第3話
徐々に知名度も上がり、集客も増えた。
主催イベントなども打てるようになっていた。
そんな中、一つの話を持ち掛けられた。
「CDを出してみないか?」というものだった。
話を持ってきた人は原盤権がどうの、著作権がどうのという小難しい権利関係と金銭の話をしていたが、要するに音源制作、宣伝、流通に掛かる費用を会社で持つから、CDを出させてくれという話だった。
正直、金銭面でその契約が良いのか悪いのか比較しようがなかったが、こちらにデメリットも少なそうだったので承諾した。
何しろ単純に、自分達の音源が世に出回るというのが嬉しかったのだ。
◇ ◇ ◇
CDも一作、二作……と作成し、雑誌の取材なども僅かながら入るようになり、ライブの動員数も増えた。
徐々にバンド活動が支出ではなく収益に変わり始めていた。
とはいえ、大成したという程でもない。
バンドだけで十分に生活していけるというワケではなく、小銭稼ぎが出来るようになった程度ではあった。
――だが、それだけの事で幸福だった。
間違いなく上へ登っているという高揚感と期待感、そして自分達が認められている実感が得られ、純粋に楽しかったのだ。
◇ ◇ ◇
徐々にハコ(ライブ会場)のサイズも変わり、自分達だけでもそれなりに大きいハコを埋められるようにもなっていた。
収益的にも、それだけで食べていけるくらいにはなっていた――
そんな感じで、ツアーなども多少は行うようになっていた。
今日は『リフター』というキャパ(動員可能数)1000人程度のハコでライブをする予定だ。
取り立てて大きなハコではない。
前座は地元の高校生バンドが行うらしい。
ただ、「高校時代にこんなハコでやったら尻込みしただろうなぁ……」と、少し感慨深くはなった。
こんな所でやれる高校生バンドっていうなら結構凄いバンドなのかな?なんてことも考えていたりした――
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