追跡
逃げだした天使の姿が零と氷空の視界から消え、日本の報道機関が集まってきた中で。
「……よし、追いかけるよ」
「えっ!?今!?」
零は追いかける旨を示し、それに対して氷空が驚きの声を上げる。
「あいつに発信機をつけておいた。これで、相手のアジトの位置がわかるはずだよ」
「何時の間に?」
「最初からそのつもりで動いていた。モグラたたきは終わりだ。巣に向かう……まずは、報道機関を撒くところから。いつものように、お願い出来る?」
「うーん。とりあえあず、わかったわ」
氷空は零の言葉に頷き、いつもの魔法を発動。
発動させる魔法は自分たち二人の気配を消すものであり、これによって二人のことを報道機関たちはおろか、天使たちも察知できないようになる。
「行くよ。僕についてきて」
「うん」
その状態で、零と氷空は動き始める。
風を支配し、空に滞空し続けていた零は再び空気を蹴って空の中を走り出し、氷空は普通に魔法で追従する。
「ここから近いところにある?アジト?」
「……あるっぽいね。ずいぶんと近い。やっぱり、前もって僕が予想していた通り」
二人が今、泊まっている旅館のある温泉街へと零と氷空が来ている理由は前から、この街の付近における天使の出現率が少しばかり高いことを長年の戦いで分析していたことからきている。
だからこそ、ここら辺に天使たちのアジトがあるだろうと予測して、二人はこの街に来ていたのだ。
「それにしても、何でこんな温泉街にアジトを作ったんだ?」
とはいえ、温泉以外には何もないようなこの街に何故、天使がアジトを作ったのか
「案外、温泉に入りたかっただけ、とかいう理由だったりしないかな?」
「そんなわけないでしょ」
雑な氷空の言葉に対して、零は取り合うこともなく
天使関連の話で動いているときの零は、まるで冗談に取り合わなかった。
「むぅ」
そんな零の態度へと少しばかり、氷空の方は不満げな様子を見せる。
「ここだ」
「……ッ」
だが、足を止めた零を前にすぐ、氷空は姿勢を真面目なものへと変える。
「あれが?」
「……おそらく」
足を止めた二人の前にあるもの。
それは一つの古びた古民家だった。
「あそこの建物の地下へと天使は入っていた。何かわかる?」
「今、見るよ……」
そんな建物へと氷空は探索の魔法をかける。
魔法少女たる氷空が使える魔法は多岐に渡る。
攻撃、防御、回復、索敵、隠密……本当に何でもござれ。
「うん。あってそうかな」
そんな氷空は確かに、魔法でもって天使のアジトと思われる古民家の様子を看破してみせる。
「古民家の中に人の気配はなし。それと、この古民家の地下に馬鹿みたいに広い空間が広がっている。これは間違いなく天使のアジトだと思うね。天使の気配は相変わらず読みにくいけど、それでも、いると思う」
「よし。吹っ飛ばせ。天使のアジトじゃなかったとしても、こんな古民家の地下にある広い空間なんて怪しいでしょ。ここら辺に地下鉄も地下デパもないよ」
「了解」
それを確認してからの決断は抜群に早かった。
零の言葉へと頷いた氷空はすぐに一撃で何もかもを吹き飛ばせるような、そんな強大な魔法発動の準備を始めるのだった。
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