僕はおしっこってめちゃくちゃ気持ちいい行為だと思うんだよね。

 いや、冗談抜きのマジに。

 学校へと来た朝、登校の時間中に溜めてきたおしっこをトイレで解放し、すっきりして僕はクラスの方に戻ってくる。


「おい……あれ、見ろよ。マジでいるぞ」


「うっそー、本当に登校してきている」


「嘘でしょ……何か月ぶりかしら。今日は、何の目的で?定期テストはまだよね?」


「まだだったと思うけど……こんな何もいない日に登校してくるなんて、明日は槍でも振るのかしら?」


「おいっ。そんな物騒なことが起きるわけないだろ。多分、もっと神秘的なことが起こる気に決まっている!」


 そして、そこで僕を出迎えたのは何故か窓に張り付いて何かを眺めているクラスメートたちの姿だった。


「何があったの?」


 窓に集まっているクラスメート……から少し離れたところを陣取っている蓮人と春馬の方に近づいていく僕は疑問の言葉を二人に投げかける。

 今日、そんな特別なことがある日だったかな?

 何にもない、ごく平凡な一日だと思っていたんだけど。


「ん?あぁ、胡蝶の金姫のご登校だよ」


「……?何それ」


 胡蝶の金姫?なんかすごい大層な二つ名だな……ゲームの二つ名でもそんな厨二臭いのは少ないぞ。


「ハッ!なんだよ、お前、知らないのか?胡蝶の金姫のことをよぉ。マジかっ!そんな時代遅れのやつがいるのかよ!」


「胡蝶の金姫は髪を金髪に染めているギャルっぽい子ですよ。めちゃくちゃ美人さんで、学校に登校してくることなんてまずないんだけど……定期テストの補講とかで、ごくまれに登校してくるんですよ。その時に見て、一目ぼれする連中が後を絶たなく……実に罪づくりな女子ですぞ」


「まさに傾国の美女ってやつ?」


「ふーん。そんな子がいるの?」


 まぁ、それが事実だとしても、静音には劣ると思うけど。


「誰なの?それって」

 

 なんてことを考えながらも、そんな周りが熱狂する相手のことが気になる僕は二人へと名前を尋ねる。


「環奈さんですよ。常葉環奈。それが胡蝶の金姫の名前です」


「えっ……?」


 そして、僕は返ってきた春馬の言葉を受けて、驚愕の言葉で返す。


「あの、環奈がそんな風に言われているの?うそでしょ?」


「「あんっ?」」


 マジ……?えっ、環奈ってばかなりの有名人だったりするの?

 

「うっそー」


 僕はその事実を前に、唖然とした言葉を漏らすのだった。

 


「えっ?知り合いなの……?」


「うそでしょ……?高嶺の黒百合だけじゃなくて、胡蝶の金姫まで知り合いなんですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る