案件5.黒火手団VSアノニナゴ

 ここはヤスエ邸から数十キロ離れた廃工場である。


 工場の中には、触角が生え顔に奇妙な模様がある人々が集まっていた。

 皆正気を失いうつろな目をしており、その中にはククリもいた。


「みんなご苦労さま、この袋に金品を入れるんだ」


 操られた人々の前に現れたのは、冠を被った人型昆虫の闇異化ネガモーフ、アノニナゴだ。

 人々は盗んできた大金や宝石を、彼が用意した大きな袋に入れていった。


「いやぁウマいウマい!マヌケな連中をウマい話で誘い、力を与えるだけでこんなにたくさんの金品が手に入るんだから!」


「金品を詰め終わったら、この自慢の脚で大ジャンプ。文字通り高飛びって寸法よ!」

「そして残されたお前たちのご褒美は、『強盗罪』!」

「がんばって罪を償って、人助けに貢献しな!!」


「しかしこのガキは危なかった、直接操ってなかったらムーンジュエルを取り損ねてたからな」


 アノニナゴは高笑いしながら、ククリの頭をなで回した。

 

「よし、入れ終わったな」


 アノニナゴが、盗んだ金品でいっぱいになった袋に近づいたその時、

 横からクナイが飛んできて、両足に命中した。


「ぎゃあああああ!!!」


 突然のダメージで悲鳴を上げ、地面に倒れた。

 ついに黒火手団くろびてだんが、アノニナゴのアジトに到着したのだ。


「これで奴はしばらく跳躍できない、ブラックに仕留めるぞ」

黒火手団くろびてだんとして、お前を許すわけにはいかない!」

「ククリの思いを踏みにじり、罪を着せやがって・・・」

「ゲキアツに燃やすぞ虫野郎!!!」


 アゼルは冷静だが、ボンゴラは静かに怒り、カネリは激しい怒りをあらわにしている。


黒火手団くろびてだん!?異救者イレギュリストの新人か!?」

「何故ここがわかった知らねえが、生きて帰れると思うな!!」


 アノニナゴは起き上がりながら合図を送ると、手駒と化した人々が三人に襲いかかかる。


「カネリ、こいつらは加減しろ!」

「わかってら!」

「この手で救ってみせる!」


「「「変異!!!」」」


 三人が掛け声を言うと、闇のエネルギーが身体を覆い尽くし変異した。

 そして、黒火手団くろびてだんとアノニナゴの戦いが始まった。




 黒火手団くろびてだんの戦力はたった三人なのに対し、アノニナゴの戦力は百人以上。

 さらに彼の手駒たちは、力が増した生身の人間なのでうかつに攻撃できない。


 黒火手団くろびてだんが圧倒的に不利と思われたが、苦戦する様子もなく人々たちを次々と無力化していった。


 アゼルが変異したのは、黒纏異救者こくてんイレギュリスト黒皇ブラックレクス

 ガイコツのような顔で、漆黒のコートをまとっている。

 隠密行動を得意とし、素早い身のこなしと多彩な技で敵を翻弄する。


黒呪毒ブラックベノム!」


 黒皇ブラックレクスの両手から、黒い液体がポタポタとしたたり落ちた。

 人々はそんなことを気にせず、黒皇ブラックレクスに押し寄せる。

 

黒幻自在ブラックイリュージョン!!』


 黒皇ブラックレクスは残像を残しながら高速移動し、人々の攻撃をかわしながら、彼らの目に黒い液体をあびせた。


「うぅっ・・・!」


 黒い液体を浴びた人が、次々と倒れ動けなくなる。

 黒呪毒ブラックベノムには、相手をマヒさせる呪いが込められているのだ。


「安心しろ、死にはしない」


 カネリが変異したのは、灼炎異救者しゃくえんイレギュリスト:カネリファイヤ。

 身体から炎を放ち、変異前と同じく右半身に火傷のアザがある。

 凄まじい怪力と、圧倒的な火力で敵をなぎ払う強力な異救者イレギュリストだ。


 カネリファイヤは十人もの手駒に取り押さえられるが、いとも簡単に振り払い十数メートルふっ飛ばした。


「カネリもうちょっと手加減して!」

「ゲキアツにむずかしいな!」


 ボンゴラが変異したのは、救手異救者すくいてイレギュリスト:リチャウター。

 白いボディと、ピンクのマフラーを巻いているのが特徴だ。

 あらゆる状況下での人命救助が可能で、その力は戦闘でも活かされる。


 リチャウターは武器を持った人々を受け流しながら、胴体にぐっと手を当てた。


救手すくいてパルマ!』


 手を当てられた人は光り輝く波動を浴び、目立った外傷を負うことなく意識を失った。

 リチャウターは救手すくいてパルマで、人々を無力化していく。


「あと少し!」


「くそっ、これでも食らいがやれ!!」


 劣勢だと判断したアノニナゴは、ネコくらいの大きさはあるイナゴの大群を呼び出した。


「コイツらは遠慮なくやっていいよな!」

『チャンプファイヤー!!!』


 カネリファイヤは口から凄まじい規模の火炎を放ち、イナゴの大群を跡形もなく焼き尽くした。

 さらに仕留め損ねたイナゴも、黒皇ブラックレクスの素早い剣さばきで細切れにされ、リチャウターの手さばきで地面に叩き落された。


 アノニナゴは戦力をほとんど失い、敗北が決まったと思われたが

 

「コイツの命が惜しければ、変異を解け!」


 卑劣なアノニナゴはククリを人質に取り、鋭い爪が彼女の首に迫る。

 

 これでは手も足も出せない、どうする黒火手団くろびてだん!?


To be next case

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