いや
気持ち悪かった。
だから、それを取り除こうと僕はなんとか眠りにつこうとした。
夕食をとった後で……お風呂にも入れていないが、それでも、なんとか努力して寝ようとした。
「……」
それでも、その行いは徒労に終わった。
そもそもとして、静音が言うにはもう既に僕は丸一日眠りこけていたらしいのだ。そんな状態で、眠気があるわけもなかった。
その上、両腕に枷まで嵌められているのだ。こんな状況でまともに眠れるはずもない。
「……くそ」
僕は言葉を吐き捨て、ベッドで寝返りを打つ。
「おはよう」
僕がそんなことをしていた中で、部屋の扉が開かれて静音が中へと入っていく。
「……っ」
そんな静音の姿を見て、僕は息を飲む。
思い出されるのは……昨日の口移しによる食事だ。
「さっ、朝ごはん食べよ」
そんなことを思い出させてくる静音の手にはお盆が乗せられていた。
「……お腹、空いてない」
そんな静音の前に、僕は声を震わせながら彼女に向かって言葉を届ける。
「ダメよ?ちゃんと食べないと。朝ごはんを食べるというのは重要なのよ」
それに対し、静音はやんわりと否定させられる。そして、僕のいるベッドへと彼女はやってくる。
「……なんで」
そんな中で、僕は声を震わせながら心の中のものを率直に告げる。
「なんで、なんで、……なんで急にこんな」
僕は声を震わせながら、素直な気持ちを吐露し続ける。
「なんで、僕を監禁するような真似をするの……?」
「んー」
僕の言葉。
それに対し、静音は声をその口で回しながら二の句を探し始める。
「……」
そんな静音を送る僕は、彼女の瞳にハイライトが浮かんでいないことを見て、ゾッとする。
そこそこ多くの修羅場を潜ってきて……それでなお、初めて感じると言っていいほどの圧を、静音の瞳から感じた。
「……静音、なんで?」
でも、僕は臆することなく口を開き、彼女の方に言葉を届ける。
「ちゅ」
だが、その言葉は静音のキスによって止められる。
「はっ……?」
そして、それは初めてする静音とのフレンチなキスだった。
「いただきます、しよっ?」
その行為を前に僕が呆然としていた中で、静音は食事を口に運び、噛み始める。
「……あっ」
い、いや……ッ。
「はい、あーん」
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