確信
たった一つの気づきだ。
「……どうなの?」
本当に、輝夜は失恋したんだろうか……?
本当の本当に、輝夜は失恋を?
ここが、違えば、全部が……ッ!
「ふと、気になって……それで、どうなの?」
「……そーだよ。僕が自分の失恋を知ったのは、全然知らない人が静音に告白してて……その、静音が告白を断る時に彼氏がいるから、という理由で断っていたの。僕は静音のことなら……ほとんど知っているつもり。彼女は告白に対して、どんなものであっても嘘で返すようなことは絶対にしない。だから、僕が失恋したのは絶対なんだよ」
「その、告白の前の日に、輝夜って告白しようとしたんだよね?」
「えっ、そうだよ?だから……ギリギリで助かったんだよ。告白していたら、きっと振られちゃっただろうからね。そしたら、自分たちの、幼馴染という友人関係すら終わってしまう。それは少し、悲しいからね」
それは、本当に?
「……その、前の日はどんな会話をしたの?どんな感じで、告白を諦めたの?何か、その時、その幼馴染に何かを話したりした?」
「えっ?えー、なんでそんなここを深堀してくる……?あの日は月が綺麗な夜だったから、それを素直に言っただけだよ」
……あぁ、駄目だ。
「僕は、月が綺麗だね、って言って逃げたんだよ」
「……静音さんって、文系だよね?」
「うん。そうだよ……えっ?だから?」
月が綺麗ですねをアイラブユーと訳す……それは、割と有名な話。きっと、多くの人が知っている話だと思う。
でも、知識が色々と偏っている輝夜はこれを知らなかったんだろう。
そう、輝夜は本当にしっかりと理系で、数学とか、そっち方面の知識は凄いけど……文学とか、ほとんど触れ合いなくて、夏目漱石の話を何も知りません!なんていう状態でもさほどおかしくはない。
「……」
でも、文学が好きらしい彼の幼馴染が、知らないわけがない。
あぁ……つまり。
「……」
恋敵は、恋敵のままだ。
彼氏がいる。その彼氏とは、
きっと、ずっと幼馴染で、最初からあまりにも距離感が近すぎたからどちらも齟齬に気がつかなかっただけ……でも、それだって無限じゃない。
ずっと、その勘違いが続いてくれるわけない……っ。
「……環奈?」
あぁ、駄目だ駄目だ駄目だ。
もう泣きたくない。もう、嫌だ。
「おーい、環奈?」
「……」
「えっ?聞こえている?……おーい、環奈?」
焦らなきゃ……輝夜は、私のモノ。
一度、あれだけ輝夜に悲しい思いをさせた女に、輝夜は相応しくない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます