第23話 勝負

「あっきたきた、待ってたぞ天宮」

「何で幸太がここに居るんだよ」

「まぁまぁ、そんな事言わずに、二時間以上も待ったんだから」

「そんな長い時間待ってどうするんだよ?なんだ?一緒に帰りたいのか?」

「んなわけねぇだろ!」

「ちょっと傷つくな」

「あぁごめんごめんwww、違うんだ。俺と勝負して欲しいだけなんだ」

「は?」

「いやー、どうしてもモヤモヤするんだよ」

「別に、僕は構わないけど。怪我しても責任は持た無いぞ」 

「良いよ、責任は俺が持とう。それじゃあ、始めようか」

 そう言うと、僕ら二人は身構えた。その次の瞬間。

「あ!」

「(なんだ?)」

 その声が僕の耳に届くと同時、幸太が目の前にいた。

「ッ!速い!」

 咄嗟にガードを固める、しかし。

「あ!」

 その声が届いた直後、次は僕の背後に立っていた。

「ばぁ!」

「(マズイ!)」

 必死に体をねじり、幸太の拳が届くギリギリの所でガードが間に合った。

「おー、凄いね!今の良く間に合ったね」

「あぁ、ギリギリだったけどな。つうか、不公平だろ、お前だけ僕の能力知ってるの。僕は何の情報も知らないんだぞ」

「確かに、それは不公平だな。うん、良いよ、教えて上げる。俺の名前は……」

 坂本 幸太(さかもと こうた)能力はVoice(声)何か言葉を放ち対象の耳に届くと、その対象までの距離を自由に移動し縮める事ができる。簡単に言うと、ほぼ音速の速さで移動する事ができる。幸太はクラスのエースであり成績優秀で1組の象徴とされている、最近一つ年上の彼女と別れたらしい。

「(なるほどな、さぁ、どう対策しようか?)」

 瞬きすると、目の前に幸太が立っていた。

「え?」

 そのまま幸太の強烈な右ストレートが飛ぶ。

ドォーン

 まともに受けたためかなり聞いた。

「いてて、お前それは卑怯だろ?」

「喧嘩に卑怯もクソも無いだろ?もし、コレが本当の戦闘なら君はもう死んでいる。だろ?」

「確かにそのとうりだ(今度は僕から仕掛けるか)」

 髪の色が変わり、足に力を込める。そのまま前のめりに倒れる様に加速し、それと同時に右手の指先にも力を込める。

「うぉ!速!」

「(え?嘘だろ!反応しやがった)」

 また、背後を取られてしまった。後ろに気配を感じると同時に、脇腹に回し蹴りが飛んできた。

「(ヤバイ、肝臓に衝撃が伝わった)」

 体の急所を叩かれ、体が痺れて言う事を聞かない。そのまま流れる様に顎、みぞおち、左フックと急所へのラッシュが決まる。

「(ヤバイ、このままだとダウンまで持って行かれる。でも、一つ収穫があるな)」

「オラオラオラァー!どうした?この程度か?あの最強の男に気に入られた君がぁ!」

「(一発で良い、一発でも入れば勝てる。耐えろ、耐えるんだ。いつか必ずチャンスが生まれる、避けるんじゃない、受け流すんだ、ダメージを最小限に減らすんだ)」

 そんな中、一つの希望が見えた。

「(ん?コイツ、攻撃にテンポがある上規則性だ。顔の次は……、脇腹だ!)」

「そろそろトドメいくか!」

「甘い!ここだろ!」

 幸太の左腕が飛ぶのと同時に奴の腕を掴む。

「死んでも離さねぇぞ!」

 そのまま首に力を込め頭突きを叩き込む。

「フンッ!」

 お互いの頭が弾けた。

「舐めるなよ!」

 幸太が僕の背後に周り、右腕を振りあげる。 しかし……

「あれ?居ない?」

「下にいるよ、地べた這いつくばっとけ!」

 頭突きを決めたと同時にしゃがみ、左足を軸に回転蹴りを叩き込む。

バタァン

 幸太が地面に倒れる。

「死んだらごめんなぁ!」

 足を振り上げ頭目掛けて踵落としをしようとする。

「まだ、勝ちを確信するのは速いんじゃないんかな?」

 そう言うと視界から幸太が消えた。

「(もう一度天宮の背後に入り、急所を突く!)」

 しかし、移動した先には。

「嘘だろ?」

「読んでるよ」

 幸太と目が合った。その次の瞬間、僕の指先が幸太の腹に触れる。

バタッ

 幸太が膝をつく。

「フッ、見事…」

「アンタ、手強かったよ」

 その流れのまま、右足を大きく振り上げ左足を軸に胴回し回転蹴りをする。

ドォーン

 幸太が後方に激しく吹き飛ぶ。

「おーい!生きてるか?幸太、責任はアンタが持つんだろ?死んでても僕は知らないからな」

 目線の先には幸太が大の字で倒れている。

「あぁ、生きてるよ。天宮くん、俺の負けだ、認めるよ、君は俺より強い」

 何かよくわからない、達成感に包まれた。そんな時、ものすごい怒声が聞こえた。

「おーい!アンタ達何やってるの?」

 声の先には鬼の形相をした白鳥先生が立っていた。

「え?いや、あの…その。おい!幸太どうにかしろ!って居ないし」

 まんまと幸太に逃げられてしまった。そこから白鳥先生からかなりキツメの説教を喰らい、この騒がしい一日が終わった。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る