案件4.父娘とムーンジュエル
ククリの依頼の真相を知ったカネリとボンゴラは、二手に分かれククリとヤスエを探した。
「放してよ!」
「ここで何をしているんだ!」
ヤスエの邸宅は騒然としていた。
刃物を持ったククリが押し入り、護衛に取り押さえられていたのだ。
幸いヤスエに怪我はなく、他の護衛に守られながら心配そうにしている。
ククリは鬼気迫る表情で叫び声を上げた。
「早くしないとお父さんが死んじゃう!」
「ムーンジュエルを売れば、大金が手に入るのに!!」
その時、ククリの頭から触角が生え顔に奇妙な模様が浮かび上がった。
「ムーンジュエルを・・・よこせぇえええ!!!」
姿が変わったククリは力が増し、取り押さえていた護衛を振り払った。
そしてナイフを持ったまま、一直線にヤスエに向かう。
ドスッと刺されたのは、ヤスエを庇ったカネリだった。
カネリは右腕にナイフが刺さったまま、ククリの両腕を押さえた。
カネリの腕力はとても強く、大の男を振り払ったククリでも敵わない。
「・・・カネリさん!?」
「事情は聞いたぜククリ、お前も大切な人のためにこんなバカをやったんだな」
「でもお前の父ちゃん、いい奴なんだろ?」
「娘が悪党になってまで助かりてえなんて、きっと思ってねえよ」
「あなたに何がわかるの!?」
「オレも育ててくれた親を助けたくて、バカをやった」
「でも、全部失った」
「!?」
カネリは過去の自分と、今のククリを重ね合わせていた。
自分と同じ過ちを犯してほしくなかったのだ。
「・・・だったらどうすればよかったのよ!?」
「こんなことする前に、オレ達にちゃんと助けを求めろよ!」
「アゼルなら、お前の父ちゃんが助かる方法、絶対見つけてくれる!」
「ボンゴラもああ見えてなあ、やるときゃやるんだよ!」
「オレもゲキアツパワーで、お前を助けてやるからさあ!!」
「・・・・・!」
カネリの言葉に、ククリは動揺しているようだ。
その時、ヤスエが車椅子を押してククリに近づいた。
「ククリさんと言いましたね」
「これを差し上げます」
ヤスエは身につけているムーンジュエルを外し、ククリに差し出した。
「ヤスエ様!?」
「それはお父様の形見では!?」
「父の・・・形見!?」
ククリはムーンジュエルが、ヤスエの父の形見と知りさらに動揺する。
「父ならきっと許してくれるわ」
「こんな若い子に、父親を失う悲しみを負わせたくないもの」
「これでお父さんが助かるといいですね」
「・・・・・!!」
カネリの言葉とヤスエの優しさに触れ、ククリはガクッと膝をついた。
「・・・わたし・・わたしは・・・なんてことを・・・!」
ククリはようやく、自分の間違いに気づきその場で泣き崩れた。
ヤスエはククリの背中に手を当てて寄り添い、カネリは彼女の本心に早く気づけなかったことを悔やんだ。
その時、ククリが突然苦しみだした。
「うぐっ!」
「ククリさん!?」
「ガァっ!」
ククリは正気を失いヤスエに襲いかかるが、異変に気づいたカネリがククリを取り押さえる。
しかし、ククリの手がヤスエの手に当たりムーンジュエルを落としてしまった。
ククリはさっきよりも強い力で暴れ、右腕を痛めたカネリの拘束を振り払った。
そしてすぐさま、床に落ちたムーンジュエルを奪い取った。
「しまった!」
護衛たちも取り押さえようとするが、ククリは次の瞬間高くジャンプして、天井を突き破り姿を消した。
あまりに突然の出来事で、一同は呆然としていた。
「一体どうなってんだ!?」
その後カネリはボンゴラと合流し、アゼルにヤスエ邸で起きたことを報告した。
護衛たちはヤスエとカネリの手当をし、破損した天井の修理と瓦礫の掃除を行っていた。
「ヤスエ様申し訳ございません、我々が不甲斐ないばかりに・・・」
「それよりもククリさんが心配だわ、大丈夫かしら・・・」
「ヤスエばあちゃん、アイツと宝石のことはオレ達に任せろ!」
「あなたも右腕大丈夫なの?」
「こんくらいへっちゃらだぜ!」
カネリの右腕には包帯が巻かれ、出血は止まり問題なく動かせるようだ。
『状況は把握した。原ククリを裏で操っているのは、
「アノニナゴ?」
『闇バイトを主導する、
「ククリさんの姿が変わったのは、アノニナゴの力が原因か」
『恐らく原ククリは、ムーンジュエル強奪に協力した見返りに、売却金の半分を渡すなどと唆されたのだろう』
「アノニナゴの野郎、絶対ぇ許さねえ…!」
『だが、ようやく奴のアジトが見つかった。メッセージに添付する、そこで合流するぞ』
「確認した、カネリ行こう!」
「おう!」
ククリを救い、ムーンジュエルを奪還し、首謀者アノニナゴを倒すため、カネリとボンゴラはヤスエ邸を後にした。
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