ベッド

 僕の部屋のテレビから鳴り響くエロゲのプレイ音声。


「……」


「……」

 

 それを眺める僕と環奈は互いに沈黙する。そんな僕たちの間には何とも言えない空気が流れていた。

 ……いや、なんで急に環奈はエロゲを始めたのっ!?流石に理解出来ないっ。


「……」


 な、何で環奈は僕からの視線もありながらも、平然とエロゲを続けているの?……いや、別に平然となわけじゃない。普通に環奈も頬を真っ赤にしているじゃん。本当に何がしたいの?嫌がらせなのだとしたら、せめて、僕に対して何か一言がないと何もわからないよ?


「も、もう夜遅いね」


 環奈が黙り、沈黙だけが支配しているような中で、僕は時間について触れる。

 実際の時刻として、もう22時くらいだ。

 ずっと長々とゲームをやっているような時間もないんじゃないかな?……いや、うん。ここで、僕は彼女がやっているエロゲへと触れる勇気は残念ながらなかった。


「そろそろ寝ようか。あまり遅くなりすぎてもあれだしね」


 僕は環奈のやっているエロゲから逃げ続けながら、言葉を続ける。

 寝る時間が22時というのはいつもの僕からしてみれば、早すぎる。それには夜、寝るまでゲームすることの多い環奈であれば、わかるだろう。

 それでも、僕はその場しのぎの為にそう話し、強引な形で話を進めようとする。

 もう寝させてしまおう。


「もうテレビ消しちゃうよ」


 僕はテレビのリモコンを手に取り、エロゲが流されていたテレビを切る。


「それで?環奈は泊まっていく?泊まっていくなら来客用の部屋に布団出すよ」


「……」


 環奈はまだ、何も話さない。

 でも、良いや。

 何を考えているかもわからない。

 もう勝手に、僕の勝手で動いてしまえ。

 

「とりあえず考えておいて。僕は寝る前にいつも飲んでいるのリビングの方で飲んでくるから、それの間に考えて置いた。」


 少しだけ、前かがみになりながら、僕は自分の部屋を出るために歩を進める。

 そんなときだった。


「いかないで」


「はっ……!?」


 僕の体が力強く、強引に引っ張られ、そのままベッドの方に倒される。

 そして、そんな僕の上を取るかのように環奈が覆いかぶさってくる。

 ベッドに膝をつく環奈は僕の頭を挟み込むような形で両腕を伸ばしている。体勢的には必然と僕の顔と環奈の顔が近くなる。

 そんな中で、環奈は真っすぐと僕の方に視線を送ってくる。


「か、環奈……?」


 環奈の顔が近い……。

 それに対して、ドキドキを感じながら、僕は彼女に向かって疑問の声を向けるのだった。

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