VS天使

 ニュースで天使の襲撃が流れた瞬間。

 零と氷空はすぐに旅館を飛び出し、その天使が現れたという場所へと急行していた。

 出現地はちょうど、二人がいた旅館のすぐ近くであった。


「見つけた」


 零は暴れている天使の姿を見つけたその瞬間、変身ベルトを自分の腰へと巻く。


「変身」


 そして、走りながらベルトへとカードをかざし、変身ライダーとして変身する。


「ちょっと!毎回置いていく!」


 そして、その変身に遅れた氷空は不満げに声をあげながら、魔法の杖を振るって魔法少女へと変身する。


「世界に輝く魔法少女ラルカ、参上っ」


 氷空は変身を終え、魔法少女としての名乗りを上げる。

 

「ハァァァァァァッ!

 

 だが、その頃にはもう零は空気を蹴りながら空を駆けあがっていた。

 その手には既に一振りの剣が握られている。


「もうっ!」

 

 その後を氷空は魔法でもって華麗に空を飛ぶことによって追いかけていく。


『来たな!我らに逆らう愚か者どもっ!』


 そんな二人の姿をしっかりと天使たちも確認していた。

 今回、動き出して暴れている天使の数は全部で五体。

 その五体すべてがその意識を二人だけに向け、戦闘態勢へと入っていた。


「ハァッ!」

 

 そんな天使たちのうちの一人へと零は剣を振るう。

 その剣に対して、しっかりと天使は槍で合わせた───。


『……ぁ?』


 はずだったのだが、その剣が通常ではありえない軌道でねじ曲がり、天使の体をザックリと斬り裂く。

 よく見てみれば、ありえない動きをしていたのは零の手にある剣ではなく、それを持つ零の体そのものだった。彼の体はありえない方向に腕を曲げながら剣を振るっていた。


『ぐふっ……これが、ライダーの読めない剣戟ですか』


 とはいえ、その斬撃は浅かった。

 天使を殺すまでの一撃にはならなかった。


「さっさと死ね」


 それをすぐに察した零は更に勢い強く天使との距離を詰め、剣を振るっていく。


『ぐぅぅぅ』


 そんな攻撃の数々へと天使は致命傷だけは食らわないように注意を払いながら槍を振るい、抵抗していく。

 それでも、天使の体にはどんどんと傷が増え、出血を強要されていた。


『はぁ……はぁ……はぁ……』


 そんな中で、零の前に立つ天使は息を切らし、血を流し続ける。

 それに対して、零はまるで苦労した様子もなく、天使を圧倒していた。


『後ろががら空きだっ!』


 そんな零の後ろを一体の天使が強襲する。

 その手にある槍を零に向け、大きな声をあげながら彼の体を貫こうとする。

 

「零に触れるなんて許さないんだから!」


『ぐぅっ!?』


 だが、そんな天使の体を強襲するのはとっくの前に近づいていた氷空が杖を振るうことによって放つ魔法。

 魔法の力が濃縮されたエネルギー弾が天使の体を強襲し、その体をのけぞらせる。


「隙だらけ」


 そして、そののけぞった天使の方へと視線を向けた零は迷いのない剣戟でその天使の首に向かって剣を振るう。

 その零の剣は確実に天使の首を切り裂き、胴体と首を切り分けた。


『……ぁあ』

 

 首を落とされれば、天使とて死ぬ。

 零の手によって首を斬り落とされた天使はそのまま地面に向かって落ちていく。


『アッ!』


「二人目」


 そして、その仲間の死に対して声を上げ、意識を割いてしまった先ほどまで戦っていた天使の首へと剣を振るい、容易く跳ね飛ばした。


「後三体」


『『『……ッ』』』


 戦闘を開始してからまだ一分程度。

 だが、それだけの時間で二人の天使を落としてみせるのだった。

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