第24話 黄色い公園

数日後の早朝、黄色い公園


ホウクウド、レノちゃん、ジロゥの3人が仲良く談笑中。


すると、突然!

乱れた服を両手で押さえたチャーナちゃん、息も絶え絶えにダンボールハウスから

飛び出してきた。 「ひィィィーーーーッ!!!!!」

只ならぬ様子に尋ねるホウクウド。 「チャーナちゃん、どうした?」


潤んだ瞳の妙に色っぽいチャーナちゃん。

「…… あたし、見ちゃったんです。昨日の夜、いけないエッチな場所で。

あたし、何だかジュンとしちゃって胸が高鳴って、熱っぽくて、もう訳わかんない。そしたら、あたしの様子を見ていた谷間さんったら急に、

『ゲフゲフ…… チャーナちゃん、僕が ”具合” を診てあげよう』 

って、あたしのいろんな場所を、執拗に調べだしたの。

あたし、恥ずかしくて黙ってたら、谷間さん突然…… 物凄い勢いで、あたしの…… 

あの…… 恥ずかしい所に…… 硬いアレを、ズブリと、挿れてくるんです」


ホウクウド、慌ててレノちゃんの両耳を塞いで、 「教育的、指導!」


涙ぐむチャーナちゃん。

「…… あたし、最初は、抵抗してたんだけど。

アレを挿れられたら、からだの一番奥が反応しちゃって、もう、駄目……

でも、何とか力を振り絞って飛び出して来たの…… お願い、助けて」


すると、突然! 飛び出して来た谷間さん。

「チャーナちゃーーーん!! 誤解を招くようなこと、言っちゃ駄目ぇーー」

目を丸くするホウクウド。 「えっ? 五回も……」


「違うってばーー!

チャーナちゃんったら、昨日、拾ってきたUSBのWiFiアダプタ使って勝手に

エロサイト見てたからウィルス拾っちゃって大変だったんだから……

それで今日、おいら朝からUSBメモリー挿してワクチン、インストールしたの」


ホッとひと安心。  

「そうか…… チャーナちゃんの内部COREはパソコンだから仕方がないね」

谷間さん、チャーナちゃんを睨みつけて、

「チャーナちゃん、そういうことだから。 勝手にエロサイト、見に行っちゃ駄目だからねっ♪」


今まで黙っていたレノちゃん、

「ホウクウドさん。あたしの本当の耳は,ウサ耳のほうだから。塞いでも無駄よ……

全部、聞こえてるから」  

「あっ、そうなの。テヘヘ」


すると、レノちゃん冷ややかに、 「しかし…… 全く、 ”おばん” ですね」

チャーナちゃん、キョドッて、  「おば、おば…… ”おばんゲリオン” ?」


冷徹な視線で、

「チャーナちゃん……

25歳(設定年齢)の割には行動パターンがまるで、”おばん”」

「レノちゃん!

いくら自分が10歳(設定年齢)だとしても、人のこと”おばん”って酷すぎますわ」


更に凍てつく波動。

「いーえ、

あたしは2001年製の ”TinkoPAT s30” なので実年齢もそのぐらい。

けど、チャーナちゃんは大人の女性設定なんだからもっと落ち着いてなきゃ

駄目なのに。エロサイト見に行ってウィルス拾ってたんじゃ大人の女性通り越して

”おばはん” 並よ」

レノちゃんに怒られてシュンとするチャーナちゃん、と、ホウクウド。


すかさず、谷間さんがフォロー。

「まぁ、大したウィルスじゃ無かったし…… でも、チャーナちゃん。

ワクチン入りのUSBメモリーはいつも持ってたほうがいいよ!」

チャーナちゃん、 「御意……」

ホウクウド、こっそり谷間さんに耳うち。 「後で、1個譲って……」


すると、そこにナンシー長官、颯爽と登場。「ここはいつも賑やかだヨン♪」

チャーナちゃん助け船とばかり、

「長官、聞いてください。

レノちゃんがあたしのこと、 ”おばん”  だって言うんですよ?」


ナンシー長官ニッコリ笑って、  

「チャーナちゃんはどっちかっていうと ”おばか” だヨン♪」

キョドル、チャーナちゃん。「おば…… おば、 ”オバ○大統領” ?」


”アハハハハハ……”  全員で大笑い。

仕切り直して、谷間さんが尋ねる。 「ナンシー長官、今日はどうしたの?」

ちょっと勿体つけながら、

「……うん…… 実は、新しいマシーンをGETしたので試運転に来たんだケド……

ちょっと、訳有りなんだヨン♪」

谷間さんとジロゥ、興味津々。 

「って、いうと。 ”NEW爆熱マシーン”?」

「それとも、 ”真・爆熱王” でごわすか?wktkするでごわす!」

ナンシー長官、首を横に振って、 

「全然、違うヨン♪ 一言でいうと、 ”タイムマシーン” だヨン♪」


一同、驚愕!!! 「タァイムマッスィィイーーン???」

チャーナちゃん、訳が判らず。 「……それ、食べれる?」

興奮するホウクウド。

「それはまた、予想の斜め45度上を行くお答。察するに、ナンシーのことだから

電車形態?」

複雑な面持ちのナンシー。 「まぁ、似てるっていえば似てるけど……」

大きな瞳に銀河大星雲、レノちゃんウルウル。 「早く、見たーーーーーい!!!」

大きなウサ耳とちっちゃいシッポを交互に振り振り。

おねだりポーズのレノちゃん、かーわイィッ♪


「じゃぁ、ちょっと呼んでみるから。皆、離れてヨン♪」

一同、散り散りに離れて大きな輪になった。

ナンシー長官、豊満な胸元からハンドベルを取り出すと、

”チリ~ン、チリ~ン、チリ~ン” 

と3回、鳴らす。そして、目を閉じ何やら一心に唱え始めた。


すると、突然! 

公園の上空に俄かに暗雲が立ち込めると生暖かい風がヒュゥウ~ッと。

団栗眼で見つめていたチャーナちゃんの髪がファッと立ち上がる。

「父さん、凄い妖気を感じます……」


”デンデンデンドロドロドロドロ…… プゥオオオオオーーッ”


公園のアスファルトグラウンドがメキメキとひび割れ地中から何か大きな物が出現。

一同、凝視。少しずつ、その全貌が明らかになると…… それは、 蒸気機関車?? 


唸るホウクウド!「こ……こ、これは…… まさか」

絶叫するレノちゃん。「キャァアー♪ レトロね♪ 電車より、素敵♪」

荘厳な蒸気機関車の、一両目だけ?

黒光りするその車体は歴史の重みさえ感じさせるものである。

ふぅうーと一息入れるとナンシーが説明を始めた。

「これは、唯の汽車じゃないヨン♪…… 極レアの ”時渡りの汽車” だヨン♪」


それを聞くなりホウクウドが、 

「ウゥム。やはり、そうか…… 某有名漫画に登場するあれか?」

「ちゃうヨン♪ これも ”神降ろし” の力だヨン。」

ホウクウド、ビックリ!!! ナンシー、しみじみと。

「蒸気機関車は100年以上の歴史があるから、 ”付喪神” が宿るヨン。

その中でごく稀に、 ”時渡り” の力を持つものが顕現することがあるヨン。

だから ”極レア” なんだヨン」


レノちゃん、興味深深。車体を撫でたり叩いたりしながら、

「それ、何?何?何?…… 優しく、教えて(ハート)♪」

ナンシー長官、これ以上無いほどのドヤ顔全開。

「えっへん。 実はこの汽車は、

この世とあの世、更には、未来と過去へも行ったり来たりできる優れもんだヨン♪」

そして、手にしたハンドベルを高く掲げると、

「普段は地獄に保管されているんだけど、これで呼び出すことが出来るんだヨン♪」


レノちゃん発情期。 「ね、ね、ね!…… 今すぐ、乗りたぁーーいーー!ハァハァ」

しかし、困った顔のナンシー。 

「実はそう簡単には行かないヨン♪…… ちと、 ”訳有り品” だヨン♪」

ホウクウド、尋ねる。 「話を聞かせてよ」

「…… まず、この汽車、このままじゃ100%の能力が出ないヨン♪……

100%で動かすには、もの凄い ”妖力” がいるんだヨン♪」


一同、驚愕! 「よぉおおおりょぉおおくぅうう???」

ホウクウド納得。

「確かに、

漫画では、○玉の親父が寝込むほどの ”妖力” を必要としていた記憶があるね」


「き……きんた……M……」

ボケを入れようとしたチャーナちゃんをすかさず制する谷間さん。

「チャーナちゃん持ってるよ。妖力」

ボケ失敗であたふた。 「あたし、そんな怖いもの、持ってません」

すると鋭いツッコミ。

「だって、こないだ夜中に、髪の毛針でゴキブリ刺してたじゃん!! ピピピって」


冷ややかな視線のレノちゃん。

「チャーナちゃん、

日頃から只者では無いと思っていたけど。やっぱり妖怪だったのね……」

泣き崩れるチャーナちゃん。  

「ひ、ひどい…… あたしのこと、そんな風に思ってたなんて」


普段無口のジロゥ、思いついた様に、 「チャーナどん、 ”おばけ” でごわすか?」

キョドル、チャーナちゃん。 「お、おば、おば、 ”おはげの○太郎” ?」


意外に短気、キレるレノちゃん。

「おばんでも、おばかでも、おばけでも、なんでもいいから、

早く ”妖力” 出しなさいよ!!」

レノちゃん、チャーナちゃんの頬をグリグリ。

「レノちゃん、乱暴したら駄目だヨン♪妖力は汽車の火室の中で出して欲しいヨン♪ チャーナちゃん、お願いするヨン♪」

嫌がるチャーナちゃんを無理やり引きずって火室に叩き込む鬼のレノちゃん。

「さぁ、そういうことだから…… キバッて!…… たっぷり出して」


お願いされては仕方が無い。渋々、了解。

一同興味深深。火室の中を覗き込むと、妖しく光るチャーナちゃん。


「ああっ、もうダメッ!

ぁあ…… 妖力出るっ、妖力出ますうっ!!

いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!

んはああーーーーっっっ!!!ヨッ、ヨウッ、妖力ォォォッッ!!!

おおっ!妖力ッ!!ヨッ、ヨウッ、妖力ッッ!!!妖力見てぇっ

ああっ、もうダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!

いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱい妖力出してるゥゥッ!

んはああーーーーっっっ!!!ヨッ、ヨウッ、妖力ォォォッッ!!!

は、恥ずかしいいっ!!こんな、こんなに出るなんて、

こんなの、こんな妖力はじめてええぇっ!!

いやああぁぁっ!見ないでえぇっ!とまら…… 止まらないのおぉぉっ!

どうして、どうしてええぇっ!!ああああぁぁぁああああっっ!!

いやああぁぁああっ!!多い、多いよおおぉぉっ!

なんで、なんでこんな日に限ってこんなに一杯出るのおぉっ!? 」


一同ドン引き…… でも、ひとり冷静なナンシー長官。

「チャーナちゃん! 凄いヨン♪…… どんどんゲージが上がるヨン♪ 

もうこれで十分だヨン♪」


深いため息。全てを出し切ったかの如く、ヨロヨロと這い出るチャーナちゃん。

「大丈夫?」 谷間さんが歩み寄る。

他の連中はナンシーの側で妖力ゲージを見ている。

「凄いなぁ、こんなに溜まるとは思ってなかった」


落ち着かないレノちゃん。 「早くゥー♪ 出発しよーヨォー」

「……ちょっと待って、レノちゃん。もうひとつ重要な問題があるヨン♪」

思いっきり膨れっつらで、 「何ぁに?? まだ、何ンかあンのォ?」

「これ時間移動する時、地獄を経由するんだヨン♪

だから、生きている物は乗れないんだヨン♪」


ホウクウド、谷間さん、ガッカリ…… 

「でも、するってぇとナンシー長官も乗れないって訳?」

「そうだヨン♪ 基本的に妖怪じゃないと駄目だヨン♪」

ちょっと悩んだレノちゃん。

「じゃぁ……

この "妖怪" は確定として、他にはあたしとジロゥなら大丈夫じゃないの?……

ロボットだから、元々生き物じゃ無いし」

チャーナちゃん大慌て。 

「えぇっ? あたしも行かなくっちゃ駄目なの?」

「当たり前じゃない。 何かあったときに ”妖怪石炭” が必要よ」


暫く悩んでいたナンシー。

「うん。 汽車はタイマーで自動帰還できるようにセッティングして……

あと、あの世でロボットとバレナイように工夫すれば行けるかもヨン♪」

レノちゃん大歓喜! 「うわぁーーい! うわぁーーい! うわぁーーい!」


お茶を濁すようにジロゥが尋ねる。 

「でも、未来と過去のどちらに行くでごわすか?」

するとレノちゃん、解りきった様に、

「そりゃあ、 ”過去” に決まっているわ。

”未来” なんて待ってれば自動的に行けるじゃない? 面白く無いわ」

ナンシー了解。

「じゃ、何年にするヨン♪ 妖力の量で判断すると10年ぐらい昔ならOKヨン♪」


すると突然。ホウクウドが提案。

「 ”1999年7月” がいいよ。実はその時、秋葉で大変な事件が起きたんだ。

ウフフ」

爆釣!!レノちゃんの一本釣。

「何? 何? 何?? あたし、まだ生まれてないし。ねぇ、何があったの??」

妙に惚けて悪戯っぽく笑うホウクウド。

「うん。あまり詳しく教えると面白くないけど…… 実はその年、

秋葉のジャンク街に ”恐怖の大王” が降臨したんだ……

その名は ”電脳魔神ブゥドォー” 」


レノちゃん興奮!「キャー♪♪♪ カッケー♪ 強い、それ?」

「そりゃあ強かったさ。最強最悪。

でも結局、 ”ある勇者” によって倒されたから今の平和な秋葉があるんだけどね」


鼻息荒くジロゥが尋ねる。 「誰でごわすか? その勇者とは?」

ホウクウド、ニッコリ笑って、 「……それは、秘密です」


谷間さんも興味深深。

「おいら、その頃は秋葉で働いていなかったから初耳だよ。

チャーナちゃん、知ってた?」

チャーナちゃん全否定。 「あたしは2009年製だから……」


「それじゃ、 ”1999年7月” に決定するヨン♪」


満場一致。 「ラジャーー!!!」

「準備するのにちょっと時間が掛かるヨン♪ 1時間後にまたここに来てヨン♪」


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