いたずら

「な、なんで環奈が僕の家にいるの……?」


「良いじゃない。いても」


「いやいや!?納得は出来ないよ!?」

 

 家へと帰ってきたとき、何故か先回りするような形で玄関に立っていた環奈の姿を前にする僕は驚愕の声を上げる。

 

「まず、どうやって、僕の家に入ってきたの?」


「ん?元々開いていたわよ」


「嘘?」


 えっ、僕が家の鍵を閉め忘れた……?そんなことある?

 これまで家の鍵を閉め忘れたことなんてないよ?そんな僕が家の鍵を閉め忘れる?そんなバカな……いや、でも、そうじゃないと、環奈は家に入れないものな。

 じゃあ、僕が家の鍵を閉め忘れたわけか。

 えー、ショックー。

 これから、もっと気をつけるようにしよ。油断ってやっぱり怖いんだね。


「家でまた遊ぼうと思ってピンポンしたら返事がなくて、試しに玄関の扉を開けてみたら、空いていたから」


「だとしても、入らなくない?普通は」


「だから、玄関より先には行ってないわ。でも、ここで待っていたら、輝夜も驚くでしょ?ふふっ、ちょっとしたいたずらをしてみたくて。どう?驚いた?」


「いや、驚いたよ」


 こんなことされて、驚かない人いないでしょ。

 心臓が飛び出るかと思ったよ。リアルに。

 僕が家に帰ってきたとき、誰かがいるなんていう経験そのものもほとんどないから、余計に驚いた。


「それにしても、何で僕よりも早くに家へと先回り出来たの?今日は帰ってくるの速かったのに」


 いつもの僕は担任からの無理難題を押し付けられ、帰りが遅くなってしまうことがほとんどなのだが、今日に関してはそんなこともなく、無事に帰ってくることが出来た。

 そんな僕よりも、どうやって環奈は早く自分の家へと来ることが出来たのだろうか?


「早退したからね」


「あっ、そうなの」


「それで、ほら、早く靴を脱いで?いつまでこの玄関の中でぼーっとしているの?」


「……僕を驚かせ、靴を履かせたままにした君がよく言えるね?環奈が驚かせてなかったラ、もっと早くに靴を脱いでいたよ」


「それにしても、遅すぎるってことなのよ。ほら、早く」


「はいはい」


 僕は環奈の言葉に従って靴を脱ぎ、前もって廊下の方に上がっていた環奈の隣に立つ。


「じゃあ、今日は何のゲームする?」


「あー、どうしようか。とりあえず、ランク上げが途中だったゲームのランクを上げ切らない?」


「良いわね。それにしましょうか。確かに、中途半端なところで終わっていたものね」


「よし、やるか」

 

 僕は環奈と言葉を交わしながら、自分の部屋の方に向かって行くのだった。

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