第23話

数学を教えている少し背中の曲がった先生が、

「近藤くんおはよう、遅かったね〜座りなさい。」

と、俺を席に促した。


自分の席へ座ると、

前の席の春が後ろに振り返り声のボリュームを落としておはようと声をかけてきた。


返事を返すと春はニコリと笑い前を向いた。


もう4限の授業も残り僅かだった

とりあえず机の中から教科書だけを出して

先生の声を聞きながら

頬杖をつき目を閉じたのだった。


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授業も終わり、春に誘われ食堂へ行く。

今日はオムライスを頼み、

席へと座る。


春は「お腹すいちゃった〜」と言いながら、

カツ丼と唐揚げ定食とうどんを

猛スピードで食していた。


両頬をパンパンに膨らませている様子はハムスターみたいで少し面白く、

思わず口角が上がる。


それを見た春が、

「なっちゃん笑った〜かわいい〜」

なんて言ってきたので緩んだ口角を戻し、とりあえず無視しておいた。



のんびりオムライスを食べていると、

残りの唐揚げを頬張っていた。


「なっちゃんもしかして食欲ない?」


「…まぁ。」


春は意外と見ているらしくすぐに気づかれた。


家庭環境は春には教えてないから

詳しく伝えることもせず、

曖昧に返事をした。


春になら教えてもいいかなとは思ってるが。

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