学校
「なぁなぁ、昨日のアニメ、『悪役令嬢の弟に転生して~処刑は嫌なので姉の闇堕ちフラグを折っていたら、姉が自分に執着するヤンデレ落ちしたのだが~』の第三話見た?」
「あー、見ていないわ。つか、なろう系の馬鹿みたいな長文タイトルを全部言う人?そんな奴いるの?」
「何でだよぉ!これまで学校をサボりガチで周りから侮られているボッチの主人公が特別試験でいきなり特大魔法をぶちかまして周りを見返す。そんな最速でざまぁするような激熱展開だったのにぃ」
「いや、昨日は東京の方に出かけていたからそんな暇もなかったわ」
「はぁー?学校を休んで何をしているんですかねぇ?」
「女ですかね?女ですかね?今野くん」
「ふっ、こいつに限ってそんなことあるわけ」
「女だよ」
「「うぇぇぇぇ!?」」
「ハハハ!二人してどんな顔だよ」
学校をサボった昨日からの今日。
僕は普通に学校へとやってきて友達と楽しく雑談していた。
「ば、ば、馬鹿なぁ……あの、輝夜に?」
女である。
そんな僕の言葉に震えている高身長で、遠目からのパッと見『だけ』はイケメンに見える雰囲気イケメンを極めたような、しっかり女子と会話出来ない典型的なオタク男子である今野蓮人。
「ま、まぁ、鴉間くんはあの、美少女幼馴染を持っている元から羨ましい人種ですしぃ?」
そんな蓮人に対し、比較的冷静な言葉使いで、その代わりにこれ以上ないほどに手を震わせる坊主の小デブ。これまたしっかりと女子と会話出来ない典型的なオタク男子である飯野春馬。
この二人こそが、僕が学校のクラスで一番仲良くしている友人だった。
「でもよぉ!あの子は昨日も学校にいたぜ!?」
「た、確かに……」
「うん。君たちより遥かに女子との関わりあると思うよ?」
僕も人の言えた義理ではないが、幼馴染にネッ友がいる。
二人とも可愛いし、頻繁に顔も合わせる……確実に勝ち組側だろう。僕は。
へっ……まぁ、失恋したがな。
「「くぅ……ッ!」」
どれだけ二人を悔しがらせようと、僕の恋は実らない……どうせ、どうせ、意味なんて……。
「なんで急にお前が落ち込みだすねんっ!?」
「泣きたいのはこっちですよ!鴉間くんっ!」
いきなり、勝手に沈みだした僕に対して、蓮人と晴馬がツッコミを入れてくる。
……いや、でも、仕方ないやん。こちとらまだ失恋したばかりやねんぞ。全然ダメージデカい。めちゃくちゃダメージ残っている。
「お昼、一緒に食べましょう?」
なんて会話をしていた中で、当の静音が僕の元へとやってくる。
お昼。
僕は蓮人と晴馬の二人と無駄な雑談を繰り広げていたが、今の時間はお昼を食べるための昼休憩の時間だ。
「二人とも。輝夜のことを借りていいかしら?」
「はひっ!?ど、ど、ど、どうじょぉ!?」
「……えぇんやんす!?」
……二人とも、どれだけきょどるんだよ。流石に不審者だよ?
「それじゃあ、行きましょ?」
「あぁ、うん。ちょっと待って」
静音からの誘いは基本的に断るなんてこない。
僕は静音の言葉に頷き、自分のリュックからお弁当箱を取り出す。
「二人もさっさと飯食いなよ?いつものように雑談で昼休憩消えるぞ?」
そして、最後に固まっている二人の方に向かって言葉を語りかけながら、静音の隣に立った。
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