おうちデート

「はい、一枚もらいます」


「えーっと、まず隠し札を使って一枚トラッシュして、二枚引きます。お菓子を使って、こいつらを二体並べます。特性を発動させて、手札を全部捨てて六枚引きます。ハイパーを使って二枚トラッシュし、進化先を持ってきます。続いてミキサーを使って、五枚トラッシュします」


「はい。これで番返します」


「一枚もら、……もらい、ますぅ……ごめん、何も引けなかった。もう番返すわ」


「何も回ってないじゃん。一枚貰います。えー、バトル場に一枚手貼りして、進化。これで技使います。トラッシュに……十枚あるので、ダメージ230。ワンパンです。そっちにバトル場の一体しかいないので僕の勝ちだね」


「うにゃぁー!?最速で負けたぁー!というか、そっちズルすぎ!最初の手番にいて欲しいすべてが揃っているじゃん!」


「完璧に回ったわ。めっちゃ楽しい」


「事故しかしていない相手を虐めて楽しい!?」


「うん、楽しい」


「こんのあくあまぁー!」


「はっはっはっは!これぞカードゲームの醍醐味!」


 ある日の土曜日。

 その次の日、突然アポもなしに僕の家へと遊びに来た環奈と今、僕はカードゲームをして遊んでいた。


「あー、私、傷付いちゃった!」


「傷付いたというなら、僕だよ?昨日、傷を抉るだけ抉って、あの後沈黙しだしたのは普通におこだよ?」


 昨日、ゲーム中に好き放題、僕の傷を抉ってきおって……寝る前、ちゃんとへこんだから。


「ご、ごめんじゃん……ほ、ほら、だから、気晴らしさせてあげようと思って?」


「自分で傷つけ、自分で治す。ずいぶんとコスパ良いですなぁ」


「……へへ」


「ずいぶんといたずらっ子な笑みですなぁ……ほら、二戦目行こう。僕の気晴らしなんでしょ?気持ちよくボコさせて」


「あっ、それは無理。ガチだから。こっちは」


「まぁ、環奈がガチになって、ちゃんとデッキを回したところで僕に勝てるわけもないけど」


「あー!もしかして今、私のこと舐めた?ねぇ、舐めた?はぁー!かっちんー!大会一回戦敗退の雑魚をボコボコにしちゃうわ」


「うっさいやい!そもそも出ていない君に言われたくないよ!」


「ふっ……私には、無限の可能性が秘めている」


「やかましいわ。それこそ、僕はちゃんと次の大会で優勝して一回戦敗退の汚名をそそぐから。まだカードゲームの方はアプリから入ったこともあって始めたばかり。むしろ、これだけの初心者でありながら、上級者感出して三日かけて極めたシャッフルで相手とスムーズに対戦出来たことを褒めて欲しいわ」


 未だ時刻は朝っぱら。

 いきなり朝に家へと押しかけてきた環奈と僕はしばらくの間、カードゲームを行うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る