Chapter 1-5 監獄エリア02
見た目それなりにお年を召されたであろう女性がこちらに向かって歩いてきて、マコトさんの前で止まった。
「来たかい、坊主」
「お久しぶりです、マダム。
それと、坊主という年齢では無いのですがと毎回申しておりますが」
「私からしたらずっと子供のままさ」
そう言い、はっはっはと豪快に笑い飛ばした。
「さて、その娘が入会試験を受ける訳だね」
マコトさんは「ええ」と言い、私に前に出て挨拶をするように促した。
「は、はじめまして。エリーゼ・ヘセルと言います」
「おう、よろしく。私のことはマダムと呼びな」
お互いに名乗り、握手をした。
「マダムという名前はハンター名になります。
本名は私も知りません」
とマコトさんが名前について説明をしてくれた。
そりゃ、マダムなんて名前だったら誰でも驚くだろう。
「はん!名前なんてねぇ、ハンター名があればいいのさ。
マダムじゃなくゴッドマムにしとくべきだったかねぇ」
「あの頃はなり立てでしたので、マダムで良かったのでは?
もしくは
「貴婦人かい……それも悪くはないがちょっと私にゃ合わないさ」
「それでは……ああ、名前についてはまた別の機会にでも。
今は試験についてお願いします」
そう言われたマダムは「おっと、忘れる所だった」と言い、真剣な顔で私に
向き直った。
「さて、エリーゼでいいかい?」
「はい、かまいません」
「ふん……
試験については受注した時に書いている通り、監獄の掃除をしてもらう。
ただし、今から移動する建物の中のみになる。
歩きながら話そうかい」
マダムは歩いてきた道を戻るように歩き始め、私たちはその後ろを着いていった。
「ここでは軽犯罪者と重犯罪者で建物が異なる。
軽犯罪者は、それ、そこに見えている建物があるだろう。
そこに住んでいる」
マダムに示された先を見ると平屋の小さい一軒家があった。
「大体、1LDKぐらいの大きさで一人で住まわせている。
一人だと語弊があるが、1人と犬か猫1匹で暮らし、家に併設している畑で野菜を育てて貰っている」
示された家を見ると丁度畑仕事をしている人がおり、大きめに成長している野菜の
世話をしている所だった。
「えっと確か、アニマルセラピーでしたっけ?」
「その通りだ。
思ったより博識かい?
軽犯罪者はメンタルが少し落ちているときに犯罪をしてしまう人が殆どでね、それを癒すためにやっているのさ」
「そうなんですね。
後、結構自由そうですよね。監獄なんで、牢屋に居れたりしているのかと思ってました」
「軽犯罪者はそれは無いね。
軽い罪しかないし、それを更生するためにああして動物と生活させているのさ。
重犯罪者になると今から行く監獄に入れるんだけどね」
「そっちは牢屋に居れたりするんですよね?」
「寝てる間だけさ。
それ以外は1階の共用スペースで生活をさせている。
また、外に専用の運動場を用意していてそこで1日1時間は体を動かせるようにしているのさ。
もっとも、独房行きになるような子は外には出したりはしてないけどね」
「へぇー」
私がしていた監獄のイメージとは違うなと思いながらマダムの話を聞いていた。
「ああ、そうそう。
軽犯罪者は一般人しかおらず、重犯罪者は魔力持ちしかいない。
流石にこいつら一緒にすると殴り合いとか起きそうだからね」
「そうなんですね。
確かに一緒にして喧嘩したら一般人は不利ですよね」
「ま、それだけじゃないんだが、ね」
犯罪者についてそこで一旦話が終わり、監獄棟への少しの間無言となった。
そのまま少し歩いたら、建物に到着した。
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