第59話
健だと思って「遅い!!!!」と声を張り上げながらドアを開けたが、目の前にいる人物と目が合った瞬間、サァーっと血の気が引いた。
……そこに立っていたのは健ではなく
「……驚いた」
「お義母さん……」
健の母親だった……
「機嫌悪いから、ビックリしちゃった。紫乃ちゃん、いつもそんなふうに健をお出迎えするの……?」
「違うんです!!弟かと思って……。今日七時前に家に来るって言ってたんですけど、全然来なくて……」
咄嗟に出た言葉がこれだった。弟を犠牲にした私に母を責める資格なんてない。
「そうなのね……。仕事で疲れて帰ってくるのに、第一声がそれなら疲れが吹っ飛ぶどころか心臓悪くしちゃうわよ。それより健は?まだ帰ってきてないの?」
「食べにいってるみたいです……」
「あら、ご飯作ってないの?」
「作ってたんですけど、今日はいらないって……」
「いらないなんて珍しいわねぇ。何作ったの?」
「カレーです……」
「カレーは、あのこあんまり好きじゃないのよ……。できたら、和食を作ってあげてほしいの。私、前からずっと言ってるでしょ?あと、専業主婦なんだし、もう少しお料理の勉強してほしいのよ……。紫乃ちゃんの料理が駄目って言ってるわけじゃないのよ?健康にも関わってくるし、お料理って本当に大事だから。」
「わかりました……」
「あっ、そうだわ。今度、料理作って持ってきましょうか?カボチャの荷物なんてどうかしら?気にしないでね??お父さんと二人だと、余ってしょうがないのよ。私、料理作るの好きでしょ?紫乃ちゃんにも私の手料理たくさん食べてほしくて。味も覚えてほしいし。」
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