第20話 ***

以下、ルーシー回想モード


満開の桜。ポカポカした春の朝。 「お姉ーちゃん、早くぅー!」

今日は小学校の入学式。お姉ちゃんのアンシーとナンシーは6年生。

新1年生のルーシーは、真新しい上履きとランドセルを持って興奮モード。

「えへっへー♪ 友達100人、出来るかなぁ?」


教室の黒板に名前を書いて、みんなの前で自己紹介。

”大丈夫よ! インドから引っ越してきて、一所懸命、日本語の勉強をしてきたから

カタカナだったら書けるのよ。 えへん!”


「えーっと、 ”ルーシー” でーす。

お姉ちゃんの名前は、 ”アンシー” と ”ナンシー” でーす」


アンシー

ナンシー

ルーシー


微笑む、先生。 「あらあら、お姉ちゃんの名前は書かなくていいのよ」

”えっへへへ。 覚えたてのカタカナでいいとこ見せちゃったかなぁ”


その時、突然……

当時、某巨大掲示板で大流行の兆しがあった ”縦読み” に嵌っている糞ガキが

いきなり、


「ありゃーー? 縦読みすると***だねー。 ”***ちゃん”って呼んでいい?」


引きつる先生。


しかし、当時6歳のあたしは ”***” という単語の意味を知る由は無かった。

ーーーそれに、ちょっと可愛かったし。


「いいよぉ♪ あたしのこと、これから***って呼んでね(ハート)」


幼き無垢の心が如何に残酷なものなのか……

”久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ” 

BGM 薔薇○美しく散る(ベルサ○ユのばら)


家に帰って、さっそくお姉ちゃん達に報告


「お姉ちゃん。あのね、あたしね…… みんなに***って呼ばれるの。

可愛いでしょ?」


引きつるお姉ちゃん達。


それから、小、中、通して9年間。 来る日も来る日も……

100人の友達に、よってたかって ”***” と呼ばれ続けた、あたし……


運動会の徒競走。

クラス代表で頑張るあたしに嵐の様な応援。

「ぶっち切れーーー!! ***ぅーー!!」

後でビデオを確認したら、その場面だけ音声カットされてたし……


秋の遠足。

クラスメイトと ”バナナに関する永遠の議題” について議論していた矢先。

「***は、入らないって言っているわよ」 「うそ。 絶対、入るわ」 云々

すると、それを聞いていた担任の男の先生が、 

「お前ら、ようく見ておけ!!」 

と、いきなりあたしのバナナを取り上げて、自分のおけつに ずぶり と……

先生、違います。 ”おけつ” じゃなくて…… ”おやつ” です……

あたしのバナナを返して……


小学校の卒業文集。

仲のいい友達からは、

”中学に行っても可愛い***と一緒のクラスになりたいです。***LOVE!”

と、書かれる始末…… 本当に一生の思い出よ…… 後で捨てたし……


中学で気になる男子から放課後に貰った ”人生初のラブレター”。

”僕は毎日***のことが好きで好きで堪りません。

起きていても寝ていても、君の***、いや***が目の前に浮かんできます。

***ちゃん、お願いだから僕と思いっきり突き合ってください”

流石にその頃には***の本当の意味は知っていたし……

だいたい、 ”君の***” って何? ”突き合って” って日本語、変?

なんかムカついたから思いっきり股間を蹴り上げてやったわ…… 

そしたら次の日に転校しちゃったの。 今はどうしているのかしら?

……あの釜イダー5人衆の中に良く似た人がいるけど他人の空似?


中学の卒業式。

生徒代表で卒業のメッセージを読むあたし。感きわまった友達たちが、

「あ……あ、***ぅー、

あなたと過ごした日々を、絶対に、絶対に忘れることは無いからねぇー」  

そうね、永遠に忘れられないわ…… 高校は速攻、越境入学したけど


こんな、あたしが…… こんな不憫な…… あたしが……

身を持ち崩して…… ”池袋、乙女ロード” を歩く女になるのは……

どう考えても自然の成り行きでしょ!! ゥワァアアアーーーン


回想モード終わり。現在の爆熱王


一同、驚天動地。 

ホウクウド静かに語る。 

「可愛い***、いや、ルーシーにそんな壮絶な過去があったなんて」

谷間さん。 「サブロゥの昔話どころじゃないね……」

葵さん。  「アヒルちゃんだったら良かったのに、***ちゃんじゃ……」

チャーナちゃん。 「兄貴! どえりゃあ過去を聴かせていただきやした!」


ゆっくりと爆熱王の高度を下げながら、ホウクウド。

 「じゃ、もう終わりだね…… ふぅ、腹減った」


すると突然、

悪鬼の如くルーシー! 「終わるわけないじゃないの!」

一同、 「ひょぇえええーーーー!??」


力強くコブシを握り締めるルーシー。

「まだよ。まだ、終わらん。チャーナちゃん、お願い力を貸して!」

チャーナちゃん力強く。 

「へい! 兄貴のためなら、あっしゃあ、尻だって貸しやすぜ!」


瞳の奥に赤く燃える二つの炎。ルーシー、アクセル全開!!


「発動! ドーピング・エンジン! ”萌臓(もえぞう)” 」


”……モ、モ、モモモモ、モエキュンモエキュンモエキュンモエキュン……”


説明しよう

ドーピング・エンジン ”萌臓” は、ルーシー担当の左足、救急車内に内蔵する

爆熱王の第二の心臓。通常時は爆熱王のシステム調整を行っているが、緊急時には ”萌力” を発揮して破損箇所の修理や兵装のパワーアップが可能な万能ドクターとなる。


今、爆熱王の身体中に ”萌力” が満ち満ちる……

ハンドルを通してチャーナちゃんにも ”萌力” が伝わる。

キタ━━━━━━━━━━!!


すると突然、貧弱だった左手の吸い込みホースが見る見る太く、逞しく増大。

そして同時に、左手首がトランスフォーム! 

一同、驚愕! 「ド、ド、ド、ドォリル?…… ”ドリル” !!だぁーー」 

そう、男子の本懐。憧れの ”ドリル装備” だ!

 

もはや魔王でさえも裸足で逃げ出すような形相のルーシー。

「ふ、ふ、ふふふ…… MAX爆熱パンチなんて、生ぬるい……

これよ、これで無くちゃ駄目……」

震える視線のチャーナちゃん。 「兄貴…… 怖いッス」


ルーシー、一喝!!

「チャーナちゃん!!!! ”爆熱ガールズ” の意地を見せるのよ!

これを…… 

あの ”変態お釜野郎の***” に、思いっきり、ブチ込んでやるの!!!」

「へ…… へい……」  


爆熱男子陣、全員けつの穴が縮こまる思いで、 

「ひょぇえええーーーー!!! 勘弁してぇー」


ルーシー、絶好調!! 席を立ち後ろからチャーナちゃんの両肩に手を置いて、


「僕の出口は今日から入口 …… 発動!  ”***ブレイカー” !!!」


「ラジャッ!」 

チャーナちゃんハンドル旋回。目標、キング・ゲイ・ダ

アクセル全開、 

”ギュ、ギュ、ギュゥィィィイイイイイーーーーーン!!”

けたたましい音をたててドリルが廻る!


爆熱王、秋葉上空から***(非常口)目掛けて一直線に急降下!

”グォオオオオオオオオオオオオオオ!!!”  

BGM 駆け〇ぐる青春 (ビュー〇ィーペア)


エグいドリルの先端は正確に***(非常口)にHIT! 

全てのパワーが先端に集中する!!

”ギュ、ギュ、ギュゥィィィイイイイイーーーーーン!!”


「ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア 」

思わず声を漏らすキンゲ・ゲイ・ダ。

しかし、爆熱王の全力を持ってしても硬い***(非常口)を貫けない。


下卑た笑みを湛えてルーシーが呟く。


「お前、ここは初めてか…… 力を抜けよ……」


そう言って自席アクセルペダルを無造作にグイッと踏み込む。

萌臓からドリル先端に熱い萌力が注入され、凶悪にドリルの回転スピードが上がる。

”キュキュキュキュキュィイイイイイイイイイイイ!!!”


「はぅぅぅぅううううぁぁあああああああーーんんん♪」


「もう、限界です!」 「とどめよ♪」  ”グウウィッ”

”メキメキメキ、バリバリバリリリリリイ!!!”


***(非常口)突破!!


絶叫するキング・ゲイ・ダ!! 

「HaHaHaHAHHAHAHAHA---AA!!!!!」


”キュィイイイイイイイイイイイ、キュキュキィ…………”

凶悪なドリル先端は腹部操縦席まで注送され、そこで静止した。


「やったわ♪」  「兄貴、流石です!」


怖くて手で顔を覆い震えていた爆熱王男子陣。 「……お、終わったのか?……」

冷静に状況を調査する葵さん。 「イーグルアイ!!」

暫くして、安心した様子で、

「どうやらドリルの先端は腹部操縦席、サブロゥの尻直前で止まっています……

奴は気絶している様子です」


報告を聞いて、ようやく落ち着きを取り戻したホウクウド。

「……そうか。これで本当に終わったんだな……」


全員が安堵感に浸り、眠るような疲労を感じていた。


……のも、つかの間。

うつ伏せていたキング・ゲイ・ダの身体がピクピクと痙攣している。

「今度は何?」  不安げに見つめるアリエンワの一同。

すると、両肩と両足の付け根、そして背中の一部が不自然に盛り上がる。


”ボコボコボコ……”


中から5機の…… UFO??…… いや、 ”お釜” が飛び出した!

と、同時にジャンク街全域に響く、あの釜声。


「今回は、貴方達に勝利を譲るわ……あんな、素敵な武器があったなんて…… 

もうメロメロ♪」


叫ぶ、ホウクウド!

「サブロゥ、いや釜イダー5人衆! 貴様ら、まだ、あきらめていないのか?」


「そうよ。お釜はしつこいのよ!…… 

それはそうと、確か***ちゃんって言ったわよね」


怒るルーシー。 「***って、呼ぶなぁー!」


「ホホホモホモモ…… 失礼。

”お釜” と ”腐女子”。 互いに***を極める ”修羅の道” を歩むものとして、

とことん***談義を交わしたいわ。

今度、御徒町にあるあたしのお店に来てね、お願い …… ステーキ食べ放題よ♪」


顔を真っ赤にして、***、いやルーシー。 「絶ーー対っ! 行かないっ!!!」

すると、チャーナちゃん。物欲しげな顔で、 「……兄貴、ステーキ食べ放題ですぜ」


そうこうするうちに5機のお釜は編隊を組んでジャンク街上空を一周すると、


「この脳がある限り、釜イダーは不滅。

見てらっしゃい、今度は最強のボディをGETして戻ってくるから……

それは、そうと…… 

もう、いらなくなったキング・ゲイ・ダの ”自爆装置” を入れといたから、

あと5分後には秋葉全域は木っ端微塵よ…… 精々、頑張ってねーー♪」


5機のお釜は、遠く西の空へ飛び去った。

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