第42話 アナの正体

 ニューアイルでは劇場の高速輸送船への女性達の乗船が着々と進んでいた。


 メリルは凄い数の女性達の動きを監視しながら、関係者とのコンタクト、色々な方面への情報収集を進めていた。


 それにはニューアイル関係者だけではなく、ガイア、地底世界、ザックやフェリーナの関連情報も含んでいた。


「あ、フェリア? 私メリル。これから第一陣がニューアイルを出発するよ……そう、イナク到着は5時間後くらいかな? これから24時間、休み無しで人を送るけど、大丈夫だよね?」

「こっちの準備は大丈夫。そうだ、アナはそちらに着いた?」

「ここにいるよ!」


 アナが映像に入り込んできた。メリルの顔に自分の顔を付けている。


「良かった。ザックもどこかの星に無事に旅立ったからね。アナはそっちにしばらくいていいから」

「フェリア、適宜判断しますよ。お互いベストを尽くしましょう」


 メリルが最後に言った。


「じゃあ、また連絡入れる。カイルにもよろしく言っといて」

「分かったわ。じゃあね」


 多数の女性を乗せた大型高速輸送船は徐々に浮上し、ゆっくりと広い幹線道路上に移動してきた。


 この後ワイドアンダーパスの入口まで、女性達を安全に高速に運んでいく。


 大勢の女性と女の子達は少し不安げに船内劇場の椅子に座ってる。前方の巨大なスクリーンには外の風景が映っている。青い雪は降り方が強くなっている。それにも関わらず青い空と陽ざしが不思議な雰囲気を醸し出している。


 命を運ぶ船はランス山脈に向かって逆光の陽光の中に溶けていった。



 ◇ ◇ ◇



「アナ、ちょっと来て」


 次に輸送船に乗り込む第2陣の女性達の待機の様子を上の方から見ながら、メリルがアナに言った。


 メリルはそのすらりとした背筋のまま、切れのある眼差しでアナを見つめた。アナは長話になるのを覚悟して聞き始めた。


「何ですか? メリルさん」

「過去の記憶はほとんど戻りましたね?」

「ま、まあ……」

「今の内に君に伝えておかないといけないことが色々とあります」

「はい……」

「まず、私の事をきちんと説明します――」


 メリルの口調がいつもと違う。


 メリル・ガウフ本人が言うには、彼女はアイフェルという惑星の出身で、今は惑星管理局の仕事をしている。数年前から複数の担当惑星の一つである地球についての潜入調査を度々行っているということである。その過程で地球育成担当のフェリーナはもちろん、ザックや地底世界についても詳しく調べている。


「次に、地球の地底世界について説明します」


 メリルはメガネを外してアナを見つめて話し出した。


「地底には約30層もの人類の居住世界があります」

「30層……もですか?」

「そう。地表に住む人たちが知らないだけで、およそ一万年前から地底は開拓されています」

「どんな世界なんですか?」


「層毎に違うのよ。今回行く第七層は、マヤ文明の生き残りが比較的多いかな? 優しい人達が住んでいる。いくらかの魔法も使える神秘的な国だ」

「そうですか、そんな世界があるんですね」

「他に信じられないような世界もたくさんあるけれど、知る必要はないね」

「はい。わかりました」


「今回は元地表人のヴィンセントとアイラが我々を迎え入れる準備をしてくれています」


「この前、光の柱から出てきた超音速機に乗っていた人達だ」

「そうらしいですね。彼らからも聞きました。彼らは短い期間で既にスターランナーになっている逸材です。今回の移住も問題無くサポートしてくれるでしょう」

「それはありがたいです」


「次は貴女の番ですよ。さて……今度はフェリアとザックの覚醒の話です」


 そう言われたアナはポカンとした顔でメリルを見つめた。メリルはアナの周りを歩き始めた。


「あなたは鍵よ、二重の意味でね――」


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