第1話

「ふぁ?」

「なに間抜けな声出してるんです?」

「いやだって…えぇ?え?んぇええ?」


弱点と言うから、もっとそれらしいことかと思っていた反面…ショックがでかかった。

リルキスは呆れながら我様を見ているが、だってこうもなろうに。

だって魔王と勇者は宿命みたいなものだ、物語に出てくる永遠のライバルとでもいえる関係性だ。

そんな、そんな当代の勇者リオが…女に弱いって!


「し、信じられるかぁーい!」

「ふむ、そうきましたか…じゃあ他にも見ます?勇者が女に興奮して鼻血出してるとこ」

「イメージ崩れるからやだ!」

「信じられないと言うから見せようとしてるのに…」

「だって、火に焼かれても溺れても崖から落ちてもピンピンしてるようなやつだぞ?女に弱いとか信じられないでしょ!」


むしろ無敵すぎたが故に弱点がそれなのがやだ。

じゃあ勇者リオはむっつりすけべってことなのか!?


「まぁでもいいじゃないですか♪魔王様の天敵である勇者に弱点があるなら、それを突いて倒すべきです♪」

「…あのさ、女に弱くても当の本人が無敵なら倒すの無理なんじゃないのか?」

「ノンノン、物理的に倒そうとしなくても別の方法で倒せばいいだけですよ!」

「別の…ほうほう?」

「はい、ズバリ!勇者リオをハニトラで籠絡するのです!」

「魔王さま、ハニトラのお時間です!」


「……ふぁ?」


本日二度目の間抜けな声が出た。



「いや、いやいやいや!なんで我様がリオにハニートラップを仕掛けなきゃならないんだ!」


リルキスの提案は受け入れ難いものだった。

ハニートラップ、略してハニトラ。

己の身体を使って相手を誘惑、そこを突いて相手を貶めるというものだが、なぜリルキスは我様にそんなものを提案してくるんだ。


「え〜?だって魔王様ってとびきり美人じゃないですか〜♪」

「む、ま…まぁ我様の美貌は魔族一だからな!」

「はい適任」

「いや適任にはならんじゃろ!?逆に聞くがお前は主君を敵地に送ることがよくできるな!」


そうだ、リルキスが言っていることは我様を敵地に送ると言っているようなものだ。

カモにネギどころか魔王をもたせようとするな!

しかし、リルキスは我様の反対を押しのいて反論する。


「で・す・が!成功すれば勇者討伐どころか、仲間に引き入れることだってできる可能性があるんですよ?」

「そんな可能性あるわけないだろ!別に我様じゃなくてもお前が行けばいいだろ!」

「はぁ!?わたくしには彼女がいるの忘れたんですか!超がつくほどのヤンデレ彼女を放ってハニトラなんて仕掛けたら首が飛びます!」

「ぐ、確かにそうだな…」


真に迫った気迫に押されて、我様は黙る。

リルキスには彼女がいる、それは魔王軍では周知の事実なのだが…リルキスの彼女は超がつくほどのヤンデレなのだ。

たしかに、リルキスにハニトラを任せたら勇者ではなく彼女に殺されること間違い無しだ。


だが、困る…困るぞ!

リルキスがダメなら他の魔族に…!


「じゃあ四天王のだれかに…」

「全員恋人いますよ」

「うぐっ…!」

「じゃあ魔王軍の下っ端に…」

「パワハラですよ」

「うぐぬっ…」

「じゃあ誰にやらせればいいんだ!」

「それは魔王様ですね」

「なんで我様ァ!」


いじめか!?いじめなのか!?

上司いじめて楽しいか?楽しいだろうなぁ!我様だって先代魔王にイタズラしてたからなぁ!お互い様だなぁ!


「嫌がってますけど、色々考えた結果魔王様が一番適任なんです」

「…じゃあ理由言ってみろよ」

「まず一つ!顔がいい!」


ふ、言うじゃないか…///


「そして二つ!スタイルがいい!」


ふむふむ…褒めちぎってもなにもでn。


「最後に!」

「恋人がいない!!」

「戦争じゃゴラァ!!」


魔王パンチ!しかしリルキスはそれを華麗に躱す!

なぜよける!命狙ってたのに!


「危ない危ない…だって本当でしょう?四天王や私、幹部含めて唯一恋人いないの魔王様だけじゃないですか」

「う、うるせー!!それを言ったらもう戦争しかないだろがー!!」

「まーまー、かわうそな魔王様は今回のハニトラで彼女ができることを祈ってますよ」

「勇者と付き合うとかできるか!」


からかうリルキスに何度も攻撃をいれるが、スカばかりなので我様はげんなりしながらリルキスを睨む。

くそ、我様は超美人なのに…なんで部下ばかりが幸せになっていくんだ!


嘆く我様を横に、リルキスは真面目な声音で会話を続けた。


「とはいえ魔王様、勇者は着々と魔王城まで近付いています、倒せないのであれば直接堕とすしか方法はありません」

「わたくしもサポートしますし、今回ばかりはわがままは出来ませんよ?魔王様」

「……ぐ、真面目雰囲気やめろリルキス」

「やればいいんでしょ、やれば!勇者だろうがなんだろうがこの我様がひねってやるわ!」

「ふふ、流石は魔王様」


パチパチと拍手を送られるが、良い気にはなれない。

高らかに宣言したはいいが、我様は今から勇者の元へと向かう…。

弱点が女なんて、そんなの信じられるか!どうせ棺桶に入るに違いない。


ナイーヴな気分のまま、我様とリルキスは勇者の元へと旅立った。



「お似合いですよ、魔王様♪」

「む、ツノがなく肌の色が異なるというのは違和感がすごいな…」

「普段はすごいねじれたツノしてますしね、それに青肌から肌色になった魔王様は違和感はあれど美人なのは間違いないですね♪」


リルキスの魔法によって人間に変装した我様は、勇者が滞在する街…砂漠の国にきていた。

ここは魔族領に最も近い人間の国だが、砂漠という環境のもと、人間どもは簡単には魔族の元へは行けないようになっている。

機能としては、魔族襲来を防ぐ砦のようなものだ、実際かなり堅牢だ。


「もし、ここで我様が魔王だとバレれば大量の人間どもに襲われるだろうな」

「まぁその時は蹴散らせば大丈夫ですよ」

「勇者がいる中で蹴散らせたらの話だがな!あと、それはそれとして!!」

「この服はなんだ!!」


リルキスに鬼気迫る表情で問い詰める。

その瞬間、ひらりと舞う薄いベールは太陽にあてられキラキラと輝く。

それは、もはや裸同然のような衣装だった。

かろうじて隠すべきところは隠されている、しかし布面積が少なすぎる!

色は紫、腰や胸に金の装飾とまとわりつくように薄いベールが飾られている。


まさに踊り子の衣装だ!それもめちゃくちゃ際どいやつ!!


「お、おまえぇ!上司にこんなの着せるとかどうかしてるだろぉ!セクハラだぞ!」

「まぁまぁ、エロ可愛いのでいいじゃないですか♪」


よくないわ!

あとなに勝手に記憶水晶で我様の痴態を撮っている!や、やめ!やめろぉー!


チカチカと光る水晶の瞬き、我様はすぐさまそれを奪いにかかるがリルキスはくるりと回ってそれを躱わす。

くそ、くそっ!上司を弄びやがって!給料天引きしてやる!覚えてろ!


「ちょっと、友達が嫌がってるじゃないか」


刹那、我様とリルキスの間に中性的だが女の声が間に入った。

気がつくと我様たちの間に黒髪短髪の女が立っており、その手にはリルキスの記憶水晶があった。


「おまえは…」

「あなたは…」


我様とリルキスには覚えがあるその立ち姿。

なんども水晶越しで見ていたから、すぐに分かった。

特徴的なすまし顔…あれ?でもちょっと頬が赤いような気がするが、おそらく気のせいだろう。

だがその人物は紛うことなき…。


「リオ…!」

「え?なんでボクの名前を」


勇者だった。


2000文字想定が3000に。

まぁいいでしょう(企業並感)


それはそうと、自分を百合の沼に漬け込んだラノベがアニメ化決定しましたね。(わた○れ

本当におめでとうございます。

というか来年から百合アニメが豊作そうでなによりですよ、あはは。


あー…財布が空になる。

百合コンテンツに100万近く使ってる自分だ、どうせ歯止めが効かない。


あ、あとおそらく明日の深夜にあげれそうならあげます。それでは


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