Chapter 1-6 監獄エリア03

監獄棟入り口に着き、マダムがこちらに向き直した。


「さてここが重犯罪者用収容施設・監獄棟さ。」


建物名はそのまんまだなと突っ込みを入れたら怒りそうなので何も言わず、

建物の上まで眺めた。


扉の横に光を取り入れる窓が等間隔に5枚あるので5階建てになろうのだろうか。


監獄という事もあり、左右を見ても窓は見えない。


「地上5階、地下は秘密としておこうか。

独房だから詳細は言えないね。

上までと左右を見た通り窓は無いよ。

そっから逃げ出す奴も居るかもしれないからね。

まぁ無いんだろうけどね。

建物の形は長方形のドーナツ型になっている。

光取り入れ用の窓のみだが、天井から光を取り入れる様にしている。

それで日中の明るさは十分さ」


「重犯罪者用なので暗くて酷い状態で人が住む様なものじゃないと想像して

いたんですけど、そうでもないんですね?」


「まぁね。

重犯罪者でも最終的には更生させてやる必要があるとわたしゃ考えているからね。

暗く狭い所に居ちゃ、心も体も腐るだけさ。

今の時間、全員裏のグラウンドで運動させてるところさ。

後は、重犯罪者だけ『囚人』と呼んでね、白黒の縞々の服を着せて軽犯罪者と区別するようにしているのさ。

さぁ、中へ入った入った」


マダムに連れられ、中へと進んだ。


ここの扉も49地区と同じく防犯カメラで顔認証し勝手に開くようになっているそうだ。


中に入るともう一つ扉があるが「二重ロックってところさ」とだけ言われ

その扉も超えた。


1階に当たる所はコミュニティーゾーンと呼ばれるような開放的になっている

様で、囚人同士で話せるように机と椅子、本棚があった。


「1階はこの様に囚人たちがのんびりするための開放スペースになっている。

トイレと風呂は共用で各階で時間を決めてローテーションしているんだ」


「ほぉー」


「こっからじゃ見えないが、向こう側には図書館と音楽室、調べたい物がある

場合のためにパソコンルームもある。

パソコンはアナログだがね」


マダムが指で刺した先を見ると、丁度光が取り入れられている中央部分が見えた。


その先に向こう側への入り口があるようだ。


「今回は囚人用の個室の掃除になるからあっちには行かないがね。

そういう設備になっているって事だけ知っておいて損はないよ」


「はぁ……」


マダムの説明を聞いてある事に気づいたので質問することにした。


「仕事を受注するとき、監獄の掃除としか書かれてませんでしたけど、てっきり

外の掃除なのかなって思っていたんですがこっちなんですか?」


私の問いかけにマダムは首を捻らせ「え……うん??……ああ」と言い続けて

「私の気分次第さ」と言った。


気分次第なのかどうかは判別付けられないけどそういう事にしておいた方が

無難に終わる気がした私は「そうなんですね」と言い愛想笑いをした。


「ま、囚人連中が外で運動している間にぱーっと片付けるだけさ。

で、だ。

私の代わりに指揮をする奴が居るんだが……へい!チーフ!どこだい!」


マダムは大きな声で叫んだ。その後すぐにその人は現れた。


「あらぁ、呼んだかしらマダム」


呼ばれて出てきた男性?は、高身長でインテリ眼鏡に坊主に近い長さで髪を短く

切っており、結構筋肉質な体型をしていた。


「ああ、ちーふ。今日は伝えている通りだ。試験のための掃除要員が1人さね」


「あらぁ、この娘が……あらやだぁ、可愛いわね。

髪もショート目にしてて顔だちも良く、スタイルも悪くないわね。

ちょっと華奢な感じだけど、程よく筋肉も付いてるようね。

ぱっと見、仕事に耐えられるかしらと思ったけど、いけそうね」


チーフは私を吟味する様に見てい様だがそれも終わり握手を求める様に

手を出してきた。


その手を握り「ど、どうもよろしくおねがいします」とちょっとだけ顔を

引きつらせながら返した。


握手を終え、手をひっこめるとチーフはマコトさんの方を向きツンとした

顔で挨拶をした。


「……ついでに、マコトも」


「どうもお久しぶりです」


チーフは腰に手を当て、片手で顔を掴み

「はぁ……あんたっていつもいつも冷たいわねぇ。

本当、ツレナイわね。この・い・け・ず。そもそも……」と

顔を上げ胸の前に両手で拳を作って前後に振りながら文句みたいなことを言おうとしていたがそれをマダムが制した。


「チーフ、話が長くなりそうだからそれぐらいにおし」


「あらやだ、私ったら。ごめんねぇ、えっと貴女お名前は?」


「エリーゼ・ヘセルと言います」


「あらぁ、名前も良いわねぇ。抱きしめちゃいたいわ」


私は「ぇ……」と言いながらちょっとだけ後ずさった。


「あ、今はこれダメなのよねぇ。

監獄で悪いことした子には説教と抱擁はするんだけどねぇ」


空中で頬杖をしながら何処か遠くを眺める様な目をしていた。


「チーフ、先に進めたいんだが?」


「あ、はい。申し訳ありません、マダム」


我に返ったチーフはこちらに向き直した説明を始めた。


「個人の部屋の掃除を行ってもらいます。

1階はトイレと風呂があるけど、それは新人には任せられないのよね。

私も付き添って2階から5階の掃除よ。

じゃあまずお着替えね。お着替えに行きましょ」


チーフに両肩を掴まれ後ろから押されるように入口へ向かった。


マコトさん達も一緒に入り口から一つ目の扉を出た。


「ここの空間はね、内側の扉を壊して外に出た子を止める最終部屋なの。

と言っても、催涙か睡眠ガスのどちらかをまくだけなんだけどねぇー」


「ただの二重扉になっているわけではないんですね」


「そういう事。

で、この左側の壁。

通常は何もないけど私やマダムは専用のパスキーと顔認証で入れるの」


ここにも監視カメラはあるので既に顔認証はされているんだろう。


チーフはパスキーを取り出し壁にかざした。


すると、壁に線が入り通路が現れた。


「手前のここが更衣室よ。

中に掃除用の服と靴があるから着替えてね。

フリーサイズだけど調整ボタンでサイズを合わせるられるからね。

ボタンはココ」


と、チーフは自分の服の襟にあるボタンの場所を示した。


「チーフ、私たちゃぁ管理室に行ってるからね」


「はーい。分かったわぁマダム」


マコトさんとマダムは更に奥へと進んでいった。

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