第14話 交通渋滞
数日後、黄色い公園
陽光麗らかな初春の休日。
チャーナちゃんは黄色い公園上空をあちこち漂いながらお昼寝中。
いや、ロボットだから内部COREがスリープ中。
公園では朝から谷間さんが何やら作業中。
そこへ異様な臭気を漂わせながら、ジロゥ参上。
「谷間どん、おはようさんでごわす。何をしてるでごわっしょ?」
谷間さん、首から提げた手ぬぐいで額の汗を拭うと、
「うん。このバイクとリヤカーを繋いでいるんだ」
そういうとちょっと小休止。バイクを見るジロゥ、
「これは、スーパーカプのカスタム仕様でごわすな。ライトが四角で
セルモータ付きでごわす」
谷間さん、¥100の カロビスソーダ を一口。ちょっと、驚き。
「へぇ、ジロゥがバイク好きって意外だね」
するとジロゥ、得意な面持ち。
「おいどんは、カプに乗って出前をしていたことがあるでごわす」
谷間さん、大笑い。
「ところで、このバイクはどうしたんでごわすか?」
谷間さん、得意顔。
「うん、買ったんだよ。中古だけど。
実は、新品LechuのR9を買おうと思って貯めていたお金を使っちゃったんだ」
ジロゥ、神妙な面持ち。
「どうしてでごわすか? あんなに欲しがっていたでごわすのに?」
谷間さん、キッパリ。
「うん。今週発売の週間アサキー、見たらさ……
R9ってi7積んでいるのにCore2DuoP8700より性能低いんだもん。
あれじゃ、買う気がアリエンワー(個人の感想です)。
それに、前からバイクとリヤカーを合体させたサイドマシンを造りたかったんで
いい機会かなって思って」
ジロゥ、ニッコリ笑って、
「サイドマシンとはかっこよかでごわす。おいどんにも運転させてほしかでごわす」 「うん、いいよ。完成したら試乗してよ」
すると、上空からチャーナちゃん。 「谷間ー、はやく乗せろぉー♪ ムニャムニャ」
その頃、某所
牛皿+味噌汁+ひまわりを前にして、思い悩むホウクウド。
”最近、この秋葉を狙う闇の勢力の攻撃がグレードアップしているのが心配だなぁ…… こうなるとやっぱり、早急にあの計画を実施する必要があるか?
でも、悩むなぁ……“
すると、中華系お姉さん。
「お客さん、牛皿冷めちゃうヨ。早く、食べテ。他のお客さん詰まってるかラ」
そう言われて慌てて掻きこむホウクウド。思いっきりむせてしまってゴホンゴホン。
前のキモオタ、牛まみれで一言。 「アリエンワー」
黄色い公園
「良し! 完成!」
谷間さん、ガッツポーズ。
上空を漂っていたチャーナちゃんはリアカー上のダンボールに直行。
チョコンと座って、 「いくぞぉ、豚ぁ! 出動だぁ!!!!!」
固唾を呑んで様子を見ていたジロゥ、乗る気満々。作業で疲れた谷間さん、
「ジロゥ、そこらへん慣らし運転してみてよ。おいら、ちょっと休んでいるから」
ジロゥ、早速カプに跨り起動。ティルルルルルゥ♪と軽快な音。起動一発、絶好調。
「それじゃ、ちょっと一廻りしてくるでごわす」 ”ブロロロロロッロロォ♪”
Let's Go!
チャーナちゃんを乗せたサイドカーは黄色い公園を飛び出しジャンク通りへ。
その後姿を見送りながら、谷間さん、
”これでダンボール回収の効率UP。リヤカー親方にいい顔できるぞ。 ニヤニヤ”
すると、いきなりジャンク通りから激しいブレーキ音。 ”キキキキキキキイーーッ”
「何だー??」
只ならぬ気配を察した谷間さんの視線の先には戻ってくるサイドカーの姿。
サイドカーは谷間さんの側に停車。息をきらせたジロゥとチャーナちゃん。
「谷間どん、ジャンク通りが大変でごわす……」
その頃……
「おっと、危ない。気をつけないと……」
昼飯を終えて店を飛び出したホウクウド。あわや車に当たりそうになって大慌て。
しかし、その後、周りを見渡して驚愕。 「何じゃ??? …… こりゃぁ??」
車、車、車……
ジャンク街の全ての通りを道幅一杯に様々な車種の自動車が数珠繋ぎになっていた。
これでは歩行者は道の端にへばり付いて歩くしか無かった。
「ジャンク街を30年歩いているけど、こんな光景は初めてだなぁ。
何処かで事故でも起きて通行止めでもあったのか?? しかし、迷惑なことだ」
その日は、ジャンク街に集う誰もがこの光景が一過性のものであると思っていたのだが……
数日後、ジャンク街
ジャンクSHOP店員
「駄目だぁ、昨日も今日も道幅一杯に車がひっきり無しに走っているんで
トラック横付けできないよ。これじゃ品物を入荷できない」
ジャンカーのオッサンA
「今日も、売れ残りしか無いなぁ。これじゃ、秋葉に来てもおもろない」
ジャンカーのオッサンB
「昨日、轢かれましたよ。ボロボロになりましたよ。半壊ジャンクが全壊ジャンクにグレードUP」
などなど、ジャンク街の大動脈が断たれた状態で、もはや死活問題。
意を決した関係者が萬世署に通報しても、
「そうですね。お困りであることは解りますが……
道路交通法を守って走っている一般車はどうする訳にもいきません」
との、見解。確かにジャンク通りは一般道。
萬世署でも特に理由無く、Noプレートをつけた一般車の通行禁止は出来ない。
ジャンク通りで車の行列を見ながら、腕を組んでホウクウド、悩み中。
「うーーん、困った。
今まで土日は道一杯に広がって大手を振って歩いていたけどジャンク通りは
歩行者天国じゃないからなぁ。一応歩行者優先とはいえ一般的な車道だから、
ど真ん中を歩くのは、まずかったんだなぁ」
隣の谷間さん、同じく苦い顔。
「でも、これじゃ危なくてリヤカーも引けないよ。このところ仕事にならないんで
まずいよ」
そのまた隣のチャーナちゃん、どす黒い笑みをたたえて、
「ブッ壊しましょうか? あていが」
そういうとチャーナちゃんの周囲に無数のミサイルが出現。
慌てて制止する谷間さん。
「!? チャーナちゃん、それは駄目。一般車なんだから穏便に、穏便に」
チャーナちゃん不満そう。
目を閉じて熟考していたホウクウド、観念した様子で、
「やはりこういう問題には専門のあの人に相談するしか無いか?
嫌な予感がするケド……」
同時刻、ジャンク通りを見渡せる某ビルの3F
「……もう少しでジャンク街は壊滅するわ。そうしたら、あたしの天下。
この秋葉の一角を素敵な花園に変えるのよ。
いいこと、お前達。ジャンカーどもにあたしの偉大さと美しさを知らしめる為の
”男神輿” の用意は出来ているわネェ?」
すると、店の奥の暗がりからいくつかの野太い声で、
「ご安心ください、ご主人さま。最強の ”男神輿” が準備万端整えてございます」
「ホホホホホモモモモ。あたしの可愛い冥土ちゃん達。いつも、ご苦労さま。
さぁ、もうすぐジャンク街のグランドフィナーレが始まるわ」
甲高い声で笑うサブロゥ。
「ホホホホホホホホモホホモホホモホモホモホモホモ。
ホウクウドさん、一体どうするのかしら?…… お楽しみね……
あぁ、それにしても…… 期待しすぎて…… 釜が…… 釜が、疼くのよぉ……
ハァハァ」
漆黒のスーツに身を包んだサブロゥは、疼く頭を掻きむしると、うつろな目付きで
そう叫んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます