時間が戻ったら

髙龍

第1話

中学卒業の日。

私、前園 希は一世一代の勝負に出た。

ずっと好きだった林君に気持ちを伝えようと体育館裏に彼を呼び出した。

「こんなところに呼び出して何の用だよ」

「あのね・・・。私、林君のことが前から好きだったの。私と付き合ってください」

「ごめん。俺、ちゃらちゃらした子、嫌いなんだ」

「えっ?」

「お前、ピアスしてるだろ?いかにも遊んでそーっていうか。だから。ごめんな」

そう言って林君は去って行ってしまった。

「嘘・・・。私、遊んだりなんてしてないのに・・・。こんなことになるならピアスなんてしなければよかった・・・」

私はピアスを外し八つ当たりをするように投げ捨てた。

だが、そんなことをしても何の意味もない。

少ない小遣いで買ったピアスは私の持ち物の中でも高価なものだ。

結局、私は投げ捨てたピアスを必死に探す。

ピアスは中々見つからない。

時間だけがただ過ぎていく。

日が傾いてきたころようやっと投げ捨てたピアスを見つけた。

だが、どこから現れたのだろうか。

ねずみがピアスを咥えて去って行く。

私は慌ててその後を追いかける。

ねずみが去って行った先は近づいてはいけないと言われている旧校舎の方向だった。

私は一瞬躊躇するがピアスを諦めるわけにもいかない。

私はねずみを探して旧校舎に続く道に足を踏み入れた。

「こっちのほうに来たはずなんだけど・・・」

ねずみを追ってきたのはいいものの夕暮れの旧校舎はかなり不気味だった。

「あっ。見つけた」

ねずみを発見して私はねずみを追い詰めるように追いかける。

ねずみに追いついたのは古ぼけた時計塔の前だった。

「いい子だから。それ返してね」

私はそう言いながらねずみに近づく。

そこで「ゴーン。ゴーン」と時計塔が鳴る。

その音で時計塔の針を見てみる。

すると時計塔の針はものすごいスピードで逆方向にまわっていく。

急に気持ち悪くなり私は立っていることができなかった。

その場に座り込み落ち着くのを待つ。

気持ち悪いのが収まり周囲を見れば空は快晴と言ってよい青色だった。

「えっ・・・?さっきまで夕暮れだったのに。なんで・・・」

私はスマフォを取り出し時間を確認しようとする。

そこに表示されている日付を見てびっくりした。

ピアスの穴を開ける前の日付に戻っていたのだ。

「どういうこと?」

私は状況が読み込めなくて混乱するばかりだ。

取りあえず耳を触ってピアスの穴がないことを確認する。

「本当に時間が戻ってる?」

ここにいてもどうにもならない。

時計塔の前にねずみに持っていかれたピアスが落ちていたのでそれを拾って考える。

もし、本当に日付が戻っているのならこれはチャンスなのではないだろうか?

ピアスの穴を開けなければ林君と付き合えるかもしれない。

私はそう思いもう一度アタックしてみようと決意した。

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時間が戻ったら 髙龍 @kouryuu000

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