第14話 知られざる地底世界

「カイル、お前アメリカ大陸は知っているのか?」ザックが言う。

「知らない。お前もだろう?」


「俺はお前よりは知っている。そんなところに行って大丈夫か?」

「ああ、アナがいるし、ピコから情報をもらう」


 僕がそう言うと、左腕のピコが反応した。


「アメリカ大陸については機密情報なので、カイルには開示できません」


「ピコっ、冷たい奴め」


「私がいるから何とでもなるわ。カイルは心配しないで」

 アナはそう言うと、ザックの方を向いた。

「残念なのはあなたの方でしょう。ここでさよならね」


「いや、俺も渡れるよ」

「ワープのパス(許可証)が無いでしょう?」

「ふふん、そんなものは要らないさ」

 ザックが鼻で笑った。


「俺は自力で転送システムをいじれるのさ」


 僕は目を剥いた。ジェイクとハウザーも目を丸くしている。こいつ、何者なんだ? ワープシステムの中身を知っている者など、今まで会った事も聞いたことも無い。レガシー技術なのに。


「本当にしつこい男ね!」

 アナがまた吠えた。


 そこから光の柱の近くを通り、――近くと言っても数キロメートルは離れているが――ワープステーションまで移動する。今度はザック達もさほど離れずついてくる。


 近づけば近づくほど光の柱の巨大さ、高さを感じ、僕は圧倒された。


「ピコ、光の柱って実際何なんだ?」

「カイル、『光の柱』の正体は分かっていないし、探ることは禁止されてる」


「それは知っている。でも禁止するってことは、知られたらやばいものってことだろ?」

「イエス」


「どうやばいんだろうね?」

「わかんない」


 僕は光を見上げながら左手のデバイスに聞くのを諦めて、もう一人の詳しそうな子に聞くことにした。


「アナー! ちょっと近くに来て、聞きたい事がある!」

「クリップ使いなよ!」とアナ

「そっか」


 僕はポケットからクリップを取り出し耳に装着した。通信機能がある。


「アナ、光の柱について知ってることを教えてくれない?」

「カイル、『光の柱』の正体は分かっていないし、探ることは禁止されてる」


 ん? その台詞さっき聞いたな。


「なーんて、それがガイアのデフォルト回答。『光の柱』については私も詳しくは知らないけれど、下手に巻き込まれると、訳がわからないところに転送される通路だって聞いている」


「通路なんだ。一体どこにつながっているんだろうな? 月かな?」


 するとクリップから第三の男の声がした。


「あれは、地底深い階層世界へ通じるトランジションパスだよ」


「へ?」


 ザックだった。突然の光の柱の説明が僕には理解できなかった。


「おまえ通信チャネル合わせられんのか?」

「もちろん」

「この盗聴野郎」

「人聞き悪いな。せっかくVパスの説明をしてやるってのに」


 ザックは後ろの方に離れてついてきているが、どうやらクリップをつけて周波数も合わせている様だ。僕は興味があるので仕方が無くザックに聞くことにした。


「Vパスって言うのか? 地底の階層って何だ?」

「お、お前知らんのか? と言うか記憶が戻ってないんだったな」


「ああ、そうらしい」

「じゃあ、簡単なところだけな。地球には一般人が知らない地底の巨大な空間がある」


「マントルとかコアがぎっしり詰まってるんじゃなかったっけ?」


「原始人並みの知識だな、カイル。地表の人間が知らないだけで、地底には巨大な人工地下空間が階層的にあるんだよ」


「あり得ん。掘れないし、高圧力に耐えられないだろう」


「掘れるし、圧力/重力は制御できる。お前が今乗っているプレートだって重力制御だろ」


「圧力の桁が違う」

「もう何万年も前に制御技術は確立されているんだよ」


「そんなの聞いたことない」

「地表のお前ら旧人類が、知らないだけだ」

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