温泉
零との二人が泊まっている旅館は国内優先の温泉地帯にあるところで、その施設の中に立派な温泉もしっかりと内包していた。
「ふぅー、いい湯だね」
透き通ったエメラルドグリーンのお湯に肩まで浸かっている零は手足を伸ばしながら気持ちよさそうな表情を浮かべてその瞳を閉じる。
「そ、そ、そうだね」
そんな零の言葉に頷く氷空の視線は今、彼のお股の方に固定されていた。
まるで隠されていない。
広々と開かれた両足の付け根から伸びるお股の方に氷空の視線は伸びていた。
透き通った温泉のお湯は何の障害にもなっていなかった。
「(はわわ……僕の小さなのと全然違うよぉ。つるつるだけど、大きさはAVで見るような男の人と同じくらいありゅ)」
AV───アニマルビデオだ。
きっと、氷空が連想しているのは可愛い動物たちが戯れるアニマルビデオだろう。小学生が見るにはそれくらいがちょうどいい。
「(ちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちんちん)」
……。
…………。
氷空の頭の中はピンク色だった。
それはもうびっくりするくらいにはピンク色だった。
頬を真っ赤に染めながら頭の中でち〇ち〇を連呼するような小学生が連想しているのをアニマルビデオとするのは、逆にアニマルビデオサイドに失礼な話だ。
「(あわわ)」
氷空はマセガキだった。
それはもうびっくりするくらいには……性の目覚めが異常と言えるまでに早かった。
「ん?さっきから、こっちのほうばかり見てどうしたの?」
そんな氷空の視線。
それに気づかないほど鈍い零ではなく、彼は自分へと視線を向ける氷空へと疑問の言葉を投げかける。
「な、何でもないよ」
その言葉に対して、氷空は大慌てで視線を零の顔……を見ることはちょっとできなかったので、その斜め後ろにある木のほうに視線を送りながら口を開く。
「……そう?」
何故か視線が合わない氷空に対して首をかしげる零だが、特に深堀することはなく頷いた後に立ち上がる。
「それなら、僕はサウナの方に行ってくるね。氷空は来ないよね?」
「う、うん……さ、サウナはちょっと……熱いから。そ、それにしても、零は汗が出ない体質なのにサウナとか行くんだね……」
「だから僕ってば飲み物とか飲まずにサウナ行ってもしないっていうお得感を持っているんだよね」
零は汗をかくことはほとんどなく、サウナに行ってもほとんど汗はかかない。
素の体が色々と心配なところがある零が果たして、サウナへと行くのは体的に大丈夫なのかと心配になってしまう部分もあるが、
「……零」
そんな彼のことを氷空は温泉へと浸かった状態で眺める。
「……同じ、男の子同士なのに」
氷空は性に目覚めるのがかなり早かった。
仲間として共に戦う零。その彼のことを、氷空は同性でありながら異性としての感情を持ち、性的に見ていた。
「キモイ、って思われちゃうかなぁ……」
それでも、その思いを氷空は語ろうとしない。
理由は明快で怖いから。
同性でありながら、好き、という感情を抱いてしまっている自分のことを零がどう思うのかわからないから。
「零……」
だからこそ、眺めるだけ。
氷空はジッと、零のことを眺める。その瞳に僅かな寂しさを宿しながら……。
ちなみに、そんなことを思う氷空の視線は遠ざかっていく零のお尻に固定されていた。
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