第18話 説教

 目を覚ますとベッドの上で寝ていた。

「(ここは何処だ?つうか、何だこのありきたりな展開)」

 隣を見ると元晴が寝ていた。

「おい、こんぶ生きてるか?」

「あぁ、生きてるよ」

「なぁ、ここ何処なんだ?」

「永夢は初めてだったな、ここは学校内にある病院だ、普通の学校で言う保健室だな」

「なるほどね」

 そして、刺されたお腹辺りを触ってみると。

「あれ?傷が塞がってる、なんなら包帯すら巻かれて無いぞ」

「それは先生の能力だ、どれだけ致命傷でも生きてさえいれば治せる。まぁ、時間がかかるけどな」

「へぇー、それは便利な能力だな」

「ところで、永夢、お前」

 急に元晴の顔が強張った。

「ん?どうした?」

「何で吉川 星を殺した?」

「何でって、いや、向こうが僕の事殺そうとしてやり返しした。それだけだけど」

「お前良くそんな簡単に人一人殺せるな!」

「え?」

「お前も変わっちまったな、昔はこんなんじゃ無かったのに。今、上層部でかなり揉めているみたいだ、お前の処遇をどうするかについて」

「へぇー、そうなんだ(僕は変わっちまったのか?あの時からかな?」

「軽いなぁ〜。で、お前、三年間何してたの?タダ家で引きこもっていた様には思えないけど」

「あー、そうだな、また今度僕家来たら話してやる、だから早く体治せよ」 

 その時、病室の引き戸が開いた。

「(誰だ?)」

「天宮くんこんにちは」

 白衣を着た女性が優しい笑顔で挨拶して来た。顔は色白く、美人という言葉良く似合う女性だ。

「貴方は誰ですか?(絵に描いた様な美人だな、首元にはTの文字があるな、この人がこんぶが言ってた人か)」

「私の名前は白鳥 玲楽(しらとり れいら)この学校の医療専門の先生よ」

「ふ~ん、こんにちは」

「単刀直入に聞くわ、どうして吉川 星を殺したの?」

「どうしてと言われましても、殺されかけたから殺した、それだけですよ」

「そうですか……、貴方このままだと処分されるよ」

「は?処分って、そんな」

「貴方は私達と契約してるでしょ、貴方の前科を取り消して上げる変わりに政府の人間として働く事を担保にして。貴方がもう一度人間として生きたいと言うから契約したのでしょ?」

「はい、そのとおりです。怒りで我を忘れていました、本当にすみません」

「怒りで我を忘れていた?そんな事があるのですか?分かりました、今度からは気を確かに持って下さい。治療はもう終わっているので帰って貰って大丈夫です。出井くんは骨折などで傷が酷いので後四日ほど入院して下さい」

「分かりました、じゃあなこんぶ」

「おう、バイバイ永夢」

 そうして僕は学校を出て家に帰った。

ガチャ

 玄関の鍵を開け中に入る。

「ただいま、はぁ~もっと同級生と話したかったなぁ〜、今日一日めちゃくちゃだったし」

 時計を見ると午後11時になっていた。

「もうすぐで日付も変わるな、飯どうしようかな、簡単に味噌汁でも作るか、インスタントだけど、お湯沸かさねぇとな」

 ポットに水を入れ火にかける、お湯を沸かしている間に冷凍庫からご飯を取り出しレンチンする。

「風呂は明日の朝で良いか」

 そうこうしている内にお湯が沸いた。味噌汁とおにぎりを作り、テーブルの上に置く。そうそうと食事を済ませ寝ようとした時、ふと思い出した

「あっ、そうだった」

 洗い物をしたあと、ティーカップを取り出し、中にインスタントコーヒーを入れお湯を注ぐ。

「(良い匂いだな)」

 コーヒーを作り玄関にある写真の前に置く。

「〇〇さん、人を助けるってとても大変だね。確かコーヒー好きだったよな、匂いは良いけど良くこんな泥水が飲めるよ。まぁいいや、また明日、おやすみ」

 こうして長い長い一日が終わった

 

 

 





 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る