一度は沈んだ太陽が再び登り始め、新しい日を迎えようという朝。


『本日のニュースです。夏瑠内閣総理は昨夜、国家予算として計上されているうちの一部である数億円もの大金における使用用途が不明となっている問題について、日本の技術向上のために使用していたものであり、詳しいことは国家機密に当たることである為、詳細は話せないとの声明を出しました。しかし、世論はその投資先が一切の不明となっていることからただの言い訳であると不満を露わにしており───』


 零と氷空が泊っている旅館部屋は、そこに置かれているテレビから垂れ流しにされている朝のニュースが鳴り響いていた。


「うぅ……ねむぃ」


 そんなテレビの前で、氷空は寝起きの悪さからだらけきったぐずぐずの態度を見せていた。


「昨日、遅くまで宿題なんて意味のわからないことをしていたせいだよ」


 ぐずぐずの氷空に対し、しゃっきりしているのが零だ。


「うなぁ……」


「まったく……あっ、このシャケ美味しい」


 零は既に布団の上で死にそうになっている氷空に対して呆れたような態度を見せながら、部屋のテーブルに広げられた豪華な朝食を食べていた。


「ちゃんと朝ご飯食べなきゃだめだよ?朝ごはんを食べることのメリットは多いんだよ?まず、夜の間に使ったエネルギーを補充できるから、朝から元気に動けるうえ、集中力もアップするし。それに、朝ごはんを食べると代謝が上がって、カロリーを消費しやすくなるから、ダイエット……まぁ、ダイエットはいいか。それでも、栄養バランスも整いやすくなるから、ダイエット抜きでも長い目で見て健康に素晴らしい」


「うぅ……眠いからむりぃ。朝から難しい話しないでぇ」


「いつまでベッドでゴロゴロしているんだよ。早く起きないと」


 昨日の夜と今日の朝。

 立場がまるっきり逆転し、零の方がお母さんらしさを見せていた。

 生活習慣等であれば、圧倒的に零の方が良かった。朝にも強い。


「まったく……」


 零がいつまでもベッドでゴロゴロしている氷空に対して、呆れたような態度を見せる……そんな朝。ここに流れるの平和で、穏やかな雰囲気だった。

 そんな中で。


『……っ。緊急速報が入りました。天使の発生と活動が確認されました。天使の発生位置の近隣住民は直ちに避難を開始してください。繰り替えします。天使の発生と活動が───』


「「……ッ!?」」


 天使が動き出したという緊急のニュースがテレビより流れ始める。

 それを見た瞬間、これまでの零と氷空の雰囲気は一変するのだった。

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