才果て≪さいはて≫ 三話 能あるすべて
「私の髪が青くなった……」
染めたわけではない
何より黒い髪が気に入っていた。
「父として言うがな」
頭の固い父のことだから
激怒するだろうかと心配になる。
「似合ってるんじゃないか?」
唐突な言葉に
一瞬だが時が止まった。
「え?」
「だから似合っていると言っているんだ」
「ほんとに?」
「嘘をついてどうする」
堅物なぶっきらぼうが
ありえない言葉を吐いている。
「頭をどこかにぶつけたの?」
「青くなったお前に言われたくないな」
そこは堅物のままだ
なぜ認めてくれたのだろうか
疑問でしかない。
「それより母さんへの面会は誰からにするんだ?」
「面会?」
「私たちは男だからな……」
デリケートな話になるらしく
女性である私に行けと安直に言っているのだ。
「じゃあ私が最初に行きたい」
「よかった……」
それを聞いていた弟は
ずるいと口を尖らせている。
「お前だと心労が逆に溜まるだろう?」
「しんろう?」
「お母さんの心が休まらないってこと」
「確かに…… そうかも……」
やけに素直な弟にも驚きだ
しかも父まで消極的にしか見えない。
選択肢になります
一から四が①
四から六が②
①面会の前にお土産を買いに行く
②そのまま直行する
①の場合
このまま三話をお読みください
②の場合
第四話にお読みください
「お土産を買って言った方がいいよね」
「そうかもしれない…… よしっ!」
父は懐から財布を取り出し
三枚のお札を渡してきた。
「誕生日祝いを買いたかったからな」
「そういえば母さんの誕生日だった……」
母の誕生日に
生き死にが関わるとは
なかなか残酷な人生である。
お土産屋はガラガラで
おばあさんが微笑んでいるだけだ。
選択肢になります
一から三が①
三から六が②
①おばあさんに話しかける
②おばあさんと言葉を交わさずにお土産を買う
では
①の場合
「少し良いですか?」
「なぁに?」
置いていても腐らず
長持ちするお菓子はあるのか
訪ねてみる。
「それならねぇ」
そっと指を差す
視線の先には
饅頭が置いてあった。
「深海まんじゅう?」
「深眠って知ってるかしら」
「都市伝説のですよね」
「それにあやかって出来たのよ」
なぜ進めて来たのだろう
悩んでいると横から声を掛けられる。
「青くてキレイだねぇ」
小さいが大人びた少女が
頭髪を呆けた顔で見ている。
「いきなり染まっちゃって……」
「ふーん」
少女はハッとなった
そして身なりを整えて
自己紹介を始めた。
「私は新形粋歌≪にいがた すいか≫って言います」
「私は柏木深都って言います」
二人でペコペコと頭を下げあい
ビジネスの商談ばりに畏まる。
「仲良くなったのねぇ」
おばあさんが
すいかの方を見ながら喜んでいた。
「もう…… おばあちゃんっ!」
「あれまっ」
そのやり取りを見ながら
まんじゅうを一つお会計する。
「またねっ! すいかちゃん!」
「うん! 深都姉ちゃん……」
すいかが
耳元で何か言いたいようだ。
「背中のお姉さんにもよろしくね」
「ん?」
とてとて
走り去っていく。
お姉さんとは
誰だろうかと
振り返るが誰もいない。
不思議なことを言われながらも
病院へと向かう。
白い居城がそびえ立つ
病院を前にするとダンジョンに挑むような
錯覚を覚えるほどだった。
「隔離病棟は最上階だっけ?」
なぜか屋上近くにある隔離病棟は
エレベーターがなければ
辿りつくのは至難の業だろう。
「あの…… 柏木深鈴≪かしわぎ みすず≫の部屋は?」
「ご家族さんですか?」
「娘に当たります」
「では病室に確認しますのでお待ちください」
コール用の電話に番号を打ち込み
そそくさと電話を始めた。
待つ間に
ソファに腰掛ける。
「おっ!」
横から何かに気づいた声がした。
「柏木? 大学は?」
話かけて来たのは
深川陽≪ふかがわ よう≫
大学で同じ学部の音楽大好きの
男子学生である。
「女性かと思った……」
「いつものそれっている?」
見た目は男性の服装だが
男装女子のような見た目で
同性からモテるのだ。
「お待ちの方?」
看護師が連絡をとれたことを
伝えに来る。
「おかあさまがお待ちです」
「では行ってきます」
「お気をつけて」
エレベーターから
最上階へと向かった。
病室は暗く
白い光がベッドの上に
月明りのように広がる。
「お母さん?」
病室に一人が
佇んでいた。
刹那にチカチカと
目の前が点滅する。
「まぶしっ」
もう一度
目を開けた。
「あれ?」
ベッドに横たわる母しか
部屋にいない。
テレパシーのように
言葉が頭に響く。
【ようやく治しに来たのね】
【母さんは嬉しいわ】
後ろからギュッとされる
母の感触だ。
ふと思い出す。
【後ろのお姉さんにもよろしく】
「アルキメデスの本懐……」
【せーいかいっ】
【私の名前はアルキメデス!】
「ん?」
妄想が答えている
疲れがすごいのか
ほんとうにいるのか
わからない。
【どうしたの? わが娘よ】
【才果てになれたんだねぇ】
「才果て?」
【アルキメデスという能力になったのだ】
【すごいであろう? 私が娘の才であるぞ?】
ここで能力が付与されます
身体強化≪アルキメデス≫
あらゆる敵との選択肢で
どの数字も三をプラスします。
例えば
相手は殴りかかってくる
①一から三は吹っ飛ばされる
②三から四は受け止める
①の場合は体力マイナス値が2
②の場合は体力マイナス値が0になります。
自動付与なので
随時発動されています。
【絶対に私が守るからね】
【だからそこにいる才影≪さいかげ≫をよろしく!】
「は?」
後ろには誰もいないはずだが
振り返った。
「え?」
黒い影が魚人の形で
立ち塞いでいる。
≪ギャアアァッ≫
戦闘になります
サイコロを三回振り
三回の合計にうち
半分が攻撃の数値になります。
そして防衛は
サイコロを二回振り
一回目が一から三で吹っ飛ぶ
三から六で防衛可能です。
深都が受ければマイナス値は0ですが
その他に対象が移った場合は
一から三でマイナス値が2
三から六で深都に庇ってもらえるため
マイナス値は0となります。
二回目は
相手が次のターンの攻撃において
一から三が防御
三から六が近づいてくるのどちらかになります。
相手の体力が0なら勝利
深都たちが0になったなら
カウントを1プラスします。
そのカウントは
様々な選択肢に関与します。
≪深都以外が全員0になると深都も0となります≫
≪一話で②を選択した場合は深都と周りが0だとカウント1を付与されます≫
「なんだったの?」
とりあえずは退けたが
意味がわからない。
【娘よ! そなたは挑戦権を得たのだ】
【深眠の原因であり、根底の魔王≪ダゴン≫へのな!】
「ダゴン?」
可愛らしい名前ではあるが
相当に禍々しいのだろう。
意味のわからないデスゲームに
参加させられたのだ。
恐ろしい存在と認識しておこう
これから始まるのは才能の代価らしい。
いまだ掴んだ才能が不明だが
挑むしかないようだ。
これでプロローグが終了します
この話で進んだプレイヤーは
以下の能力を得ました。
身体強化≪アルキメデス≫
AT≪アタック≫10 攻撃力
DF≪ディフェンス≫8 防御力
BD≪ボデイ≫7 体力
SP≪スピード≫8 素早さ
PS≪サイ≫ 5 特殊能力値
では
本編にお進みください。
才果て≪さいはて≫ 【未完成】 あさひ @osakabehime
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