アジト襲撃

 逃亡した天使の跡をついていってやってきた天使のアジトとして自分たちの前にそびえたっていた一つの古びた古民家。


「よぉし!吹き飛ばしたよ!」


 その古民家は綺麗さっぱり、氷空の魔法によって完全な形で吹き飛ばされていた。


「おぉ……ずいぶんと綺麗なところが出てきたな」


 そして、古民家ごと地面が吹き飛んだ結果、見えてきたのは地下に広がっている厳かな巨大空間だ。

 白を基調とする神殿のように見えるそこでは今、氷空の魔法による影響でパニック状態となっていた。

 土が降り注ぐ中でその内部にいる天使たちが大慌て……更に見てみれば、氷空の魔法の余波でちゃんと打ち落とされている天使の姿まで見える。

 しっかりと、氷空の魔法は相手に対してダメージを与えられているようだった。


「……」


 零は氷空の魔法によって晒し上げた天使のアジトの中を眺めていく。

 何かしらの情報がないか。今後に役立ちそうなものはあるか。

 それをまず、上から眺めて情報を読み取っていこうとする。


「……何もない、か」


 だが、上から見ただけでは何もわからなかった。

 見えているのはただ右往左往している天使たちと、その天使たちが暮らしているであろう神殿の内部のみ……何には湖があったり、巨大な像があったり、地下にしては大きく威容で、素晴らしい建築模様ではあるが、本当にただそれだけ。

 何か重要そうなものは何もなかった。


「人とは、全然違うものだね」


 零と氷空のアジトであれば、何かしらの科学道具が置いてあるが、ここにはそんなものは何もない。

 ただの生活空間だけだ。


「……奇跡に、必要なものはないのかね。氷空」


「ん?」


「あの巨大な像を吹っ飛ばして」

 

 そんな中で、ひときわ目を引く天使たちのアジトにある巨大な像を吹き飛ばす様、氷空へと声をかける。


「わかったよ!」


 零の言葉に頷く氷空はすぐに

 氷空はしっかりと零の期待に応えた。

 氷空の強力な魔法は確実に、そのアジトにある巨大な像を完ぺきに吹き飛ばし、破壊してみせた。


『あぁぁぁ!よくも、よくも神様の像をッ!!!なんと不敬なァっ!』


 そして、その行為は天使たちを激昂させるには十分だったらしく、彼らは一切迷うことなく奇跡の力を発動し、零と氷空の二人に向けて光線を繰り出していく。


「無駄だよ」


 だが、それは氷空が二人を覆うように張り巡らせている結界によって弾かれる。


「ちっ、消えないか」


 そんな中で、零が見ているのは天使が奇跡を使えるのかどうか、という点だった。

 もしかしたら、神の像を破壊すれば、地上に降りてきている天使たちから奇跡の力が奪えるのではないか、という期待があったのだが、 それはうまくいかなかった。

 天使たちは何の問題もなく奇跡の力を使っていた。

 なら、もうここでわかるものは何もない。


「天使どもを全員叩き落とすよ」


「了解っ!」


 零は情報収集を一旦棚上げとして、こちらの方に激昂しながら突っ込んでくる天使たちを迎え撃つ態勢を取るのだった。

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