第31話B 緊急ランディング(2)
埃まみれのウィンドウ越しに、街の野次馬達が何事かと大勢集まり始めているのが見えた。
ここでも青い雪が降っているが、住民達は気にしている様子は無い。
アナがシートベルトを外しながら平然と言う。
「さてカイル、これからが仕事だよ。ラッキーな事に、住民の方から集まってくれている。プロジェクタ―の準備はしておくから」
アナはそう言うと、ヘッドセットを僕に渡した。頭に装着する。
僕は、考えていた住民への説明をまずここですることにした。まずはこれから起きる事、僕達男がしなければいけないことを一刻も早く伝える必要がある。
ドアを開けて……ドアは変形してかなり固くなっていたが、何とか開けた……僕はそのまま機体の上に上がった。
機体の周りには何重もの人垣ができていた。二百人程度集まっているだろうか、さらに緊急車両とともに続々と人は増えつつある。それを見渡し、僕はマイクのスイッチを入れると話し始めた。
「お騒がせしております。私はカイル・ウォーカーと言います。このイナクの住民です」
すると野次馬の中から大声がした。
「嘘つけ、お前ランスピークを越えてきただろう。よそ者じゃないか!」
周りがざわめく。僕は、釈明した。
「確かに、ランスピークは越えてきましたが、僕はここの住人です。住民コードを確認してください」
僕は首に掛けていた認識票を引きちぎると、群衆に向かって投げた。
群衆の誰かが、そのコードをスキャナーにかけて叫んだ。
「本当だ! こいつはここの住民だ。姿・顔も一致している!」
「なぜランス山脈の向こう側から来た?」
「それは後で。大事な事を最初に説明します」
「今、降っているこの青い雪、これは地球の全球凍結の前兆です。特殊な小惑星によりもたらされています。手元のデバイスのFCS(ファクトチェックシグナル)を確認してください。」
みなが腕にはめているデバイスでファクトチェックを行った。僕の言っていることが正しいとネットワークで認定されている。
「本当らしいぞ」「まじか」
「詳細はこの後ガイアシステムから公開してもらいます。とにかく間もなく嵐になり、気候は悪化する一方になります。そして地表は凍結が始まります」
さらに群衆はざわついた。ここからが難しい。一見、荒唐無稽な発言をするのだから――
「暴風雪で行動が難しくなる前に、ペアで地表から避難する必要があります」
「ペア?」「地表から避難?」「どういうことだ?」
これから女性と地底の話をしなければならない……
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