案件9.濡れ衣のマンジロウ
面会室のガラス越しにいる、痩せ体型の男性が
「君たちは、僕の無実を証明してくれるのか!?」
「ええ、なので色々話していただけますか?」
「僕は10年前、学校でいじめられてから、ずっと外に出るのが怖かったんだ」
「でもある日、ライブ配信で聖女様を初めて知り、美しく輝く姿を見てファンになったんだ」
「そして直接会うために、再び外へ出ることを決意した。今の自分があるのは、あなたのお陰だとお礼を言うために」
「あんた、義理堅いんだな」
「でも、その機会は中々訪れなかった」
「聖女の人気は絶大な上、警備は厳重。直接会話など、
「聖女様に会いたいという想いは、日に日に強くなって気づいたら、
「・・・・・」
闇のエネルギーは、欲望や負の感情が強い人間に引き寄せられる。
それが体内にたまり、ある程度を超えると
「だからってストーカーはダメだぞ!」
「そうだよね・・・」
「マナ・・・聖女様を攻撃する意志は、なかったんですね?」
「もちろん!お礼を言うチャンスを窺っていただけだ!」
「三日前の夜も、聖女様や護衛に気づかれないよう、影に潜りながらついていったんだ」
「ようやくお礼を言うチャンスが来たと思ったら、部屋の窓ガラスが突然割れて聖女様が狙われてると思い庇ったけど、護衛に勘違いされて捕まったんだ」
「聖女を襲った犯人は見たのか?」
「いや、それらしい人は見なかったよ」
その時、面会室にいた看守が声をかけてきた。
「面会時間は終わりですよ」
「わかりました。すみませんマンジロウさん、また来ます」
「今日はありがとう、頼んだよ!」
三人はマンジロウとの面会を終え、留置所の外で話し合っていた。
「どうだボンゴラ?」
「マンジロウさんからは、ウソも悪意も感じなかったよ」
「お前は以前、人を理解する技を幼馴染から教わったと言ったが、聖女のことか?」
「うん、マナキちゃんが言ってたんだ、『人は自分が思うより、多くの情報を発信している』」
「視線や表情、しぐさ、声のイントネーションなどで大体わかるんだよ。それでもマナキちゃんには敵わないけど」
「マナキはボンゴラの師匠でもあるのか!」
(人を理解するテクニックは俺でも知っている、だがボンゴラは俺以上だ)
(お前が敵わないと言う聖女は、どれ程人を知り尽くしている?)
「で、次どうする?」
「
その後イザベロが車で迎えに来て、三人をホテルまで送ってくれた。
夕方頃ホテルに到着し、イザベロは三人をマナキが襲撃された客室へ案内した。
客室では、当時の状況がそのまま残されており、床にはガラスの破片が散乱している。
「さすが聖女様!スイーツだスイーツ!」
「スイートルームでございます」
「現場を無闇に荒らすんじゃない」
「カネリ、遊びに来たんじゃないんだから」
はしゃぐカネリをボンゴラがなだめている間、アゼルは客室をくまなく調べた。
(スイートルームの窓ガラスは対
(聖女の証言だとシャドスターに気づく前、窓の向こうから殺気を感じて後退し、その直後に窓ガラスが割れた)
(襲撃犯の目撃情報が無いとなると、姿を消す異能の使い手かあるいは・・・)
アゼルは割れた窓から外の様子を見回した。
はるか遠くにはたくさんの高層ビルが並び、その絶景を妨げるものはなかった。
カネリも外の景色を見ていると、その中で一際高い塔に指を指した。
「ボンゴラ、あの高いのは何だ?」
「え~と、なにタワーだっけ?」
「
「そうでしたか、ありがとうございます」
「・・・・・」
アゼルもタワーを見て、深く考え事をしていた。
同じ頃、マンジロウが収容されている留置所が何者かに襲撃され、建物は損壊し看守たちは全滅していた。
そしてマンジロウの前に、薄暗い水面に浮かぶ油のような虹色の髪をした人物が現れた。
「君は一体・・・!?」
「おれは
そう言ってサエラは、邪悪な笑みを浮かべマンジロウに手を伸ばした―
イザベロがスマホで留置所の状況を確認していた。
「状況は今、どうなってますか!?」
「看守たちは負傷し命に別状はありませんが、
「ゲキアツにヤバいってことか!」
「聖女は今何処に?」
『先ほど終えた祈祷でお疲れなので、
「二人とも行こう!マンジロウさんは多分、マナキちゃんを探してるはずだ」
「いや、俺は襲撃犯を追う。奴を野放しにするのは
「わかった」
「負けるなよ!」
聖女マナキとマンジロウの運命や如何に!?
To be next case
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