自由
「うまい……うまい……うまい……」
環奈に監禁されていたところを脱出して、僕はすぐにその場を離れた。
また何時、環奈が戻ってくるかわからない。
出られたという事実から湧き上がってくる様々な感情もそのままに、僕はとりあえず一目散にその場から逃亡した。
環奈の家から逃げるように、全力でその場を走り去ったのだ。
「うまい……うまい……うまい……」
そんなわけですぐに逃亡した僕だけど、その次の目的地として僕が向かったのは牛丼チェーン店だった。
牛丼チェーン店。
あそこの、自宅で作るのとは少し違う牛丼を食べるため、僕は隣街の牛丼チェーン店の方にやってきていたのだ。あいにくと、財布は何故か使う機会もないのに環奈が渡してきていた。
それを使うことで、牛丼を食べることが出来た。牛丼を食べるくらいは問題ないお金だった。
「はぁー、食べた食べた……美味しかった」
極上の経験だった。
牛丼を食べ終えた僕は満足げにお腹を撫でる。
静音の家にいたときは違い、環奈の家にいたときはちゃんとまともなものを食事として食べることが出来ていた。
ただ、それでも久しぶりに来る牛丼チェーン店の味は、自分で好きなものを選んで食べる食事の味は格別だった。
「……お店には少し、迷惑をかけたかもしれないけど」
感動しきった僕だけど、それを傍から見れば首元に鉄製の首輪をつけ、そこから伸びる切断された鉄の鎖をぶら下げるという中々に個性的なファッションをした奴が泣きながら牛丼を食べているという図だ。
気色悪いって話じゃない。
「……これから、どうしようか」
まず、自分の家に帰るのはあれだろう。
僕が逃げて、まず何処に行くかを考えれば、一番に目をつけるのが僕の家のはずだ。
そんな中で、僕の家に帰るのはリスキーだろう。
当然、前は頻繁に行っていた静音の家だったり、環奈の家だったりというのも、もう二度といけないだろう。
「……」
さて、それではどこに行くか。
既に時刻は夜だ。
何処かに行くとしても、そんなに候補があるわけでもない……そもそも、今からホテルを取ろうと思ったとしても、そこまでお金が裕福にあるわけじゃない。
ホテルで連泊。というのはかなり厳しいだろう。
「……あー」
うめき声を上げる僕は、これから向かう先が何もパッと出てこない中、何となく久しぶりに自分一人で歩く街をゆっくりと進んでいった。
この時、僕の選択肢の中に警察署に行くという選択肢は自然と、一切浮かんでくることはなかった。
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