ゲーム

「んっ、そっちの方に敵が逃げていったよ」


「了解」


「こっちから普通に敵が来たから、トドメを指すのはお願い」


「了解」


「よし。ちゃんとやったわ。そっちは任せたよ」


「ナイスー」


 失恋を知った次の日の高校。

 それを無事に乗り越えて放課後を迎えた僕は今、楽しく環奈と通話を繋ぎながらゲームをやっていた。

 基本的に、僕の夜は環奈とネットでゲームするのがいつもとなっている。

 そのやるゲームはその時、その時でバラバラな感じだ。

 やっているゲームは今、ちょい嵌まりしているFPSゲームだ。

 あきばでグッズを買いに行ったまた違う別のゲームとは違う。


「よぉーし、終わりだね。GG-」


「ふふっ、やっぱり私たちは最強ねっ」


 嵌まったばかりのゲームとはいえ、僕も、環奈もFPSには割と触れている。

 問題なくちゃんと勝てていけていた。やっぱり、FPSとかは勝ってこそだよね。


「……そ、それでさ?学校はどんな感じ、かな?」


 次のゲームのマッチングを待つ間、環奈が僕に向かって疑問の声をかけてくる。


「んー?別に、特に何事もなく無事に……いや、無事じゃないわ」


「えっ?」


「驚愕の事実が判明したんだよね。静音さ、お米を洗剤で洗っていた」


「え、えぇ……?どういうこと?」


「わかる。僕もそう思った」


 洗剤でお米を洗うって、普通にありえないよね。

 マジでビビった。リアルにわからんし、怖い。

 流石に、僕の預かり知らぬところで自分のキッチンに立たせることは禁止させたよね。震えたもん。米を洗剤は。普通に体調崩すでしょ。

 

「というか、全然話変わるけど、鍵どっか行ったんだよね」


「えっ!?」


「スペアがあったから何とかなったけど……ほんまどうしよ」


 あの鍵には静音と環奈からもらったキーホルダーをつけていた。

 気に入っていたし、大事にしていたので、あれがなくなるのは普通にショックだ。


「えぇ……何で一日にそんな二つのことが起こるの?」


「それな。何でやろね?……はぁー」


 僕は深々とため息を吐く。

 何処に、何処に落としたかなぁ……あれ。もう鍵は良いから、せめて、せめて、キーホルダーだけは返ってきてほしい。切実にそれだけ願うわ。


「……それ、聞いていると、ちょっとだけ、ちょっとだけ楽しそうね。高校は」


「環奈と一緒に高校生活送れたら良いな」

 

 環奈が学校にいてくれたら、もっとその生活が楽しくなるだろうな。


「……んんっ」


「あっ、マッチしたよ」


「……あっ、ほんとだ」


 なんて雑談の後、僕と環奈は再びの自分の前にある画面へと映るゲームの方に戻っていった。

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