気づき
果たして、空気で膨らませるタイプのプールにお湯を張ったものをお風呂としても良いのだろうか?
その疑問はある。
「……結構サッパリした」
「それなら、良かったわ」
それでも、ある程度はサッパリすることが出来た。
洗えていなかった体も洗えたし、汚れもシャワーで綺麗に出来た。
「それじゃあ、これからは……?」
「……っ」
なんて、自分の体を夢中で洗っていた僕は自分の耳元で囁かれる環奈の言葉に体を震わせる。
「……あぁ」
そっか。環奈も一緒に入っていたのか。自分の体を洗うのに夢中で気がつかなかった。
「じゃあ、僕はもう出る」
「えっ!?もう!?」
「……うん。長く入っていようとも思わないかな。この部屋もびちょびちょになるし」
「……あっ、そっか」
僕はいそいそとプールから上がり、タオルで体を拭いていく。
「着替えはベッドの上に置いてあるから」
「……うん。ありがとう」
ベッドの上に置かれている服。
それが昔、僕がなくした服に似ているなぁ……なんてことを考えながら、体を拭き終え、着替えも済ませてしまう。
「……」
そんな僕の横で環奈も自身の体を拭き、服を着始めていた。
そんな中で、ベッドの上に置かれていた環奈のスマホが通知音を響かせ、画面を光らせる。
「何かしら?」
そのスマホを手に取り、通知を確認する環奈の表情。
それは段々と、険しくなっていく。
「ちょっ、ごめんねっ!?」
「……?」
「急用が出来ちゃった!ちょっと、出かけてくるねっ」
「うん。いってらっしゃい」
おそらく、先ほどの通知が急用を知らせてくれたのだろう。
ずいぶんと慌てている様子の環奈に向かって僕は手を振り、そのまま何処かへと向かって行く環奈のことを送り出す。
「……」
そして、部屋で一人になった僕は特にやることもなく、ベッドへと腰掛ける。
「……あれ?」
そこで、気づいた。
少しばかり遅れて、それでも、気づいた。
「空いたままだ」
僕を閉じ込めていた部屋の扉が開きっぱなしであるということに。
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