。
人込みが大河の如く左右に分かれ、その真ん中を猛スピードで走ってくる姿。
「みんな~!!」
「あ、あれはチャーナちゃんでごわす」
背の高いジロゥが最初に、戻ってくるチャーナちゃんを見つけた。
「あ、向こうもこっちに気づいたでごわすな♪ 喜んで何か振り回している
でごわすが………」
言われてレノちゃんも、チャーナちゃんを発見…… ブーッ!!
喜んで走ってくるチャーナちゃん。2人の側まで来ると、
「ハァハァ…… 見つけたよ!!これ! やっぱり、花森神社にあったよぁ!」
話もろくに聞かず、
慌ててチャーナちゃんを田代通り方面に引きずっていくジロゥとレノちゃん。
「…… いいっ! 絶対に、後ろを…… 振り返って見ては駄目よ!!」
「一切、知らぬ存ぜずで、この場を離れるでごわす!!」
「どしたの? ふたりとも…… せっかく、これ、持ってきたのに…… あれっ?」
「いいから、早く!! こっち、来て!!」
「これは、捨てたほうがいいでごわす!!」
そういうとジロゥ、MSDソードを取り上げ、道に捨て置く。
3人が神太食堂の角に身を隠したのを見て、
一頭の牛がすかさずMSDソードを拾い上げると牛串屋台の店主に渡した。
「あれ?……
お前、これ、さっき盗まれたって言ってたMSDソードじゃないか?……
そうか、取り戻してくれたのか! 偉いぞ!」
「ぶっももおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「俺もいつまでも牛串なんか焼いてないで、
立身出世して肉ビルの最上階を牛耳れるような ”立派な魔王” になるからな……
そうしたら、お前も最高級の ”極上黒毛魔獣” に進化させてやるよ……
それまでの辛抱さ、なぁ牛!」
「ぶっももおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
”牛串魔王” と ”黒毛魔獣” はガッシリと両手を固く握り合っていた。
その時、背後から……
「お取り込み中、すいません……
こういう者ですが、重要参考人として出頭願います」
”警察手帳”
「へっ?? 何?…… 何で、MSDソードを持っていくのぉ??」
「これは、証拠物件として鑑識に廻します…… さぁ、こちらへ」
「ぶっももおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
”牛串魔王” と ”黒毛魔獣” はパトカーに乗せられ、連行されていった。
その後、秋葉の職質が頻繁に行われる様になったのは周知のとおりである。
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