第42話B More than a feeling
これまでアナはカイルとフェリアの閉ざされた記憶を解放してきた。メリル曰く、アナが彼らにもたらす大きな変化はこれからで、しかも強烈なものらしい。
フェリアに行うことは、これまでのような単なる記憶の開放ではなく、より高い次元への変革を促す、言わば覚醒だということだった。例えばザクレブが来たときなどはアナが覚醒した状態でないといけない―― そんなことをメリルは言った。
それはカイルに対しても同じで、フェリアが地球人に重要な役目を果たすのと同じ様に、カイルはフェリーナに重要な役目を果たす必要がある。そのためにアナがカイルを覚醒させないといけない。
二人を覚醒させる方法は、これまでの記憶の解放と異なる。強力なエネルギーをアナから与えてショックで覚醒させるのだ。メリルは具体的なやり方をアナに伝授した。そして……
「最後はあなたの話です」
(私の話……?)
アナはごくりと固唾を吞んだ。
「フェリーナの話を聞き、あなたのルーツを密かに詳しく調べました」
メリルが私のルーツを調べた? ただの生体型アンドロイドなのに?
「あなたはすでにアンドロイドではありませんよ。細胞を強化されたアイフェル星系の人類に変化しています」
「アイフェル星ってメリルさんの母星ですよね?」
「はい、アイフェルは今フェリーナが療養している星であり、私の故郷でもあります」
「私達はそんなところの人間なの?」
「正確にはあなたはフェリーナの生体データを元にアイフェルでデザインされたD58細胞型の人間です」
「うー、わかんない」
「理解する必要はありません。要は私等と同じスターランナーになるべく作られた人間だと言う事です」
「それなら何となくわかるような……」
「もっと大事なのは、あなただけがレゾナ系のシードを埋め込まれているということがわかったということです」
「レゾナ、シードって何ですか?」
「レゾナ系惑星群は謎の惑星群で詳細な探査ができません。私達には未知のレベル9の高度な生命体がいると言われています。シードとは生命に革新的な進歩をもたらす種です。レベル5以上の星の知的生命体はシードによって急成長している可能性が示唆されています。シードが具体的にどのような物質なのかはわかっていませんが、シードが組み込まれている個体は識別が可能です。レゾナ星系のシードが組み込まれている人は初めて見ました。それがアナ、あなたなんです」
「それって、私どうかなるんですか?」
「どうもなりません。ただし、これからは自分の力に気を付けてください。大事にはならないと思いますが、あなたにはすごい力が秘められているんです」
アナはメリルに見られない角度で、手のひらに光を灯した。数日前から出来るようになった不思議な現象だ。小さい灯なのだが、強力なエネルギーが凝縮していることがなぜか分かった。
「アナ、伝えたい事は以上だけど、何か質問はある?」
「い、いいえ……」
「ニューアイルに来て早々で申し訳ないんだけど、こちらは私達で大丈夫。アナは明日またイナクへ戻って頂戴。途中で試しにハイワープというテレポーテーションを使って戻ってもらうわ。イナクに着いたらフェリアとカイルのサポートをしてもらう、そして……」
「二人を覚醒させるんですね」
「そうです。正にあなたが鍵なんです。そして、秘められた自分の力にくれぐれも注意してください」
アナはメリルの話を聞いて恐ろしくなり、手のひらの光をそっと握りつぶした。
「では頼みますよ。三人の新たなスターランナーに地球人類の未来がかかっていますからね」
「分かりました」
アナは、口をぎゅっとつぐんで、決心を新たにした。
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