第二章 赤い瞳の雪うさぎ
第6話 ジャンク巡り
「わぁ、これが ”おでん缶” ですね…… あたし、初めて見ましたぁ!」
肌寒い今日の陽気にはぴったり。おじさんは喜んで貰えて一安心。
「これは、この竹串をうまく使わないと全部食べれないよ」
そう言うとホウクウドは少女の目の前で器用に ”おでん缶” をたいらげて見せた。
少女は大きな眼をクリクリさせてその様子を興味深く眺めていたが、自分の番になると悪戦苦闘。果たしてインドに ”おでん” はあるのだろうか?
少女の名は ”ルーシー” アンシーとナンシーの妹。
腰まで伸びたツインテールの亜麻色の髪をなびかせて、子犬の様に飛び跳ねている。
瞳の色は姉達とは異なる ”エメラルドグリーン”。
目鼻の配置のアンバランスなところににまだ幼さを残している。
セクシーダイナマイツな姉達と比べると、まだまだ発育途上。
未成熟な木芽の固さを感じるが、だが、それがいい。
今日は朝から冷え込むので、ルーシーはキャミソールの上に白いふわふわの毛が
一杯ついたオーバーコートを身に纏っている。ボトムはマイクロミニスカート。
そして、若さ故の生足に白いニーソー。引き締まった生足……
おじさんは…… これだけでご飯が三杯食べられそう。
そして、知りたくも無いだろうがホウクウドの上半身は素肌に羽毛。
下半身はピッタリした皮のパンツ。
防寒対策とともに高級感溢れる ”ちょい悪オヤジ” を気取っている。
ルーシーは現役バリバリの女子高生。
でも、二人の姉達と違って、な、なんと ”ジャンクPC” に興味がある女子高生なのである。
そういう訳で、卒論最終段階のアンシーと日本全国鉄道の旅に出発したナンシー
(ナンシーはアンシーの双子の妹。顔も体形も同じだが、なんと! ”鉄道オタク” )に頼まれて今日は秋葉ジャンク巡りに招待した。まず手始めに、ジャンク通りの玄関口で ”おでん缶” を賞味していたところである。
先日の事件で一時壊滅したジャンク街ではあったが、謎の力によってリカバリに成功した。しかし、ホウクウドの記憶を元にリカバリされたので何処かおかしいところが残ってはいるが、まぁそれはそれでご愛嬌である。
さて、今日はどういうルートで巡回するか?
なんとかおでん缶を片付け、期待に震えるルーシーの、その小ぶりな横乳が時折キャミソールの隙間からチラリホロリと覗いているのだが、これはこれで、また……
すると突然。ほんとに突然、ホウクウドは右頬を物凄い力で殴打された。
”ズガッ” 「ぐぅおおおおおおおぅっぅう!!」
弾みで道端に転倒するホウクウド。涙目で空を仰ぐと、そこに浮かんでいたのは……
「チャ、チャーナちゃん!!!!」
「お○○○ッ!! 許さんぜよ!」
伝説のセーラー服を着込んだチャーナちゃん。
決めポーズに構えたその右手には凶悪なヨーヨーが握られていた。
”そうか、それは判るんだが。それにしてもNBさん。
よりによって二代目の決め台詞をチャーナちゃんに教えるとは。
絶対、いい間違えるでしょう。しかも、女子高生の前であれは、ちょっと”
ホウクウドは、恐る恐るルーシーの反応を確かめる。すると、ルーシー、大興奮。
「きゃぁぁぁぁぁー!か、か、かぁわいぃっ。
何、これ?アキバって、こんな可愛いメイドさんもいるんですかぁ??」
ほっと胸を撫で下ろすホウクウド。
すると、可愛いといわれたチャーナちゃん。ちょっとはにかんだ笑顔で、
「あてぇはメイドじゃないきに。ロボットのチャーナちゃんぜよ」
ルーシーは大きな眼を更に大きくしてびっくり!!
「まーじで、ロボットなんですかぁ?? 可愛いすぎますケド……」
ルーシー、ちょっと得意げに。
「そーそー。 そう言えば、ありましたよね、昔。有名なロボット。確か……
なんとか ”Z” って?」
チャーナちゃん、すかさず 「肉質、南○Z号!!!」
”やば。チャーナちゃん、それは大きな勘違い”
ホウクウドは無理やり話を捻じ曲げた。
「そ、それは、そうとチャーナちゃん。今日は何をしているのかなぁ?」
すると、思い出したチャーナちゃん。 「ホウクウドに伝言があるきに」
ホウクウドは右頬をさすりながら立ち上がった。 「え、誰から?」
「谷間から伝言じゃきに。 えーと、 ”ジャマダを探せ” だぜよ」
チャーナちゃんはそういい終えると直ぐに空高く去っていった。 「さらばじゃ」
ルーシーはちょっともの足りなさそう。 「可愛い子ぉお、待ってぇー」
”ジャマダ? 駅前にあるじゃん。何それ?意味不明なんですケド”
ホウクウドには一体全体、何のことか判らなかった。
それはまぁそれとして、この小ぶりな乳、いやこのルーシーをどうやって連れ込む、
いや、それは犯罪だが、どう案内するか思案のしどころ。
張り詰めた皮のパンツの締め付ける痛みにかろうじて理性を保っていた。
すると、ホウクウドの顔を繁々と眺めていたルーシーから、
思い悩むホウクウドの心の内とパンツの中身を直撃するかの如く、ご提案が。
「辛そうですね。
良かったら、あたし…… ”特殊マッサージ” をしてあげましょうか?」
見上げるルーシーの子犬の様な瞳に、引きつるホウクウドの顔が映っている。
”と、と、と、特殊…… マッサー????”
思えば数週間前、草木も眠る丑三つ時、街の灯りがとても綺麗な某駅前で
始発待ちをしていたホウクウドの傍に来て、
「30分、3000円で、 ”マッサージ” するヨ?」
と、怪しい日本語で尋ねてきた婆ぁ、いやお姉さん。その後、逃げるホウクウドを
300m近く追いかけてきた、あの テケテケ の様なお姉さんならいざ知らず。
現役女子高生からの大胆なご提案。これを断るはずが無い!
更に追い討ちを掛ける様にルーシーの一声。
「あのぉ…… 人に見られると困るので…… 何処か物陰でやりません?」
こ、これは…… 間違いない。神様ありがとう。
ホウクウドは恥ずかしそうにうつむいているルーシーの腕を掴むと、ビルの物陰に連れ込んだ。 「こ、ここなら…… 誰にも見えないから。 お願いします。ハァハァ」
潤んだ瞳のルーシーの、その細く華奢な指先がどんな魔術を体験させてくれるのか?
高まる小さな胸と大きな、何度も言うが大きーな股間が今にも張り裂けそう。
「わかりました…… では、ここでしゃがんでください」
”えぇっ? 逆じゃないの? それとも、想像を絶する新プレイ????”
ホウクウドは、大人しくルーシーの前にひざまずいた。
すると、ルーシー。見上げるホウクウドの顔の上に開いた両手をかざすと、何やら詠唱を始めた。その指先から不思議な緑色の光が発せられると、それはホウクウドの顔面を蓋った。心地よい暖かさ。くすぐる様な感触に包まれると、見る見るうちに右頬の痛みと腫れが消えていった。 ”何だろう、この感触は? 不思議なマッサージ?”
夢心地な気分に浸っていたのはつかの間。
「終わりました。もう、痛みは無くなったでしょう」
「うん。腫れも引いて痛みも消えた。でも、どうして?」
”本当は、股間の腫れが収まらずにどうにも成らなかったのだが、
そちらは面倒をみてくれないのかな?”
ルーシーは、そっとささやく様に教えてくれた。
「ほんとは誰にも話しちゃいけないんですケド。特別に教えます。
”神降ろしの力” なんです」
「 ”神降ろし” って、アンシーの戦闘スキルと同じもの?」
「うん。あたし達の家系はみんな生まれつき多かれ少なかれその力を持っているの。アンシーお姉ちゃんは ”夜の女神ラ-トリー”。
ナンシーお姉ちゃんは ”昼の女神スーリヤ”。
そして、あたしはその間の ”曙の女神ウシャス” の力なの」
ホウクウドは思った。 ”そうか。それで、夜のアンシーは恐いんだ”
「ルーシーの力はお姉さん達ふたりと違って優しい力なんだね」
「うん。 ”曙” は ”夜明けの暁紅”。夜から昼に変わる ”再生の力” なの。
お姉ちゃんみたいに攻撃能力は無いけど。あたし、気に入っているんです」
「ふぅん。GAMEでいうと癒し系、ヒーラーだね。ルーシーは ”いやし系”
おじさんは ”いやらし系” 」
「キャハッ♪」 ルーシー大喜び。
「でも、お姉ちゃん達本当に強いんですよ。
アンシーお姉ちゃんは殆ど全ての魔神、魔獣を降ろせるし。
ナンシーお姉ちゃんはちょっと特殊で、全ての乗り物や兵器を降ろして使えるの。
今、付き合っている…… えーと、trainさんとかいう彼氏の影響で鉄道関係に嵌っているけど。この間見せてもらった ”ひとり交通博物館” っていう技が本当に凄かったんです。四方八方から蒸気機関車や新幹線やら無数の鉄道車両を召還して敵を縦横無尽に轢殺するんですよ。あんなの見たら絶対喧嘩できません」
顔から血の気が引く思い。 ”でも、それって無差別連続人身事故?”
「怒らせたら一番恐いのはやっぱりナンシーお姉ちゃんね。
むかーしモヘンジョダロを消失させた伝説のインド古代兵器も使えるから……
あっ、これは秘密だった」
”君たち姉妹の喧嘩には心底立ち会いたくない” と、そう思うホウクウドであった。
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