第24話

作ってくれた食堂のおばちゃんには申し訳なかったが、結果食欲も出ず、残してしまった。


…のこりは春が食べてくれたのでよかった。


あれだけたべたのに残りも入るのか…と思ったが。



食後はいつも行く自動販売機へはいかず、

飲み物を買いに行く春と食堂で分かれた。


学校に来たはいいが、

午後からの授業を受ける気にもならず、

今は誰もいない第二音楽室へと足を運んだ。



意外にも鍵はかかっておらず、

もしかしたら莉世が開けていてくれているのかも…だなんて思っていた。


音楽室へ入り、空気のこもる部屋の窓を開ける。


急に窓を開けたからか、

ぶわっと風が音楽室へ舞い込む。



校門に咲いている桜が風により散っているのが見えた。


そのまま窓際の壁を背もたれにし、床に座り込み心地よい春風に意識がうつらうつらとしてきた。


遠くで5限開始のチャイムが鳴った気がした。


.

.

.


ふと意識が浮上すると、

体はいつの間には床に寝そべっている状態だった。


のそりと体を起こすと柔らかな肌触りの良い

藤色のストールが俺の体を滑り落ちた。



ポケットの中に入っている携帯を見ると、

とっくに授業は終わり放課後になっていた。


きっとこのストールをかけてくれたのは

莉世だろう。


あたりを見渡しても、莉世の姿は見えなかったので、

俺にはこんな淡い色似合わない…と思いながらストールを持ち帰ったのだった。

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