魔王さま、ハニトラのお時間です
犬
プロローグ
人間の国にはこんな噂がある。
世界に
魔族の頂点、魔王を討ち倒せば世界に平和が訪れるであろう〜……と。
「んーなワケあるかーいっ!!」
魔王城、その玉座にて。めちゃくちゃ美人で顔のいい女でかっこよくて天才でキレもので誰よりも慕われててハイパームテキ!な我様こと魔王アトレアは人間どもの嘘八百な伝承を声高らかに否定する。
「ンなぁにが『ヘイワが訪れるであろ〜』だ!魔族だってなぁっ!年中魔物の被害で悩んでんじゃあい!ボケタレスカポンタン!!」
「ちっくっそー!パパめぇ、こんな面倒なときに王位を譲りやがって!魔王になって我様の偉大さを広めようと色々画策してたのに、なんでこんな時期にぃ!」
爪をガジリと噛みながら、恨みつらみを募らせるは我様のパパに向けて。
最初に言ったように、魔族は人間たちに嫌われている。それも魔王に対しては並々ならぬほどだ。
我様ことアトレアは、先代の魔王から王位を継承し新たに魔王となったのだが…今の時代はその人間たちに対してある問題が生まれていた。
「くぅっ…おのれ勇者めぇ!」
我様が言っていた"面倒なこと"。
それは玉座の間にて、輝きを放つ水晶球が映していた。
そこに映るは一人の人間、旅慣れた格好で腰には一本の剣が収められている。
短い黒髪に整った顔立ち、表情は常にすましていて可愛げがない。
褒め言葉で言えばクール、悪く言えば無愛想。しかしどんな困難を前にしても目的を目指す姿はまさに勇者と言ったところだ。
まぁ、それはそれとして水晶に映る勇者は男っぽい女なんだけどな。
だって証拠に、我様よりでっかいメロンが二つあるしさ!!
コホン…話は逸れたが、"面倒なこと"というのはこの勇者にあるのだ。
この水晶に映る勇者、もといリオは魔王討伐のため旅をする人間達の英雄…。
人間どもに期待されてるだけあって、リオの実力は本物で…ぶっちゃけると我様より強い。
「いやなんで我様より強いんだよ…!勇者は仲間と力合わせてやっと魔王と対当なのがセオリーじゃないのか!?」
「しかもリオとやら…仲間も連れず一人旅とか、自信ありありにも程がある!舐めとんのか!」
「いやまぁ…土砂崩れで塞いだ道を魔法でどうにかしたり、道中の魔物をワンパンしたりしてるから自信ありありなのも仕方ないのだが……!」
だがその強さが問題なのだ!
このままでは我様の元へとたどり着き、リオは指先一つで我様をダウンさせるだろう。
そんなの、そんなのはぜっったいにいやだ!
魔王になってやることが沢山あるのに、人間どもの勝手な妄想でまくしたてられた勇者に倒されるなんて最悪にもほどがある!
だから…なんとしても!なんとしてもぉっ!
「リオを倒さねばならない……!!」
「では…わたくしに作戦があります魔王様」
「だ、だれだ!?」
打倒勇者を掲げた一瞬、玉座の間から妖しい声が囁かれる。
ぬるりと闇から現れたのは、背中にコウモリの羽を生やした妖艶な雰囲気を纏うピンク髪の女、魔王軍の軍師リルキスだった。
「リ、リルキスか…びっくりした」
「それはなにより♪さて、ご機嫌麗しゅう…魔王様♪」
「今さっきの勇者の愚痴を聞いててご機嫌いいと思う!?」
「ないですね♪」
「だよなぁ!」
「……で?先も言っていたが、一体なんなんだ?その"作戦"というのは?」
相変わらず揶揄ってくるイヤなやつだなとリルキスを睨みながらも、我様は作戦について問う。
「そうですね、まず作戦の前に前置きを♪」
愉しく笑い、リルキスは水晶に手を当てる。
「わたくしは長い期間、ずっと勇者リオの同行を水晶やあらゆる道具を使い観測をしてきました」
「そして、観測の結果…勇者には致命的な弱点が発覚したのです♪」
「なに…?弱点だと!?」
リルキスの宣言と共に、その手にあてられた水晶の映像は目まぐるしく変わる。
キュルキュルと逆再生されていくと、ピタリと映像は止まり…ある映像が映された。
それは、リオが温泉街で有名な街に着いた頃の映像だ。
その当時、温泉街では
いや、なんで我様のせいなんだ!なにもしとらんわ!
まぁ、結局は魔王とは関係がなく、源泉をせきとめる魔物が原因だと分かるや否や、リオの手によって倒される…というのがこの街の出来事だ。
しかし、その出来事のどこに弱点が?
「まぁそう疑わずにこれを見てください」
「これは…」
リルキスの怪しい笑みと同時に、映像が再会される。
これは、街を救ったあとのようだ。
救ったお礼に温泉を堪能してるみたいだな…って、相変わらずどこがとは言わんがデカいな。
いや、嫉妬してる場合ではなく…おや?リオの周りに裸の女たちが集まってきてる、まぁリオは顔だけ見れば美女というよりイケメンだからな、顔に釣られるのも
映像を見ていた、次の瞬間だった。
女に言い寄られていたリオは、鼻血を垂らして倒れ伏せたのだ!
「こ、これは一体!?」
「あの勇者リオが血を流すなんて初めて見たぞ!この女どもは何者なんだ!?」
「ふふ…いいえ魔王様これはこの女達がしたことではありませんわ」
「じゃあ誰が勇者に血を流させるなど…?」
もしかして呪いか?それとも透明化をして誰かが奇襲を?それとも我様が知らない未知の攻撃を仕掛けたのか!?
一体…なにをしたんだ!?
「ふふ♪魔王様、これは単純なことです」
「勇者の弱点は…」
「女体です♡」
「ふぁ?」
※
リハビリがてら書きました。
一応2〜3話くらい続ける予定、もともと短期予定なのですぐに終わるかもしれませんが、作者はなにぶん飽き性なので完結しない可能性もあります…ごめんなさい。
それなりに反響よければ完結まで書きます…はい、絶対に…はい。
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