終わり
環奈と一晩過ごし、日中も一緒に過ごし、最後にまた夜は……流石に環奈に帰ってもらった。
その晩は適当にぶらぶらと真夜中の夜の街を歩いた。
「……」
そして、その次の日。
僕はちょっとばかり寝不足のまま、学校へと登校してきた。
「はい、お弁当」
「んっ、ありがとう」
一日というのは早いもので、少し経てば静音と会うお昼の時間がやってきてしまっていた。
またいつもの屋上。
その屋上に静音と共にやって来た僕はその彼女にお弁当を渡す。
「さっ、食べましょうか」
今日は、お弁当を一つしか作ってきていない。
「……輝夜?」
「ねぇ、静音」
僕は静音のことを呼ぶ。
すんなりと、言葉は出てきた。
「何かしら?」
「もう辞めにしない?」
二言目も含めて、僕の口から出てきた。
「何の話かしら?」
そんな僕の言葉に対して、静音は首を傾けて疑問の言葉を口にする。
「彼女出来たんだよね」
三言目までも完璧に出てくれた……もっと早くに、僕の口は軽くなってくれればよかったんだけどね。
「えっ?」
付き合った……いや、付き合ったのだろうか?
僕は告白断ったし、それでも、なんか性行為で有耶無耶になったまま流れていってしまった。
というか、多分、付き合ったまでは言っていない。
でも、静音へと説明するのはこう話すのが一番だ。
それに、きっと……恐らくは近い将来に。
「な、何の……話をしているの?か、彼女が出来た?そ、そんなのもうかなり前か───」
有耶無耶にしてしまった。
「だからさ、もうこうして一緒にお昼を食べるの、辞めにしない?」
でも、ずっと有耶無耶にしておくわけにもいかない。
まだ、心の整理は全然ついていない……それでもッ、既に静音には彼氏がいて、僕にはそういう関係にはなった人がいる。
だから、ここで、もう互いに……。
僕もいい加減、静音のことは引きずらないようにして、環奈と向き合うべきなんだ。
彼女は僕に、前を向くためのきっかけをくれた。こう思うことにした。
だから、これでいいんだ。もっと、早くにそうするべきだったんだ。
「……はっ?」
「静音も、彼氏さんがいるんでしょ?僕と会っているのは悪いよ」
「……えっ、いや、はっ?」
出来るだけ、出来るだけ表情を崩さないように……感情を表に出さないように。
「じゃあねぇっ」
「ま、まっ!?」
「また明日」
ほとんど、静音の顔も見れなかった。
それで、僕はこの場から逃げ出すように、足早と立ち去ったのだった。
「まってぇぇぇぇぇええええええええええええええええッ!」
屋上からの絶叫は、この時の僕には届いていなかった。
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