また

 環奈の家で眠りについてしまった僕。

 そんな僕は本当に、本当に久しぶりにしっかりと熟睡してしまっていた。


「う……うぅんっ」


 久しぶりの熟睡を満喫した僕はその後、どれくらい眠り続けていたのだろうか。

 寝ていながらも、かなり長い時間眠っていた覚えのある僕はゆっくりと意識を覚醒させていく。

 

「う、うぅん……ふわぁ……っ?」


「……んっ、あんっ、あんっ」


 そして、下腹部に感じるのは違和感。

 何かに包まれている感覚に刺激感、そして、湿っぽい感じ。


「……ッ!?」


 それに僕が違和感を覚えた。

 それと共に、どうしようもないような、抗えないような快感へといきなり襲われ、射精感がこみあげてくる。

 僕が、それに抗うなんて出来るはずもなかった。


「……出しちゃったの?」


 その次の瞬間。

 僕の全身が柔らかな感触に包まれると共に、人肌が伝わってくる。

 そして、耳元には一つの声がささやかれていた。


「……環奈?」


 未だ現状を理解出来ていない僕。

 そんな僕の前にいる環奈。その姿は、服などを一切纏っていない、

 いや、裸であったのは環奈だけじゃなく、僕もそうだった。


「な、何をしているの……?」

 

 理解が、理解が出来ない。

 今の状況に。

 僕の何もかもが、理解に追いつけていない。


「えへへ」


 そんな僕の前で、環奈は笑う。

 その笑みが、僕をゾッとさせる。


「ごめんね?でも、久しぶりで……」


「だ、だからって……っ」


 何を言っているのか。何を言っているのか。

 それが理由で、いきなりこんなこと、許されるはずが……なんてことを僕が思い浮かべた瞬間、僕は自分の首元に一つの輪っかが。首輪がつけられていることに気づく。

 その首輪には鎖が繋がれていて、それが部屋の奥にまで続いていた。


「なんで、こんなことを……?」


 僕は、声を震わせながら、環奈へと疑問の声を向ける。


「守るためだよ?」


「……はっ?」


「もう二度、あんなことが起こらないように。静音を初めとする薄汚い雌豚たちが輝夜を閉じ込め、傷つけてしまうのを防ぐために。これが必要だったの。だって、そうでしょ?これだけのことをしないと、絶対に守れないのだから。だから、だから、理解して?二人でここに居ればいい。いつものようにカードゲームして、いつものようにして、いつものようにネットゲームをして、いつものようにボードゲームをして、たまには二人で気持ちいいことをして。それでいいでしょう?お金なら心配いらない。私がしっかりと稼いであげる。私は自分の力でも稼げるから。それで大丈夫でしょう?私は輝夜のことが好きなの。それで、また誰かが輝夜のことを傷つけるようなことを許したくはないの。だから、理解して?わかって?私だって本当はこんなことしたくなかったんだよ。でも、これは必要なことだったんだ。抗うことなんて出来なかったんだ。でも、それで輝夜も幸せになれるでしょう?楽しめるでしょう?それでいいじゃない。だって、輝夜は私のことを好きになるよう、努力してくれるんでしょう?私の為にそんなことまでしてくれるんでしょう?ありがとう。ありがとう。私の為にそんなことまで考えてくれて。私はそのおかげで幸せだよ。ありがとうね。本当に。輝夜もちょっと心配なところがあると思う。それでも、大丈夫。案外、引きこもる生活も悪くないから。それは引きこもりの私がよくわかっている。それが、一人ではなかったのだとしたら、なおさら。こっちの方が輝夜の為になると思うんだ。幸せになれると思うんだ。だって、外の世界には危険がいっぱいだから。静音のような人がいるのだから。私が守ってあげるしかないでしょう?輝夜のことが大好きな私が。私なら、輝夜と家の中でいくらでも遊べる。前の夏休みもこんな感じの生活だったよね?二人でずっと家にこもってゲームをしていたよね?あの時はデュオで出来るゲームを探し当てて、そのゲームのレート戦で一位になるべく頑張っちゃおね。一位になったら飽きちゃって、もうすぐにやらなくなっちゃったけど、それでも、楽しかったよね?また、あんな感じのゲームを探しましょう?そうしましょう?私は輝夜となら楽しめるから。だって、輝夜が好きだから。だから、輝夜も私のことを好きになってくれれば、楽しめると思うの。私は、静音のように輝夜を傷つけたりはしないよ?楽しませてあげる。美味しいご飯を作ってあげる。お風呂に一緒に入ってあげるし、気持ちよくだってしてあげる。それで十分じゃない?それで楽しめるんじゃない?幸せな、幸せな生活に……なれると思うの。だから、私を選んだ?私を好きになって。それが、一番輝夜の為にななるから。私は尽きることのない愛を永久に輝夜へと注ぎ込み続けるから」


「……」


 嫌だ。

 自分の前で笑う環奈を前に、僕は自分の前が真っ暗になったかのような錯覚を覚えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る