第3話 復活

翌日、今日は土曜日。ジャンクの杜(新店舗)に行けば冒険者の方々が一同に会しているはず。そこには、きっとあの人も。

谷間さんは期待に胸と股間を膨らませて、リアカーを引いた。

途中、職質に会わないようにチャーナちゃんは入念にダンボールの下に隠してあった。えいこらリアカーを引いてようやく到着。

見ると、NBさんと会いたかったキモオジ殿の姿が。


「ちは。 今日は、これを見てもらいたくて持って来ました」

そう言うと、ダンボールの覆いを外した。

それを見たNBさんとキモオジ殿は顔を曇らせた。


「いつかこういう日が来るとは思っていたが。とうとうやってしまったんだね……

遅くは無い。今から自首した方が罪は少しでも軽くなるから」

「すいません、魔が差しました…… じゃあ無くて、これアンドロイドだから!」

「えええっ、これが?」


NBさんとキモオジ殿は、チャーナちゃんの肢体を舐めるような視線で眺めた。

谷間さんは二人に猫の杜の一件を説明した。

「ほう、これをナー君さんが造ったんですか」 

「流石、ナー君殿の技術力。見事なものじゃまいか」


谷間さんは ”ブートパスワード” の事を説明した。

「ふぅむ。しかし、スイカの前にこれをバラす必要がありたりあ」

「サウナンダ。おいらには無理なんです」


すると、NBさんとキモオジ殿はチャーナちゃんの肢体をを上にしたり下にしたりしてあらゆる方向から舐める様な手付きで撫で回した。(注、アンドロイドです)

「流石に ”女体” の隅々まで知り尽くしているナー君殿の作。

すべてのパーツが見事に組み合わされて隙間が無い。

……うーーむ。 

これはどうやらあの技を使う必要があると思うんじゃがどうだろうかNBさん」

「お察しの通りでございます。あの技以外ではバラすのは不可能かと」


何やら、キモオジ殿とNBさんの間で策が決まった様子。

「谷間殿。ちと、チャーナちゃんに手荒な処置を施すが許されよーろっぱ」

「うん、いいよ。チャーナちゃんが復活するなら」


これで決まった。 「それでは、NBさん、あれをだすかんじなびあ」

NBさんは、巨大なリュックサックを開くと一巻きの太い ”たこ糸”を取り出した。 

「キモオジ殿、ここに。雑貨屋で買いました」


キモオジ殿は ”たこ糸” を伸ばし、チャーナちゃんの血色の無い純白の柔肌に幾重にも食い込ませた。それは強くも無く弱くも無く、微妙な加減で張り巡らされた蜘蛛の糸。見る見るうちに巨大な蜘蛛の巣に捕らえられた紋白蝶のオブジェが出来上がっていった。(注、アンドロイドです)


キモオジ殿は、空中に捉えられたチャーナちゃんに食い込むたこ糸を指でなぞると、

「ふむ。どうも、すべりが良くない。NBさん、蝋を垂らしてくれんかんぼじあ」

「はっ、かしこまりましてございます」

そう言うとNBさんは先程のリュックから今度は ”百目蝋燭” を取り出した。

「谷間さん、これは専用の蝋燭で蝋の温度が低いからチャーナちゃんの柔肌を傷つけることは無いのでご安心ください。雑貨屋で買いました」


”NBさん、そんな専用品をいつも持ち歩いているあなたって?

しかも、それを売っている雑貨屋って何?” そんな疑問が湧くのは当然の事。


「それでは、若輩者ではありますが蝋を垂らさせて頂きます。折角なので正式に」

そう言うと、NBさんはSM女王が身に着けるような怪しい仮面(雑貨屋で買ったもの)を装着すると、宙に吊られたチャーナちゃんの敏感な部分に タラーーリ タラーーリ と蝋を垂らしていった。

蝋は絶妙な加減で柔肌を蹂躙していった。蝋に暖められた柔肌はほんの少しピンクに変わった。(注、あくまでもアンドロイドですよ)

いつのまにか廻りを取り囲む様に集まった冒険者の皆さんは各々デジカメで撮影を始めた。パシャパシャと鳴り止まないシャッター音の響く中、NBさんは表情も変えずに淡々と蝋を垂らしていた。が、目は本気だった。(注、アンドロイドですから)


「もう、その辺で良かろう。では、一同、静粛に」

キモオジ殿がそう言うと、ピシャリと水を打ったように辺りが静まり返った。

聞こえるのは、興奮したNBさんの荒い吐息だけだった。


この技は  ”心技体”  の全てが合致しないと成功しない。

目を閉じチャーナちゃんを背に構え、キモオジ殿は ”たこ糸” の一端を指に絡めて

呼吸を整えていた。静寂の帳を破って、キモオジ殿の気合が発せられた。


「貴婦人!……縛り壺」


キモオジ殿の引いた ”たこ糸” はスルスルとチャーナちゃんの秘肉に食い込み、

それを押し広げるように展開した。

結果、チャーナちゃんのあられもない肢体は幾つかの艶かしい部分に分断された。

(注、アンドロイドですから誤解の無い様)

周りを取り囲む群衆は、「おぉ」 と低いどよめきの声を挙げた。


説明するかのぉ

ご高齢の良い子たちは、もう気づいておろうが某有名グルメ漫画に登場する技が原点じゃ。これを改良してジャンクPCも分解できる様に完成させたのがこの技。

しかし、アンドロイドにも使えるんじゃのぅすあめりか。


キモオジ殿は、パーツの一つを拾い上げると、 

「おぅ、これじゃ。これでスイカが出来る。後のパーツは谷間さんが持って帰りなさいすたんぶーる」

「ありがとう、キモオジ殿、NBさん」


谷間さんはチャーナちゃんのパーツを丁寧に拾い上げリアカーに乗せた。

しかし、手首、足首、生首の転がるリアカーを引いて黄色い公園に帰る途中、

何度も職質にあったことはいうまでもない。


黄色い公園、ダンボールハウス


谷間さんはニヤニヤしてチャーナちゃんを触りまくる 。

胸元の Iカップを舐めるように乳輪に触れたとき 「もっと」 という声。

”おかしい。まだ起動していないはず ”

もう一度、乳輪を触り 「もっと」 が聞こえるのを確認した。

埋もれていたピンク色の突起が姿を表し 、谷間さんは、なでたりつまんだりつねったりした。 「あんっ 」 強くすると 「痛い」 とチャーナロボはいう。

突起を押す。

音声が変わり「自爆装置が起動しました。解除するときは15分以内に解除します」

谷間さんはかちかち押す。 「もう解除できません」


危機の谷間 チャーナちゃんは自爆するのか ……


男坂を下ると昌平橋通り。それを横切ると黄色い公園が見えた。

「まだ、谷間さんは起きているのかしら?」


公園の入り口に差し掛かり見るとダンボールハウスに灯りが点いていた。

アンシーは足早に近づくとびっくりさせようと思って不意を付いて中を覗いた。

「谷間さん、今晩は(ハァト)」


谷間さんは顔面蒼白。アンシーの顔を見ると地獄で仏に逢ったかの如く言い放った。

「ア、アーンシーーちゃん。自爆装置が止まらないんだよぉ! もう茎水を飲むしかないと」


アンシーはチャーナちゃんの胸のポッチが左右交互に点滅を繰り返しているのを見て

事の次第を察した。 

「判ったわ、あたしにまかせて」

そう言うとアンシーはバッグから聴診器を取り出し、その先端をチャーナちゃんの胸に当てた。そうしながら、左右のポッチを指でつまみ慎重に回し始めた。

カチカチカチと何度か小刻みに回していくと、突然メッセージが変わった。

「自爆装置は解除されました。安全です。安全です」


アンシーは大きく息を吐きだすと、

「もう、大丈夫よ。でも、女の子の大事なところをおもちゃにしちゃ駄目よ」

谷間さんは、泣きそうな笑顔でアンシーを見つめた。

「助かったよ,アンシーちゃん…… 今晩の君は女神に見えるよ」


「それはそうと、チャーナちゃんバラバラになっちゃたわね」

「うん、キモオジ殿とNBさんが凄い技で分解してくれたんだ。

見てよ、傷ひとつ無いんだよ」

「ふぅん。でも、これは何かしら?」

アンシーはチャーナちゃんの丹田の位置にある不思議な ”球体” を指差した。

「うん、これ? おいらにも判らないんだけど、ナー君が付けたのだから何か重要なパーツかと思うんで、そのままにして置こうとかと……」


アンシーはその球体をしげしげと眺めた。

「あら、ここに何か書いてあるわ。どれどれ、えーーと。なんとか ”太子” って

書いてあるわね」

「”明太子” じゃないの?」  

アンシーは キャッキャッ と笑った。  


ピカッ


その頃、肉ビルの最上階


「ご報告致します」

「何事じゃ。構わん、申せ」

「はっ…… ”この世界の神” が降臨しました!」

「何! まことか?…… して、神の名は?」

「それが異国の神にございます。

波動から察するに ”雷帝インドラ” 、 ”暴悪龍ブリトラ”。

更には ”鬼女マハーカーリー”  かと」

「なに! 同時に3体もか?……

しかし、異国の神とは言え世界神。天変地異のひとつも起こるはずじゃが」

「 ”神降ろし” にございます。依代はかねてより目をかけていた異国の娘……

やられました」


「うぅむ…… じゃが、真に恐るべきは  ”超越人”  じゃ」

「 ”超越人”  とは、どの様な存在でしょうか?」

「あやつめは、まことに恐ろしい。何でもありじゃからのぅ。限界が無い。

200年ほど前、わしが苦汁を舐め異界に逃げ帰ったのも奴のせいじゃ……

まだ、奴が覚醒しておらぬ事がせめてもの幸いじゃのぅ」


谷間さんは上機嫌で茎水の一升瓶をブンブン振り回しながら歩いていた。

某工業に発注していたチャーナちゃんの特殊パーツが完成したので

他のパーツと仮組みした状態で肩に抱えていた。

今日はこれからキモオジ殿らと合流して制御パーツを組み込む予定なのだ。

これでチャーナちゃんは特殊パーツを新品にして完全復活するはずだ。

期待に夢と股間を膨らませて先を急ぐ谷間さんだった。


「おぅ、来たな。来たな。チャーナちゃんが北千住」

皆さんは待ち構えていた。

「いやぁ、遅くなりました。これで全パーツが揃いました」

「じゃ、早速組んでみる可能姉妹」


全員であれこれ楽しみながらチャーナちゃんの全身を組み立てていった。

元々、こういう事が大好きな人たちなので楽しくない訳が無い。

「完成、NeWチャーナちゃん!」

「でも、全裸だよ」


するとNBさんがリュックから何やら取り出し、

「この  ”伝説のセーラー服”  を着せましょう。オプションもあります。

雑貨屋で買いました」


「準備万端。電源を入れるよ。スイッチON!」


”シーン”


チャーナちゃんはうんともすんとも言わない。

「あれ、谷間さん。変なUSBメモリを射しっぱなしにして無い?」

「おかしいな?右胸のポッチが電源スイッチだとナー君に教えて貰ったのに」


すると、 ”ブーーーン”

「あっ、起動音がしたよ……

そう言えば、ホウクウドさんから ”VAIBOは一度BIOS完全クリアした後、システムの認識に数分掛かることがある” って聞いたことがある」

”チャーナちゃんのシステムコアはVAIBOなのか? それでおかしくなったのか。

妙に納得”


すると、チャーナちゃんの長い睫毛がはためくと黒目がちな瞳が虚空を見詰めた。

「あっ、目を開いたよ。右目に ”VA" 、左目に ”BO" の表示。やっぱり、VAIBOだ!」

そして控えめで小さな唇が震え、何か小さな声を発した。


「変身」


突然、チャーナちゃんの全身が眩い光に包まれた!  「うぁーーっ」

全員が一歩後ずさると、チャーナちゃんはふわりと空中に浮かんだ。

「チャ、チャ、チャーナちゃん????」


チャーナちゃんの両足首には炎を帯びた輪、手首には棘の付いたパワーリフトの様な腕輪、腰にはパレオを纏っていた。さらに肩から腰に巻いた天女の羽衣。

その姿はまさに ”天女” そのものだった。


「あーーーい。谷間さまぁ、お呼びですかぁ?」


姿形は変わっていても幾夜を伴にした谷間さんのことは覚えているらしい。

「チャーナちゃん?だよね。その姿は? どうして空を飛べるの?」


チャーナちゃんはにっこり笑って答えた。

「あーーい。 ”那托太子” の力を貰っちゃったみたいですぅ」


説明しますぅ

那托太子(なたたいし)は宝貝(ぱおぺぇ) ”霊珠” によって生まれた世界最古の人造人間ですぅ。まぁ、アンドロイドのご先祖さまぁって感じ?生まれたときから3つの宝貝(腕輪を飛ばして攻撃する宝貝「乾坤圏」、空を飛ぶ事を可能にする非常に珍しい宝貝「風火輪」、水に振動を起こす腰布型の宝貝「混天綾」)を身に纏っていて、更にビーム状の散弾を飛ばして攻撃するバズーカ型宝貝「金磚」、伸縮可能な槍(実質長射程ビーム砲)型の宝貝「火尖槍」、敵の捕獲・攻撃、または味方や自分の一時避難に使うシェルターの宝貝「九竜神火罩II」を持っているのですぅ。七つの威力の鉄腕ア○ムって感じ?


谷間さんは困惑したがそんな事はどうでも良かった。

チャーナちゃんが素敵に変身したことだけで十分なのだ。

“もう、難しいこと言われても困ってしまって。

もはや亀太のカキP食べて茎水を飲むしか”


「でも、嬉しいーーーーーイ!!!」  「あーーーい」


谷間さんとチャーナちゃん。これで、物理攻撃型最強ユニットが誕生した。

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