Chapter 1-7 監獄エリア04
私は掃除用の服に着替え終わり、外に出た。
「あらやだぁ、こっちの服もに合ってるわね。
帽子も有るけど……ない方が可愛いかしら」
チーフは私の周りを歩きながら上から下まで見る様子に困惑した。
「えっと、掃除の説明を願いします」
我に返ったチーフは居直し、咳ばらいをして説明を始めた。
「ここの2階から5階が個室になるの。
各部屋のゴミの回収、汚れがあれば拭き掃除をお願いね。
ベッドは綺麗なはずよ。
毎朝の点呼の前に直すように言いつけているから。
掃除は私も付いていくから安心してね。
何か質問あるかしら?」
一気に説明をしたチーフを見ながら何を質問するかを考えた。
「各部屋だけみたいですが、廊下はいいんですか?」
「いい質問ねぇ。
エリーが部屋を掃除している間に私がやっちゃうわ。
早く終わったら手伝ってねぇ」
「分かりました。
では二つ目。この服、フリーフィットですけど、ぴっちり過ぎませんか?」
「ええ、そうよ。
何処かに引っ掛けたりしないように作ってるの。
それに、動きやすいわよ」
チーフは筋肉質のため、それを誇張するような感じになっているが、私の
場合はちょっと胸周りがキツイ気がする。
「私のお仕事は掃除のみなんだけどねぇ。
時々、暴れる囚人がいるのよね。
それを御す為でもあるの。
服がダブダブだと引っ張られたりするからよ」
「そうなんです……ね?え?暴れる?」
「ま、中に居ればの話だけれどねぇ。
今は皆、運動しているから大丈夫よ」
チーフは「ほほほー」という笑い声を出しながら「じゃあ行くわよ」と言い、
私は後に続いた。
「最後の部屋、終わりましたー」
ゴミを回収した袋を部屋から持ち出し、掃除用カートに入れてからチーフに
声をかけた。
「あらぁ、思ったより早かったわね」
「いえー、結構綺麗でしたね。もっと汚れているものかと」
監獄と聞くと部屋は荒れて酷い状態になっていると思っていたのだが、
1つ目からゴミは落ちてなく全てゴミ箱に(それを回収するのだが)、
特に汚れている部屋は無く、ベッドはシーツまできっちりとされていた。
廊下の掃除は、私がごみを回収している間に終わっていた。
チーフは「長い事やっているからこれぐらいは余裕よ」と笑っていた。
「まぁ、私とマダムが囚人にきっちりと教えておいたからよ。
言う事を聞かず暴れる子には優しく抱擁して出来るようになるまで教え込んだわ」
チーフは目をつむり天を仰ぎながら昔を思い出しているようだが、私は優しく抱擁の辺りを想像したらちょっと引き気味ではあった。
チーフは目を開け慈しむ様な顔で
「ま、此処の子たちは、マダムの子供で私の兄弟ね」と言い、
私は囚人だが大事に思っている人なのかとちょっとだけ納得した。
「さてとエリー、これで終りね。
マダム達に報告に戻りましょう。
ちょっとの間だったけど楽しく仕事ができたわ」
「そうですね、チーフとなら楽しく仕事が出来そうです」
目を丸くしたチーフはこっちを見ながら「あら、じゃあここに住んじゃう?」
と聞いてきたが、「いえ、それは遠慮します」と笑顔で返した。
流石に囚人でもないのに住めないよと思う。
1階に戻り、コミュニティーゾーン付近まで戻って来た私たちは、出入口の辺りに
人が居るのに気づいた。
「あら?運動が終わる時間にはまだ早いんだけど……」
出入口付近に近づくにつれ、空気感が変わって来た気がした。
人が居るにはいるが、出入口を塞ぐように横に一列に並んでいた。
「あなた達、そんな所に立ってどうしたのよ?」
チーフの問いかけには誰も反応せず、怖い顔をしてこちらを見ていた。
何事かわからない私はチーフを見やると、こちらもさっきまでの笑顔は消えており、
目が座った怖い顔になっていた。
「……あんた達、そぉ、暴れようって事ね。前に全員、優しく抱擁してお説教したじゃない?」
その声に反応するように、上半身裸で筋肉質な囚人がチーフに殴りかかって来た。
繰り出されるパンチをチーフは片手で受け止めた。
「は!チーフさんよ!
あん時は全員って言っても、俺以上の奴は居なかっただろうが?
調子子いてんじゃねぇよ!
それに、今日はそっちに新入りの可愛い子が入ったって聞いてるぜぇ?
可愛がってやらないとなぁ?」
そう言い、目だけでこちらを見てきた。
「あらそう」
そう言った瞬間、殴りかかてきた相手は地面に倒れて気絶していた。
チーフは「はぁー。エリー、どうやら貴女をご指名のようね」と
少し寂しそうな顔でこちらに話しかけてきた。
私は状況が今一飲み込めておらず「えっと……そう、見たいですね?」と答えた。
私としては特にお相手していただきたくないのだが、どういう経緯でこうなったのか全く想像が付かない。
「というかチーフ、今のどうやったんですか?
気づいたら地面に居ましたけど?」
「え?
腕を掴んで引き寄せて首を打った後、そのまま顔から地面に叩き落としただけよ?
女の子にはしないけど男の子だから顔に傷出来ても良いわよね。
でも傷が出来たら悪い事しちゃったよね」
「そうなんですか。すごいですね、ははっ」
驚きと同時にあり得ないと思い私はよくわからない笑い声が出ていた。
「まぁ、エリーが無事ならそれでいいわ。さて、あなた達、これでお終いじゃないでしょ?」
「え……」まだ続くのかと思いチーフを見てから囚人を見やると、さっきと様子は変わらずであった。
「いいわ。そろそろ残り4人、出ていらっしゃい。特にラビちゃん。また可愛がってあげるわよ」
その言葉を待っていたと言わんばかりに囚人たちは出入口の両脇に整列を始め、こちらまでの道を作り出した。
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