デート
「おー!ちゃんと原作のままに再現されているわね。これ」
「こういうクオリティーの高い原作再現は嬉しいよね」
己が失恋を知った次の日。
僕は何のかんの言いながら、環奈と一緒に秋葉原の方にやってきていた。
「実に良き」
というわけでやってきた秋葉にある今、二人でハマっているゲームのコラボカフェへと僕は環奈と共にやってきていた。
「食べるのがもったいない」
「まったくねっ!」
僕と環奈は共にテンション高くカフェで頼んでやってきた料理の写真を撮っていく。
本当に、本当にすごいのだ、これはっ!
マジでゲームに出てくる料理の姿そのまま。完全なる原作再現。ここまでのものがお出しされればもう文句の出ようなんてない。
「それじゃあ、いただきます」
なんてことを考えながら、僕は箸を持ち、料理へと手をつけていく。
「……輝夜って何だかんだ言いながらも、手を付けるときは早いわよね」
「冷めたら美味しくなくなっちゃうし……」
ここまで原作再現された料理。
食べるのはもったいないが、それで躊躇して冷めて味が落ちてしまったらそれ以上にもったいない。
「まぁ、それもそうだけどさぁ……もうちょっとなんかあるじゃん?」
「僕に可愛い反応期待されても困るよ。むしろ、こっちが期待しているよ」
「うぐっ」
僕は箸を進めながら、環奈の方に視線を送る。
「……ご飯に可愛い反応とかないじゃん!」
そんな僕の視線に対し、環奈はちょっとだけ声を荒げながら、箸を手に持ち、一切の容赦なく料理をかき混ぜ始める。
「お前が一番残酷じゃないか……」
「ハッ!?私は何を!?」
「草」
僕は環奈の奇行をサラッと流しながら、自分の料理を食べ進めていく。
「うぅ……」
それに対して、環奈は意気消沈とさせながら食べ進めていく。
「それにしても、やっぱり平日だから混んでなくてよかったね」
そんな環奈を前に、僕は新しく話題を変える。
「……まぁ、そうねっ!」
今日は平日。
高校は休んだ。
後悔はしていない。昨日の今日で静音とまともに顔を合わせられる気はまるでしなかった。
「私は引きこもりだから関係ないけどー」
「僕は明日……どうなるだろうなぁ」
担任の先生から休んでいた分!と言われて、更に多くの厄介ごとを押し付けられそう。
「ご馳走様」
なんてことを考えている
コラボメニュー。
いくら完璧に原作再現されているとはいえ、そこまで量があるわけじゃない。
割とすぐに食べ終わってしまった。
「こっからが本番っ!」
僕に続いてご飯を食べ終わった環奈が意気揚々とした態度で一つの銀色の袋に包まれたものを掲げる。
「そうだね」
今回のコラボメニュー。
その料理には一つ、ゲームキャラの缶バッチが付属してくる。
「さぁ、来いっ!推しっ!」
その缶バッチが包まれている銀色の袋。
「カマセは嫌!」
それを魂の叫びと共に環奈は開く。
「カマセだぁぁぁぁああああああああああ!?」
そして、撃沈する。
カマセ。
ゲームに出てくるネタキャラ枠。面白い奴だが、こういう時に引きたい奴ではない。
しっかりとカマセを引いた環奈は崩れ落ちていく。
「あっ、推しでた」
そんな環奈を前に、僕はしっかりと推しを引き当てた。
こういう時の引き運。僕ってばかなりいいんだよね。
「私、今日、散々だぁぁぁぁぁぁぁ」
「草」
机に顔を突っ伏した環奈を見て軽く笑いながら、僕は自分が手にした推しの缶バッチをいそいそとケースに仕舞うのだった。
「って、あぁぁぁぁあ!ちゃんと当てているじゃん!何それぇっ!ずっるぅーっ!」
「へっ」
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