強さ
たまたま見かけた静音のことを追いかけて大正解だった。
そのおかげで、殴られそうになっていた静音のことをすんでのところで守ることが出来た。
「大丈夫?」
守れたことを安堵する僕は静音の方へと大丈夫かどうかを尋ねる。
「当然。貴方がいたもの。そんなことより、貴方の方こそ大丈夫かしら?」
そっと、傷が残っている僕の頬に手を伸ばす静音の言葉。
「んっ、割と慣れているからね」
それに対して、僕は力強い笑みを返す。
これくらいの傷であれば、もうへっちゃらだ。
もう既に師範代の人が寿命で亡くなり、閉じてしまったが、これでも僕は元々古武術を学んでいた身。その学ぶ過程でも怪我をしていたし、チラホラと、小中学生の頃は誰かと喧嘩するみたいなこともあった。
それらの経験が僕を強くした……。
「でも、だからと言って、わざわざ」
「いや、これは正当防衛だから、って言い張れる土台は必要でしょ」
三体一で僕は血まみれ。
この状況で僕が相手三人を気絶させていたとしても、過剰防衛とまではいかないでしょ。
「……ふぅー。まぁ、いいわ。ずっと言っていることだもの。でも、一度も聞いてくれないもの」
うん。うん。
こればかりは譲れない。だって、心配だから。
「私は素直に、今日もありがとうって言っておくわ」
「うん。それだけもらえれば十分だよ」
ありがとう。その一言だけで、僕が誰かを助ける理由になる……静音だったら、もっとそうだ。
「それにしても、貴方がこれだけ強くて凄いんだ!ってことを他のみんなが知れば、貴方のことをもっと周りが評価するのに」
「いや、誰かを守るために力は振るうものだよ。師範代からそう教わっているからね。ひけらかすようなものでもないよ。それに、そんな陽キャとか、陰キャとかに興味ないし。今が楽しいからそれで」
蓮人とも、春馬とも、仲良くやっている。
何処まで行っても学校は楽しく、居心地のいいものだ。
「だとしても、ずっと輝夜の凄いところを知っている私からすると……もっと認められて欲しいのよ」
「静音がそう言ってくれるだけで十分だよ。それじゃあ、帰ろうか」
「えぇ、そうね……それじゃあ、家に帰ったらまた、お礼として耳かきしてあげようか?」
「……勘弁。小学生じゃないんだから」
「別に恥ずかしがらなくていいのに」
昔……まだ、静音が虐められていた時の話。
ずいぶんと荒れていた小学校で、いじめの対象となっていた静音を守るために喧嘩へと明け暮れていた時代。僕が静音を守るために喧嘩をしたときは決まって、お礼として彼女が僕に耳かきをしてくれていたのだ。
その習慣は静音の家の状況が段々と改善されると共に、彼女が虐めの対象から外れていくと共になくなった。
最後が多分、小学五年生とかの話だ。
「今にして思うと、中学校とかじゃなくて、小学校で喧嘩上等。殴り合いが当たり前だったあの環境怖すぎだよね。普通にトチ狂っていると思う」
「確かにそうね。なんで、あんなにも荒れていたのかしら?」
昔のことを懐かしみながら、僕たちは今回の三人のことは忘れ、自分たちの家の方に帰っていった。
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