帰り
「あー、歌った歌った」
「そうだね」
朝からあきばに来て、結局のところ一番時間を費やしたのはカラオケだった。
僕と環奈は好き放題、声が枯れるくらいにはカラオケで歌を歌いつくした。
「もう既に太陽が落ちてきたね」
なんてことをしている間に太陽も落ち始め、夜が近づいてきていた。
「これからどうする?」
既にメイドさんも帰り始めているあきばを歩く僕は隣をゆく環奈の方に疑問の声を投げかける。
「とはいえ、ここからできそうなことなんて夜ご飯を何処かに食べに行くことくらいだと思うけど」
「……そうねぇ」
自分の疑問に対して、環奈はこちらの方に視線を送ってきながら、何かを悩むような声を漏らす。
「私、実はちょっと足首の方痛めてて……」
「えっ?大丈夫なの?それは」
そして、その次に発せられたカミングアウトに僕は疑問の声を上げる。
環奈が足首を痛めていたとかあまりにも初耳なんだけど?
「何時から……?」
「ちょっと前から。だから、ちょっとあまり歩き回るというのはちょっとぉ」
「あらー、それじゃあ、本当に電気街を連れ回したの申し訳ないじゃん」
電気街も僕が連れ回したし、思い返せばコラボカフェに行く前にも秋葉原の駅の前にあるビルの三階に用意された自分たちの好きなアニメの特設グッズ売り場とかにも行ったりした。
そんなことをしていたら、かなり足首を痛めることになってしまっていたでしょ……。
「それは、楽しかったらいいんだけど……」
「いや、だとしても、痛めているなら無理するべきじゃないよ」
いくら楽しかったとしても、怪我をしているときに無理をするべきじゃない。
「怪我を舐めちゃだめだよ?」
勝手に治るやろ、って思っていた怪我が悪化して入院、なんてこともあるからね。
僕はあったことあがる。
「……むぅ」
「今日はもう帰ろうか。無理するべきじゃないよ」
「……」
「お目当てのものはゲットできたし、コラボカフェも堪能できた。それに、久しぶりにたくさん歌を歌えて満足だわ」
「そうね。私も楽しかったわ」
「足首を痛めている中でもそう思ってくれたのならよかったよ」
「……っ」
僕のロボット作りもかなり捗ってくれるだろう。
今日の買い物のおかげで。
「駅の方に戻るか」
「……えぇ、そうね」
適当にぶらぶらと街を歩いてた僕は進む方向を駅の方に定める。
「というか、失恋した僕を慰めるためとはいえ、最初から無理するべきじゃなかったと思うよ?昨日の今日だし……昨日の段階でもう足首が痛かったのなら、やっぱり無理するべきじゃなかったよ……とはいえ、今日誘ってくれてなかったら、一人で家に塞ぎ込んでいたと思うから……ありがとねっ。やっぱり、誘ってくれて。おかげで楽しかった」
「……どう、いたしまして」
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