第34話B アンダーパスとザックの秘密(2)
――しばらく前、地球から遠く離れた惑星フォルボスにザック・ランバートとメリルがいた。
フォルボスは一見穏やかな星で住民も静かに暮らしているが、なぜか男性しかいない。まるで地球のイナクのようだ。その様子を上空から見ているのがこの二人だ。ザックもメリルもフェリーナと同じ言わば超人で、浮遊術どころか、星間移動などもできる神のような存在である。
ザックとフェリーナは各々、担当の惑星がありその人類の進化をサポートしている。そしてメリルは彼らの活動を監視してるオブザーバーである。
「なぜ、突然俺が訳のわからんところから出て来てくるのかって? そりゃ、俺が陰の主役だからだよ。そして、このフォルボスは俺が担当しているんだ。ちなみに名前が微妙だが火星の衛星とは関係ないぞ。ここに俺の厄介なアバターがいる。ザクレブだ。こやつは最初は一介のアバターに過ぎなかったのに、いまや成長しすぎて、星間を駆けまわるヤバイ存在になっている。俺でもなかなか手をつけられん。なあメリル?」
「ザック。このフォルボスでザクレブが起こした事は、きっちり惑星管理委員会に報告しておいたからね。あなたの管理不行き届きよ。ザクレブはあなたに似て女好きで、フォルボスの女性を好き勝手に管理しようとしたために、女性全員がフォルボスを去って別の惑星に行ってしまった……」
「従順な一部の男達も連れてな……」
「残った、哀れな男達……これからどうなるの?」
「さあな、絶滅だろうな。地球の様に種を存続させる科学技術はフォルボスの連中には無いからな」
「銀河系史上、初めての騒ぎだわ。ザクレブに引き継いだあなたの思考回路はどうなってんの?」
「俺はまだまともだ……やつは、俺よりひどい」
「そして、ほらザクレブはもうどこかの惑星に行こうとしている。また何かをやらかすつもり?」
「やつが考えることは、もはや俺にもようわからん。そしてやつはクレイジーにも関わらず、能力の向上が凄まじい。いずれ俺達と同じ能力レベルに達するだろう」
「あなたのコピーが増えるのは勘弁して欲しいわ。とにかく、私はまた地球に行くわ。あそこももうすぐ大きなイベントがやってくる。よく監視しに行かないと」
「ああ、地球は俺も行くんだ。フェリアを探しにな。メリル、一緒に行くか?」
「誰があなたとなんか。それからフェリーナはその内あなたを見限るかもよ。地球に育成用の男性アバターを作っているから」
「なんてやつ?」
「カイル……って言ったかな?」
「わかった。そいつも探すよ。もう一度聞くけど地球、俺と一緒に行かないか?」
「やだ。別行動よ」
「つれないなあ。じゃあフェリアを見つけたら教えてくれよ」
「いいわ。ただし教えるべきと私が判断したらね。じゃあね」
メリルは、ザックの寂しげな顔と、男しかいないフォルボスの様子をもう一度見渡してから、地球へと向かった。それはカイルが旅に出る一週間前のことだった。
そしてまだ見ぬ謎の男ザクレブはやはり地球に向かっていた。その可能性にザックが気がつくことはなかったが、メリルはすでに、そのリスクを推定していたのだった。
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