第21話 菓子パン
地獄の授業が終わり、放課後食堂に向かった。
「えっ、嘘だろ、放課後食堂空いて無いの?」
昼食は学食を当てにしてた為、お弁当なんて無論用意していない。一人静かに席に座り考える。
「(終わった、後三十分もしたら補習の時間だ。補習は二時間以上はすると言っていたな、今日は朝食も抜いているし、これじゃ集中力が持たないな)」
廊下に出て校庭を眺めながら考えていると誰かが背中を突いて来た。
「ん?何か用?」
お腹が空いて居たので少し強めに言っしまった。振り返ると女性が立っていた。
「えっ!いや?あのその、良かったらコレどうぞ」
そう言うと袋に綺麗に包装された菓子パンを差し出して来た。
「コレくれるの?」
「はい、良かったら食べて下さい。お昼ご飯食べて無いですよね?」
「あぁ、ありがとう、凄く助かったよ」
袋を開け、口いっぱいに菓子パンを頬張る。
「んっ?コレ美味しいな、どこで買ったの今度買いに行きたいから教えて?」
「あっ、いや、ありがとうございます。コレ自分で作ったパンです」
「マジで?凄いなアンタ」
お腹が凄く空いていたので物の数分で食べ終わった。
「本当は昨日渡したかったんですけど、緊急召集掛けられので」
「あぁ、昨日は大変だったな」
「えっと、その、ありがとうございます」
「ん?何で君が感謝するんだ?普通は僕が感謝する所だろ?もう一度言うよ、ありがとう」
それでも、女性は答えずモゾモゾしている。
「(ていうか、この人初めて見た気がする、首にはAの文字があるな)」
「あの、もしかして助けた事覚えて無いですか?」
「あぁ、ごめん、君誰?覚えて無いな」
「え………」
凄くガッカリした目でこちらを見つめてくる。
「それもそうですよね、私中一の頃転校して来たので、覚えて無いですよね」
「中一の時に来た?(もしかして…)」
「あの事件の転校生です」
「思い出したよ、でもその話は出来るだけ話さないでくれないか?出来れば思い出したくない」
「そうですか…何かすみません」
「別に謝る事じゃないよ、君もあいつらの被害者だろ?所で君、名前は何て言うの?」
「河野 凛乃(かわの りの)です」
「河野さんか、これからよろしくな」
「はい、、よろしくお願いします」
「ほんじゃバイバイ、ありがとうな本当に」
そう言って河野に背を向け教室に戻ろうとした。その時、河野に呼び止められた。
「天宮くん!あっあの!」
「ん?どうした?」
「これから毎日、パン焼いて来ます」
「え?」
顔を赤くしてこっちを見ている。
「いやっ良いよ、今日はたまたまご飯持って来るの忘れただけだし。それじゃあ僕そろそろ補習の時間だからバイバイ」
時計を見ると、針は午後四時を指していた。
「(そろそろ補習の時間だな)」
教室に入ると高島先生ともう一人生徒が僕の事を待っていた。
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