好きである理由
イライラする。
今日も、ようやく、本当にようやく付き合えた、告白してもらえた輝夜と一緒に帰るつもりだったのだ。
それなのに、呼び出しなんてつまらないものを受けたせいでまた、彼と一緒に帰れない。
それに対して、苛立ちを覚えるな、という方が無理な話よ。
「……何かしら?」
そんなわけで、私は若干の苛立ちを漏らしながら、自分の目の前の男に対して、疑問の声を投げかける。
手紙で呼び出された私は『ついてこい』とだけ言ってきた手紙の送り主である男の言葉に従い、彼の後に続いて歩いていた。
でも、それもいい加減長い。何処まで私は連れていかれるのか。
「告白かしら?」
歩く途中で、私は疑問の声を投げかける。
自分で言うのも何だけど、私はモテる。
輝夜から好意を向けてもらうために磨いた私の見た目は、別に興味もない連中からの好意も買うことが多くあり、大して会話もしたことない男からの告白を受けることだって数多くある。
「それに関しては既に噂となっている通り、今、付き合っている彼氏がいるのよ。だから───」
「ハッ。俺がお前のこと好きなわけねぇだろ」
「……じゃあ、何?」
当てが外れた。
そんなことを私が思った瞬間に、前を歩いていた男が足を止める。
「ただ、うちらのボスがアンタのことが好きみたいでよ」
「なぁーんで俺らのボスの告白を断ったかね?」
「でーすでぇすぅ」
「……ッ!?」
そして、その瞬間にこの場へと新しく2人の男子が自分の前に現れてくる。
それに対して、私は思わず身がまえる。
「何で、あんなダサい陰キャの輝夜なんかを彼氏にした?」
とはいえ、ここは学校。
いくら旧校舎とはいえ、無茶なことは出来ないはず……うちの学校は前に、いじめの問題が大きくなったことがあり、私立の金持ち高校としての威信をかけて学校の至るところに監視カメラを仕掛け、常に監視している。
ここだって、その例外じゃない。
「私のヒーローだからよ」
だからこそ、私は冷静さを取り戻して淡々と答える。
「それに、そもそも貴方たちのボスが誰かも知らないわ」
ボスだの、何だの、随分とつまらないことをしているみたいだけど、私は全然知らない。
知らん人から、知らん人を何で振って、私の大好きな輝夜の告白を受け入れたのか、なんて聞かれてもまず、話にすらならない。
「ハッ。ヒーローねぇ」
そんな私の言葉に対し、呼び出した男は鼻で笑う。
「あの陰キャの何処がいいんだか」
「私だけ分かればそれでいいわ」
「うるせぇ、捕まえろ」
「な、何のつもりっ!?」
私が彼の言葉に答えている途中で、新しく現れた2人が身体を強引に掴んでくる。
「さ、さわらないで!?」
「ヒーローか。いいねぇ。んじゃ、そのヒーローさんは今、お前を助けてくれるかな?」
そんな中で、呼び出してきた男が握りこぶしを固め、その手を持ち上げる。
殴られる。
「い、いやっ!?」
その拳が自分へと振るわれる中で、私は慌てて目を瞑った。
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